Or do you want sweets first?(HadesGame)

あまりに内容がないのでお蔵入りしてたけど上げちゃう~。Thanzag。とてもとても短い。デキてるふたりがクスクスしてるだけ。


Or do you want sweets first?


 三廊式の冥夜の館は、正面がNyx、南北にのびる側廊の先がそれぞれThanatos、Hypnosの居室となっている。
 その日。あるいは夕。あるいは夜。あるいは朝。
 取っ手つきの、ラタンのバスケットを抱えてZagreusはやってきた。るんるんと鼻歌交じりに。葉蔭で息む蝙蝠たちを、しげしげと見上げたりしながら。
 Thanatosは闇色のフードを取って、冥夜の館へと続く門扉を内側から開けた。夢吸いのニレの木がざあ、と音を立てる。呼応するように、Zagreusの髪間でも月桂樹の葉冠が穏やかに燃えた。
「Than!」
「ああ、お疲れ、Zagreus」
「帰ってきてるって聞いたからさ」
「お前が戻るちょっと前に。すれ違いだったな」
 腰衣に皮のベルト。亜麻の布地が描く緩やかな襞。武具の類を身に着けていないZagreusは幼く見える。かがむようにして、Thanatosは念友の瞼に口づけをした。唇をスライドさせて、眼尻にも、頬にも
 Zagreusの柔らかな感触を愉しんで、くたびれた心を蘇らせる。
「おかえり、Zag」
 そう言ってThanatosは青銅の門扉を閉じた。肩のところにいたMortが、とことこと腕を伝って移動してくる。
 夢吸いのニレがまたざあ、と大きく音を立てた。
 肩の結びを解けば全身が顕わになる懸衣で来るなど、きっとそういう意味であろうとワクワクしながら。


 昔から(少し間が空いたこともあったが)、自室よりくつろげると言ってZagreusは夜の館へとやってきた。それはお前があの部屋を一向に片付けないからだろう、と言いたい気持ちを押して、Thanatosはこの屈託のない念友を迎え入れた。まあたまにはあの父王の側を離れたいだろう。そんな気持ちも多分にあった。
「随分たくさん作ってもらったんだな」
 赤いクロスのかかったバスケットを見下ろしてThanatosは言った。
「ハンバーガー、おかわりのハンバーガー。サラダにジュース。これはチーズパイかな? お、はちみつもある」
それは俺の分も?」
「ったりまえだろ! Thanのとこ行くって言って作ってもらったんだから」
そうか」
「喉かわいた。ジュース飲むか」
 いつもながらリラックスして自由なZagreusに、Thanatosは狙いをさだめるような気持ちになった。抱きついて深く息を吸いこみたい気持ち。室遇に押し込んで噛みつきたい気持ち。嫌がられて笑われたい。欲張って叱られたい。好き同士になってから本当に……、一緒にいることが楽しい。
 Zagreusが飲もうとするジュースを奪い取って、Thanatosは「うん、Tasty」と頷いた。甘くない、何かフルーツの味のする紅茶だ。よくもまああの大忙しなChefに、ここまで料理を用意してもらえるものだ。釣った魚を持ち込んでいるから? それにしたってこうまでしてやることもないだろう。
「何かコツが?」
 ストローを咥えてThanatosが聞けば、Zagreusは首を傾げたあと、自らもアイスティーを吸い上げて「……、まあ、言うようにはしてる」と小さく笑って呟いた。
「言うように?」
「おいしかったとか、ちょっと苦手だったとか、また作ってくれたんだ! とかさ……
「ハー……
 出たのは……、出たのはため息だった。この、この、混乱と義憤!
 こいつには男妾の才がある。優しくて悪戯好きで謙虚で陽気。素直さも自虐性も蒙昧さも。屈託なさも! なにもかも相手を期待させ、悦ばせる。
 それは紛れもなくZagreusの持ち味で、けれど、Thanatosからしてみればひどく心掻き乱される要素だった。
「ハー、」
 ため息も二回出る。
 Zagreusはテーブルにクロスを敷き、反対側の椅子にThanatosが座るのを待っている。そのいつも通りの居振る舞いになんだか気が抜けて、Thanatosは笑った。こういう奴なのだ。それに今回ばかりはThanatosとしても学ぶべきところがある。
「アー、こほん。Zag? お前はいつも可愛い。お前といると、甘い欲が留まることを知らない
「ハハ! ふぅん?」
 そうきたかと足を組むZagは楽しそうだ。だってこまめに本音を言い続けていれば、相手から相応のサービスを得られる。そういう話だっただろ?
「お前との時間は甘くて、今から一緒に過ごせるのも楽しみでならないな」
 Thanatosは続けざまに言って、……、けれど落胆して椅子に座った。きちんと本当の気持ちを告げたのに、Zagときたらフーンといった様子のままなのだ。
………………
 これは失敗したらしい。腕を組んでThanatosは反省した。らしくもないことをするべきではない。
 アイスティーで喉を潤し、Zagreusが寄越してきたおしぼりを使って返す。おしぼりに香油が垂らされていたのか、アイリスの甘く爽やかな香りが指先に残った。
………、Zag?」
 さて食事を広げようとThanatosが籠を覗き込んだとき。
 おしぼりを握りしめたまま顔を上げないZagreusに、Thanatosは言葉を飲み込んだ。左手が、うろうろとクロスをさまよってThanatosの手にたどりつく。おもねるような熱を持った指先が。とろりと誘うように爪の表面を撫でる。
「、Zag……
 Thanatosはうっとりとして目を開け閉めした。ゆっくりと心を整え、じっくりと目をこらす。Zagreusは俯きながら、肩紐をくいと引っ張ってほどいた。
 肌の曲線に沿って、夜着はするりと落ちてゆく。輝くような肩。精気に満ちて若々しい腕
 食卓の向こう側で顕になっていく上半身に、Thanatosの全身は爛々となった。
 どうしよう。お前を暴きたいといって、翼の生え際までが痛むようだ。

 見惚れているThanatosを前に、Zagreusは椅子の上で片膝立ちになって言った。 
「俺は、Sweetsが先でもいいよ、Than
 言葉のわりには、ひどく恥ずかしそうに言うのがいい。色の違う瞳を上に下にちかちかさせて。
 座面で止まっていた衣が、ぱさりと床に落ちる。
 テーブルの向こうには、愛しき伴侶の腕輪だけをはめた甘い甘い裸体

 Thanatosはテーブルに乗りあがって、きつくZagreusの手首を掴んだ。


『それとも先にSweetsにする?』





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