11155.
2021-05-03 17:26:14
1988文字
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彼氏の特権

謙蛍でただぎゅーして欲しかった、イチャイチャして欲しかっただけです。玄関お前ちゃんと閉めたか?それだけが心配ですが、いいぞ、もっとやれ

呟き元こちら
https://twitter.com/11155moon/status/1389055996195086337?s=21

彼氏の特権

 母親に頼まれた買い物帰りの途中、謙之介の姿を蛍が見つける。
「謙之介さーん! 今帰りですか?」
 小脇に抱えている荷物を見ながら声をかける蛍に彼が微笑みながら答える。
「お、お疲れ様。そうなんだ。ちょうど知り合いから面白いもんあるからって購入してきたんだ。店に並べようかなと思ってな」
「そうだったんだ!」
「うん、蛍ちゃんも帰りかい?荷物持とうか?」
 空いてる方の手を差し出す謙之介に優しいなと思いながら大丈夫と返事をする。
「そんな重くないし一人で持てるよ。ありがとう。嬉しい」
「そうか。なら一緒に帰ろうか」
「はい! あ、そうだ!」
 そう言うと彼の差し出された手をぎゅっと握り返す。驚き目線をあげる彼の前には少し耳を赤く染めながら嬉しそうに話す蛍がいた。
「手繋いで歩きたいなと思って。良いですか?」
「あ、ああ。こちらこそ良ければ……
「えへへ、もちろん」
 こちらこそって……ともっと気の利いた答えを出せば良かったと内心思っていた謙之介だが、隣で嬉しそうに鼻歌を歌う蛍を見て、ま、いいかと力なく笑う。
 そんな姿に思わず声が漏れる。
「ぎゅーってしていいか?」
 蛍がビタっと固まり彼の方をゆっくり見る。あ、しまったと思い、なにか言おうとあたふたしていたら先に答えが上から聞こえてくる。
……ここじゃ嫌だ
 小さくでも確かに聞こえる声で。あの恥ずかしがり屋の蛍ちゃんが……と思わず聞き返す謙之介。
「ここじゃなかったらいいのか?」
うん……
「そっか」
 顔を赤く染めあげている蛍に謙之介が一段と柔らかい声で返事をする。そして繋がる手を握り直し、指を絡めながら続ける。
「俺の家まであと少しだから……そこならいいか?」
 こくんと頷く蛍によし、いこうと声をかける。思わず足取りが早くなる謙之介は顔がにやけないよう気を引き締めることしか今はできなかった。
 
 荒古の表札をみながら、家と続く扉を開け中に入る。思わず沈黙が続く中、謙之介が先に声を発する。
「蛍ちゃん、ほら、ここにとりあえず荷物置こうか」
 とポンポンと玄関先、室内と靴を脱ぐところの境になっている段差の所を示す。彼の隣を確認しつつ、どぎまぎする心臓を押さえながら分かったと言い隣に座る。
「うん、良い子だ」
 素直な蛍に謙之介も微笑み、彼女の手にそっと重ねる。
「急にごめんな。でも答えが返ってきて嬉しかったよ」
……っ、だって……外じゃ恥ずか、しいから……彼女だ、し……す、きだから……その…………
「ふっ、そうだな。外は恥ずかしいもんな。じゃあ、もうぎゅーしていいか?」
……っ! うっ、はい……!」
 目線をそらしながら、でもガバッと手を広げどうぞ!と言わんばかりに準備する蛍がいた。思わずあははと声を出してしまう謙之介だが嬉しそうな声で続ける。
「そんな、身構えなくても大丈夫だから。ありがとうな」
 目を細め笑う謙之介はその腕の中にそっと入っていく。背中まで腕を回し蛍の細い体を大事そうに抱く。それに応えるようにぎゅうと謙之介さんを抱きかかえて、肩ぐらいのところにある彼の頭に顔を埋める。
……蛍ちゃん、それ好きだよな?」
「はっ、いや無意識にやってて……あと多分、ちょうどいい位置に頭があるからつい」
「俺も背は高い方なんだが、そんなこと言えるのは蛍ちゃんくらいだな」
……うっ、ごめんなさい……
「あ、いや怒ってないし謝ることじゃないから。な?」
 少し苦笑しながら話す謙之介に驚きながら蛍が聞く。
「そ、そうなの?」
「こうやって包まれるくらいのも安心するし、蛍ちゃんを感じられて嬉しいよ。男としては少し情けないが」
「そんなことない!謙之介さんがいつも引っ張ってくれるから頼もしいし、こんなに顔近くで話せる人も居なかったから!イタズラしても構ってくれるし!優しくて可愛い人は居なくて、それで……!」
 一生懸命に話す蛍にそんなに想ってくれていたのかと謙之介も思わず口元がほころぶ。
「うん、俺も好きだよ。蛍ちゃん」
……ひゃぁ、は、はい……好き、です……
 彼女の胸が更にドキドキと音を鳴らすを感じながら、謙之介は笑いながら顔を上げる。
「本当はもっとしたいんだが、買い物帰りだったよな? 時間もそんな取れないだろうから玄関先で申し訳ないがちょっと、我慢できなくてな。あと少しだけ……少しだけ蛍ちゃんの時間貰うな?」
「はい……
 また顔が真っ赤になっていく蛍。そんな姿にはやる気持ちを抑えながら彼は顔を近づける。
「あとこれだけは彼氏の特権でさせてもらうな」
 そう告げながら自分の唇と彼女の唇を重ねる。思わず目を閉じる蛍とは対照的に、謙之介の熱のこもった目は真っ直ぐに目の前の相手を見ていた。あと少しだけだからと。