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のたり
2025-03-16 18:41:05
1808文字
Public
hrsz
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一緒にお風呂
入ってません
再来週の地方ロケの日はみんなで泊まることになった。
ロケの日程や場所を確認していたとき、「またみんなでお泊まりしたいな」と言ったのはみのりちゃんで、「アンタ、ほんっとお泊り会好きね」と苦笑いしつつも計画を立ててくれたのは愛莉ちゃんだった。
今回はホテルだけれど広い露天風呂が売りのようで、愛莉ちゃんがみんなに送ってくれた写真もとっても素敵だった。
「露天風呂楽しみね。斉藤さんのお家の旅館へ行ったときも気持ちよかったし」
「
……
」
浮立つ気持ちを抑えきれない私とは裏腹に、遥ちゃんは複雑そうな顔をしていた。
「
……
遥ちゃん、どうかした?」
何か気にかかることがあるのかしら。私達のプロデューサーとしても頑張ってくれている遥ちゃんには、私が気付かない問題点が見えているのかもしれない。
「
……
私の気にしすぎだとは思うんだけど
……
」
いつもよりワントーン低い声に思わず姿勢を正す。
やっぱりなにか気にかかることがあるんだわ。今回の番組プロデューサーさんはしっかりとした方だったし、内容は幼稚園の子ども達との触れ合いっていう愛莉ちゃん達が得意とするものだけど
……
。そこまで考えて、はっとした。もしかして遥ちゃんの気掛かりは私が原因なんじゃないかしら。だって今回の企画で失敗をするとしたらきっと私だもの。
「遥ちゃん、もし気掛かりなことがあるならはっきり言ってほしいわ。そんなに時間はないけれど、私にできることがあるなら、ーーいいえ、今はできないとしてもできるようになるための努力は怠りたくないの。だから
……
」
「ーー雫」
待ったをかけるように遥ちゃんは手のひらを私に見せて、それから顔の前で手を組んだ。
「
……
そうじゃなくて
……
」
はぁ、とあきらめたようにため息をついた遥ちゃんの頬はなぜか赤く染まっていた。
「
……
雫と一緒にお風呂っていうのが
……
」
「え?」
予想もしなかった言葉に素直にきょとんとした。
「
……
どうして?」
「いや、だって
……
」
「夏合宿のときはみんなで一緒に入ったじゃない?」
「あの時まだ好きだって自覚もなかったし
……
」
「
……
今はだめ、ということ?」
そう言えば旅館に行った時は一緒に入らなかった。荷物を片付けるって言っていたから、そんなに気にしていなかったけれど。
「
……
えっと
……
、だから、平常心でいられる自信がないって言うか、意識しちゃうっていうか
……
」
「
……
でも、もう付き合っているんだから一緒にお風呂に入ってもいいんじゃないかしら」
「えっ」
「え?」
「
……
そっか。
……
いや、でも
……
」
顔を赤くしたまま言いにくそうに言葉を繋げる遥ちゃんは可愛いし、私のことをそんなふうに意識してくれるのは嬉しい。でも、せっかくなんだしみんな一緒に露天風呂に入りたい。何かいい方法はないかしら、と考えて、ひとつのアイデアが浮かぶ。
「遥ちゃん、練習するのはどうかしら」
「は?」
「そうよ、練習しましょう!」
言ってみて、我ながらいい案だと思った。何事も日々の積み重ねが大事だもの。
「待って、雫、練習って
……
」
「じゃあお風呂沸かしてくるわね」
「ちょっと、ちょっと本当に待って、雫」
立ち上がろうとした私の腕を遥ちゃんが慌てて掴む。
「お風呂に入るの? これから? もしかして一緒に?」
「ええ。一緒じゃなきゃ練習にならないでしょう?」
「たしかにそうかもしれないけど
……
」
「だめかしら? 遥ちゃん、私、みんなで露天風呂に入りたいわ?」
「
……
う
……
」
眉をしかめて、しばらく黙った後、遥ちゃんは頷いてくれた。
「わかった」
「ほんとう? じゃあーー」
「でも、雫、私が理性失いそうになったらちゃんと止めてね」
「え?」
ーー理性、って。
「私だって性欲くらいあるよ」
「
……
それは私に、ということ?」
遥ちゃんが、む、と少し眉をひそめる。
「他に誰がいるの?」
「そ、そうよね、私が遥ちゃんの恋人だものね」
「そうだよ」
かあっと顔が熱くなって、思わず頬に手を当てた。
まだキスもしたこともないのに、その先のことを考えて胸がドキドキし始めた。
遥ちゃんがため息をひとつつく。それは何かの区切りだったようで、遥ちゃんの表情がきりっと引き締まった。
「よし。行こうか、雫」
「え、ええ
……
」
頷いてはみたものの、心臓の音が止まらない。まるで遥ちゃんの躊躇が全部私に移ってしまったみたいに。
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