seika_ashe
2025-03-16 01:12:42
1544文字
Public
 

灰に帰す

宮沢翔那 独白

焦がれるって辛いね。本当に焦げちゃうみたいに、ジリジリして、体の端の方から少しづつ崩れていくみたいな感覚がするんだよ。
燃え尽きるの、燃え尽きて灰になって、諦めて、地に落ちるの。燃え尽きる前に、地に落ちる前に気がついて貰えたら、それは本当に素敵な事だけれど、そんなの高望みってわかっているから俺は何にも言わないよ。落ちた灰を拾い上げて貰えたら、それ以上の救いなんて無いけれど、困らせるだけだから気付かせないよ。

誰も居ないところで俺は俺を燃やすの。
誰も気にしない日陰に俺は灰を捨てるの。
だってそれが最善だ。愛らしい花を咲かせて、売って、最期は誰にも知られず朽ちていく、それ以上に俺に似合いの最期は無いでしょ?

ね、先生。
俺、アンタが求める馬鹿で阿呆な子で居られたでしょ。後腐れの無い遊びの関係で、気は合うけれど何時でも捨てられる関係の子で、居られたでしょ。都合のいい生徒で、居られたでしょ?
俺ね、誰かにとって都合のいい人間で居るの、得意なんだよ。外でアソビ回る前から、ずっと得意だったんだよ。だって俺は元々、そういう人間だったんだから。父さんと母さんの言う事をよく聞く、都合のいい子。それが俺。
ねえ先生、俺、いい子だったでしょ?

自分の思想を破棄するのにも慣れた。意見を殺すのも、もう何度もやってきた。俺がやってきた事の十数倍はして欲しい事、やりたい事を燃やして灰にしてきた。
だって誰も叶えてはくれないから。
俺の思想は通らない。
俺の意見は拒まれる。
俺の要求は疎まれた。
沢山拒まれたの、沢山疎まれたの、求めても叶えて貰えなかったの。だから最初からもう全て、辞めた。望んだところで叶わないなら、望むだけ無駄だ。無価値だよ。……俺がこんな事思ってるだなんて、アンタは微塵も考えてないんだろうな。

先生には俺がどう見えてた?
享楽的で、快楽主義のセフレ?危ない事が好きな生徒?まあ、どれも間違ってはいないよね。実際問題、俺はそう見えるように振る舞っていたと思うし、そういうのが嫌いな訳では無いよ。だって自由だもん。何にも縛られなくて、何にも気にしなくて良くて。これ程楽なことは無いよね。楽なのは好きだよ、俺。
でもさ、俺、馬鹿で阿呆で、享楽的なだけじゃ無かったよ。それをアンタが気が付いてたかは、知らねーけどさ。

ずっと悩んでたよ、ずっと苦しんでたよ、ずっとアンタの事を見ていたよ。でもアンタは重要な時にこっちを見てはくれなかった。見ていて欲しい時に見てくれねーの。
物理的な視線とかの話では無いよ。精神とか、何かそういう感覚的な話。先生はいつも、居なくなった義兄弟さんの影を追ってる。事ある毎に探してるの。……ずるいよね、本当にずるいよ。死んだ人間とは勝負出来ない、同じ土俵にすら上がれないのにさ。
……だからさぁ、隠すしかないじゃん。捨てるしか、ないじゃん。無かったことにする以外、他に何ができるって言うんだよ。俺は一生、アンタにとっての何にもなれないって悟ってしまったら、もう俺はどうしようもない。打つ手も無い、何も出来ない。……何度か口に出してみたけど、アンタは知らん振りをするから、諦めるしか無かったよ。

おれはせんせーの事が好きだったよ。
俺は先生の事を愛していたよ。
俺はアンタの1番になりたかったよ。
俺は貴方の事を見ていたし、貴方の特別に一度で良いからなってみたかったよ。

でも貴方ですら俺を拒むのなら、もうどうしようも無いから。この思想も、意見も、要求も、恋心も全部全部火に焚べて燃やし尽くして、無かったことにするよ。
灰にして還すよ。貴方の記憶に焼き付かないように、日陰に撒くから。

どうか今更、貴方が俺の気持ちに応えませんように。