水樹
2025-03-16 21:45:16
2167文字
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定位置はきみの右隣

フォロワさんの漫画に影響受けて書いたもの
FN?で合ってる?のかな
問題あるようだったら消します……

「スグあんたさあ」
「なに?」
「アオイのこと、ほんとだぁい好きよね」
「ごふっっ!?」
「ちょ、汚」

 そこまでぶちまけてない。マグカップを置いて、口の周りと、机に少しだけこぼれてしまったエネココアを軽く拭う。

「い、いきなりなに」
「やだ、自覚なかったの? ほらこれ」
……写真?」
「よーく見てみなさい。これとか、これもそうね。ああこれも」

 机の上に広げられた数枚の写真。オモテ祭りで撮ったものやオリエンテーリングで撮ったもの、大空洞から帰ってきたときに撮ったものに、休学中や復学後に撮ったものもある。写っている人数に多少の違いはあるけれど、共通点がひとつ。すべてに俺とアオイが写っている。

……これがどうかしたの?」

 意味がわからずねーちゃんをうかがえば、チーゴの実でも食べたかのような顔をしていた。

「立ち位置よ、立ち位置。あんた基本アオイの……好きな人の左側にいるのよ」
「!? すっ、す……!?」
「思えば普段からそうね。逆に立ってるのあたしあんまり見たことないかも。休学明けからは特にね」
「な……なん、で」
「簡単なことよ。あんた右利きでしょ。なんかあったときにとっさに動ける。んでその髪型。それだと左側がよーく見えるし、アオイの髪型もそうね。右側にいるほうが顔がよーく見えるじゃないの」
「あ……ぅあ……

 思い返せば確かにそうだ。仲直り直後に撮った写真も。アオイ達がキタカミに来てくれたときも。キビキビした人達とバトルしたときも。……テラパゴスと戦ったときも。どれもアオイは、左側にいた。
 最近の記憶を辿っても、それは変わらない。

「わ、わや……
「ふふ。あんたってほーんとわかりやすい」
「ねーちゃんもうやめて……

 これからどんな顔してきみに会えばいい? これからは、どんな顔できみの隣に立てばいい?
 確かにアオイのことは好きだけど。それはあくまで友達として好きなのであって。そこに特別な意味なんてないはずで。
 だったら、この顔の熱さはなに。この鼓動の速さは、いったいなに。

…………ねーちゃんのばか……
「誰がバカだ手ぇ出るよ」
「うう……

 こんなこと、知りたくなかった。



……はぁ」

 気が重いけど、会いたくないわけじゃない。それに習慣がついているのか、足は自然と部室へと向かう。

「あ、スグリ! 待ってたんだよー」
「え?」

 俺に気づいて目が合うと、にっこりと笑って手招きをする。

「えと、どうしたの?」
「スグリに見てもらいたくって。出ておいで!」

 軽快な音とともに姿を現したのは。

「たっちょ!」
「わや……色違いのオオタチだ」
「うん! それも女の子なんだよ。この間キタカミに行ったときにちょうど大量発生しててね? そこで捕まえたの! かわいいでしょ?」
……んだな。わやめんこい」

 アオイに負けないくらい、と言いかけた。その言葉を飲み込むことができたのは、視界の左側で、見慣れた三つ編みが揺れたから。あ、俺また、右側に立ってるって気づいたから。……あれ、今、俺、なにを、言おうとした?

「〜〜っっ!?」
……スグリ? 顔赤いけど、もしかして熱でもある?」
「えっ」

 こつ、と合わせられた額。伏せられたまぶた。長いまつげ。上げきれなかったらしい髪がこすれて、くすぐったい。
 とどのつまり。
 とても、近い。

「んー……。熱はないみたい?」
「わ、や……
「スグリ?」

 どう足掻いたって無理だ。こんなの自覚するなってほうが難しい。むしろ、どうして今まで気づかなかったのかが不思議でならない。
 おれ。
 俺。
 アオイが、すきだ。
 このすきは、友達にむけるものじゃない。

「わ、わやじゃ……
「どうしたの? やっぱり具合悪い? 医務室行く?」
「や、へいき……平気、だから……

 一歩、二歩と後ずさる。ここから逃げたしてしまいたいのに、まだ一緒にいたい。その気持ちが、足の動きをとめてしまう。

「そんなに顔真っ赤にして平気なわけないよ。やっぱりどこか悪いんじゃない? とりあえずお部屋まで送ってくから、ほら、行こ?」
「えっ」

 癖で揺らしていた左腕がつかまえられる。そしてそのまま歩き出して。自然と、いつもの、位置になる。

「あ、の、アオイ」
「うん?」
「その、手、が」
「あ、ごめん痛かった?」
「ち、違う」
「ならよかった」

 腕をつかんでいた手は、するするとおりて俺の左手をつかまえる。あ、やばい、手汗、が。

「も、もう離し」
「やーだ」
「!?」
……ふふっ」
「な、なに」
「んー? やっぱり落ち着くなーって」
「ど、ど、ゆ、こと……?」
「スグリが右側にいるの、なんか落ち着くんだよね」
「!?!?」

 それ。
 どういう。
 意味。

……んだば俺の左側は、アオイだけの特等席、だな」
「ん? 何か言った?」
……なんでもね」

 はっきり口に出すのは、まだちょっと恥ずかしいから。とりあえず今はこのままで。
 でも、ここは誰にも渡したくない。渡さない。
 覚悟を決めて、右手を握りしめた。



 きみの右隣が俺の定位置になるまで、あと、すこし。