11155.
2021-12-05 11:26:42
1872文字
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染めるあか

うちの子CP、肇つむの日常場面。制作中の肇を横でみてるつむぎ。どちらも画が好きだからかけた話かなと思ってる(中の人より)

染めるあか
 
 筆を動かす音だけが部屋に響く。ただキャンバスに向かい線を、色をのせていくことで形が浮き出てくる過程をみるのは不思議でたまらない。見慣れているはずなのに何度繰り返しても興味が尽きないのはひとつとして同じ答えがないからだろうか。
「肇、その色はなぜ使うの? モチーフとは違う色じゃない」
 後ろから聞こえた声に耳を傾けるが、視線はキャンバスに固定したたまま肇は口を開けた。
「見えるものだけじゃないんだ。感じた色を使う場合もある。それに緑以外の赤や黄色を重ねると自然な色に近づくんだ」
「そうなのね。色を作ってから使うだけじゃないのは初めて知ったわ」
 鮮やかな赤を使っている肇を不思議そうに見つめるつむぎ。手は動かしたままの肇はそうなんだと次の色を筆にとる。
「植物は特にそうだけど緑は鮮やか過ぎても不自然になる。絵の具単色を使うのも良いけど画面で重ねる方が彩度を保ちながら、絵の具自体の色の強さを活かしてくれるこのやり方が私にはあってるんだ。もちろん、つむぎさんが言ってたようにパレットなどであらかじめ複数の色を混ぜてからキャンバスにのせることもするけど」
 少し手を止め、肇は出来るだけ離れるよう椅子の背もたれに背中を押しつける。つむぎの髪が少し視界に入りながら。
「今はこの色の使い方が良いような気がするんだ。経験則でしかないけど」
「色々あるのね……私にはどうやってそう描けるのかやっぱり分からない」
「らしいね。絵を描かない人には不思議だとよく言われる。実際他の人の描き方を見て覚えたり試行錯誤した中で理解したりする感覚だから直ぐにわかるなら貴方は天才になれるよ」
 ははっと小さく声が漏れる。持っていた筆を隣にある小さな台に置いている水入れにちゃぽんとつける。赤く染まる水を掻き混ぜながら筆先が元の茶色に戻ったことを確認すると水入れの横に置く。そして肇はつむぎに顔をゆっくりと向けた。目を瞬く彼女を愛おしそうに目を細め見上げる。
「でも、つむぎさんは私にやる気をくれる天才だと思ってる。傍に居てくれるだけで目の前が煌めいてみえるから本当に凄いと」
 肇の言葉に耳を染めたつむぎは力がはいる口元を手で覆い隠す。
……芸術肌の人はさらっとそんな言葉が出るから凄いわね。私は何もしてないのに」
「事実を話してるまでだよ」
「それよ。他にも綺麗な人も物も溢れているのに私なのが理解できないの。もっと他にやる気を出せる物があると思うけど」
 思わず視線から逃れるように、すっと俯くつむぎ。足元を見つめながら、素直に言えない言葉を頭に浮かべ、またやってしまったと口をつむぐ。そんな動かないつむぎの片手を手に取る肇は彼女の手を優しく撫でる。
「つむぎさん? やる気を出すのは人によって違う。動物や風景、人物または画とは関係ない趣味の小説とか貴方が言うように様々だ。確かに私は綺麗なものは沢山あると知っている……でもやっぱり」
 ふぅと一息つくと肇はじっと覗き込むようにして目線を合わせた。口をゆっくりとあける。
「私が輝いてみれるのも描きたいと思えた人も今まで貴方だけです」
 俯き影がかかるつむぎの瞳はゆらゆらと揺れている。顔を隠す手の隙間から染まっている色を見つけてふっと微笑んだ肇は椅子から立つ。
 そして肇はグイッとつむぎの顎を引き上を向かせると先程より近くなる二人の距離。瞳から何かがこぼれそうな感覚につむぎは慌てだす。
「は、肇……ちょっと、待って」
「大丈夫。いくらでも待つよ。ただすべてがみたいんだ。それは許して欲しい」
 見下ろす肇は声をたてないでかすかに笑う。頬にかかる彼女の前髪を耳にかけながら肇はそっと口付けを落とす。まずはひとつ。溢れそうな瞳に蓋をする。
 
 
 
 
 あとがき
 
 短時間で何か書くかと始めたら三時間ぐらいはかかりましたね(震え声)
 反省は色々ありますが楽しかったのでよしとしたうにです。かきかけが沢山ある中で頭空っぽにして書きたくてこうなりました。CPの日常話書きたい~からのうちの子CPをメインとして作成しました。なんか筆音が響く部屋が書きたかっただけなのもあるけど、書き始めたらいつの間にか肇がぐいぐいいくのは書いてて面白いのかもなぁと思いながら進めていましたね。つむぎはまだ探りながらですがちょっと素直になれない感じが少しは出せんたじゃないかなと思ってます。話す肇と黙るつむぎの感じになりそうでちょっとワクワクしてきた中の人。つむぎをそのまま引っ張っておくれ肇。