Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
11155.
2021-09-19 22:25:56
2394文字
Public
Clear cache
隠れるものと見えるもの
うちの子、遠藤ゆうきの日常を少し。実と同じ大学、文系ということで授業が同じ先輩後輩になる。大学にあるどこかの教室でのやりとりかな。
隠れるものと見えるもの
ふと雨上がりの街並みを眺める。窓から差し込む陽は眩しいくらいで少し目を細めた。顔を隠すくらい長い髪の隙間にも届くほどに。
「
……
ゆうきはさ、邪魔じゃないの? その、前髪」
名前を呼ばれた彼女、遠藤は振り返りながら外への目線を相手の方へうつす。少し目線を下げた先にはねたままの毛先を揺らしながら首を傾げる実がいた。目が合った実は自分の前髪を軽くつまむ。
「目にかかると自分は見づらくてよく切るけど、ゆうきはめっちゃ長いからどうなのかなって思って」
ははと軽く笑った遠藤は体ごと実へ向け、口元まで伸びて目を殆ど隠している前髪からひと房とり、指に絡める。
「確かに邪魔だなと思う時はありますよ。視界は狭いんで、実先輩」
「そうなのか。じゃあ、なんでそのままにしてるんだ? 切れば良いのに」
実は不思議そうに彼女を見つめる。遠藤は自分よりひとつ上の先輩になんて言えば良いのかと少し目線を外し考える。うーんと前髪を絡めている指をくるくると回す。
「
……
なんというか、あんまり顔出したくないんですよね。自分の顔というか、目が好きじゃなくて。昔からなんか怖いって言われてて
……
あと小学生の頃から割とこの前髪だったんで今は慣れてるんですよ」
にかっと笑う遠藤は腰掛けていた窓際の段差から降り、実の目の前へとしゃがみ目線を合わせる。
「それでも人と話すのは好きなんで、相手が怖がる様な要素は減らそうと思って今の髪型に落ち着いてる感じですね! まあ第一印象はあんまり良くないとは思いますが、この前髪だと実先輩みたいに話してくれる優しい方を見つけやすいんですよ」
実が近くなった遠藤と目線を合わせたままじっと見つめる。
「ゆうきは目を見られるのが嫌なのか?」
「
……
それとは少し違うとは思ってますが、見られないに越したことはないですね」
首を傾げ、少し困ったように笑う遠藤。自分は目を見られるのは別に構わないと思っているが、怖がれるのは困るからだという考えは一般的に嫌だと捉えられるだろうと思っている。実際に話した際、家族や知人にはよくそのように言われる。気にする必要はないと。だからこそ前髪の話は聞かれたら答えるが自分からはしない。上手く伝えられないのと余計な心配をかけさせるからだ。
「
……
うん、まあ、ゆうきが前髪が邪魔過ぎて困ってないなら良いや! なんか色々あるんだろ? 私はさ、考えるの苦手だからゆうきが好きにしてるのが一番だと思うんだよね」
にっと歯を見せて笑う実に遠藤は予想外の言葉に驚き、動きが止まる。
「気に、ならないんですか?」
「ん? あ、もう理由聞いたし、ゆうきはその前髪が良いんだよね? ならもういいじゃん。ゆうきが好きでしてるんだし」
「まあ、そうなんですが
……
」
何か言われるのではと思っていた遠藤は拍子抜けしたような顔をしていると、実はそうだと声を掛ける。
「さっきゆうきは自分の目好きじゃないって言ってたけど、私は好きだよ」
好きだと言われたその言葉に目を見開く遠藤。
「だって格好良いじゃん! キリッてしてて強そうで! むしろ私はそういう目になりたかったなって思って」
「そうなんですか
……
?」
「うん! だから隠すのは勿体ないとは思うけど相手の為に思って、ゆうきがそうしてるなら私からはなんも言えんし。むしろ考えてるゆうきは凄いね! 優しいなと思った」
実が元気よく凄いなと話している。思わず遠藤は手をおでこに当てながらあははと声を出して笑い出す。まさか優しいまで言われるとは思わなかった彼女は驚きと笑いが止まらない。きょとんとしてる実に息を整えながら向き直る。
「はぁ、やっぱり実先輩は良いですね」
「え? 何が?」
「あ、いやこっちの話なんですけど。ありがとうございます。はじめて格好良いって言われました」
「ええ!! そうなの? こんなに強そうで格好良いのに!」
ガタッと席を立ち驚く実。下から見上げる遠藤は更に笑ってしまう。
「くっ、あはは、そこまで絶賛されるとは思いませんでした
……
! 実先輩もつり目で私とお揃いなんですよ。格好良い仲間ですね」
「そうなるのか? うーん、そこまで格好良くはないけど、ゆうきと同じ仲間になるなら嬉しいや」
へらっと笑う実は嬉しそうに話す。笑う先輩に遠藤は眩しそうに目を細める。
「私も実先輩と一緒なのが嬉しいです」
顔を上げて立ち上がる遠藤は誇らしげに前髪を揺らした。
あとがき
久しぶりに書いた
…
最近はずっと書きたくても文字も書きたい場面も思い浮かばなくて進んでませんでした。でも書きたいという想いからちょっと過去の短編や他の小説を読んでやっと完成まで持っていけました。良かった。
さて、改めてこちらの短編は、以前バスの中で自分の前髪が伸びて邪魔だなと思ったのがきっかけで書き出したものです。
前髪が長いといえばうちの子、遠藤ゆうき!ということで、偶に話す遠藤さんを主人公にしてみました。あとあまり語ってこなかった子なので、知り合いを増やしたいなとも思い、うちの子、実の後輩にしてみました。
遠藤さん、彼女は目を隠す程の前髪にしていますが、それを補う程のコミュ力を持つ子です。自分の目が好きじゃないのは人を怖がらせたり嫌な気持ちにさせたりするからです。話せば彼女自身を見てくれるのでそこまで思われることはないのですが、何度も言われた幼い頃の経験から今も心に引っかかっており前髪で隠すことにしました。前髪で言われることもありますが、不思議がられることの方が増えたので彼女的にはそっちの方が楽と判断しました。
そんな遠藤さんが実の言葉に驚きと嬉しさを感じてくれたらなぁと思っています。素直な実だから遠藤さんは先輩として慕っているんだろうな。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内