その日も普通に寝ていたら、ふと、足首を掴まれた感覚があった。
そして──────────
次に目を開けると、死んだはずのとーさんとかーさんに抱きかかえられていた。僕の身体は、明らかに子供の頃の大きさで、かなり小さい手だった。大事なぬいぐるみであるテディも、凄く大きく感じる。
外からは、悲鳴と、何かが破壊される音が聞こえる。それが、その音がどんどん近づいて来ていることが分かり、ふつふつと鳥肌が立ち、震えが止まらなくなる。
これは、僕の、過去だ。
それも、あの時の記憶だ。
大事な、愛する、愛して止まない家族を
……敵によって失う、あの時の。
いきがあがる。
温かいとーさんとかーさんは、その止まらない震えと、大きく上がる息が、迫りくる敵に恐怖しているものだと思っているのだろう。
だから、
「はーちゃん、大丈夫だ。何があってもとーさんが守るからな」
「そうよ、かーさんもいるからね」
と、言いながらぎゅっと抱きしめてくれる。
それはそうだ。当時の僕は、そうすることしかできなかったのだから。
抗う力のない、小さな子供。
僕は、ここから先の展開を知っている。忘れるわけが無い。忘れられる、わけが無い。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だイヤだイヤだイヤだイヤだやめてくれ!!!!!!!!
そう思う僕の意思とは裏腹に、どんどん音が大きくなる。ガタガタと震えることしか出来ない僕を見て、とーさんとかーさんが、覚悟を決めた顔をする。僕は、動けない。
壁が、壊される。敵の姿が、現れる。
とーさんが「掛かってこい!!このバケモノが!!!!!!」と震える声で叫ぶと同時に、かーさんが僕を無理やり伏せさせて手で目隠しをされたことで、世界は暗転する。
震える声で、「大丈夫、大丈夫だからね」と、かーさんが言い聞かせる声が聞こえるが、その奥ではドタバタととーさんが戦っているであろう音が聞こえる。
永遠のように長いようでほんの短い時間が経ってから、ドスン、と大きな音が、すぐ近くでする。
そして「二人を、殺させるものか
……!!!!」と、荒い息のとーさんの声がしたと思うと同時に、重さが増す。
重さが増した直後にドスリと衝撃が来る。
ドスリ、ドスリ、ドスリ、ドスリ
何度も、何度も衝撃が来て、それでも、かーさんは安心させようと声を掛けてくれて。でも全然衝撃が収まる気配が無くて、敵の明確な殺意を感じた。
温かい液体が、上から伝ってくる。
とーさんの呻く声が、聞こえなくなる。
かーさんの声も苦しそうになる。
か細い声で呟かれた「愛してるわ、はーちゃん」という台詞が聞こえた途端、何故か不自然な静寂が訪れる。
黒いようで白いようで、それでいて赤いような空間で、キーンという耳鳴りと、バクバクとうるさい心音と荒い呼吸音だけが響く。僕だけの、音がする。
「ひとりはいやだ」
「ひとりにしないで」
そう呟く。
そう呟やいて気付く。そうだ。そうだった。そういえば、
僕は唐突に思い出した。
最近、トラウマを見せる未確認生命体が発生していることを。
思い出した瞬間に暗闇と血の生温かさが払拭され、今の家族が頭を過る。そう。僕にはもう『新しい家族』がいる。それに、日々の努力を重ねて強くなった。家族を守るための力もついてきている。
いつの間にか四肢が元の大きさに戻っていた。
だから、だからこの
夢は、ここまで鮮明なこれは、いつもの夢じゃない。
そうはっきり認識すると、意識が浮上する感覚が生まれる。でも一歩足りない。
ここから抜け出すにはたしか、精神力で対抗するんだったよね。
唐突に、親父
……槙島サンと音の関係を羨ましく思ったことを思い出す。あの親父がどんどん明るくなっていくのを見て、家族の上位互換は恋人なんじゃないかと、ようやく思った。
他の家族も「恋人はいいぞ」って言ってたし、僕にはよく分からないけど、きっとそうなんだ。
家族愛は誰にも負けないと思ってた。でも、それじゃあどうにもならないことがあった。
だってそうだ。きっと、何かを乗り越えるには『特別な愛』が必要なんだ。それがきっと「恋人」ってやつなんだ。
死ぬ気で、いや、死んでも僕を守ってくれたとーさんとかーさんみたいな関係が必要なんだ。
僕にとっての特別って、誰だろう。
家族は皆特別だと思ってるけど、その中でも1番特別なひと。
『いちばん愛するたったひとり』
ストン、と腑に落ちるようにひとりの顔が思い浮かぶ。そうだ。ソウちゃんだ。
いちばん大事で、いちばん好きで、いちばん勝ちたくて、でもいちばん守りたくて、大好きで大切で愛おしい「家族のようで家族じゃない」存在。
そうだ、きっとそうだ。
一番支えたい存在は勇心
……統括だけど、もう家族だし。勇心は強いし尊敬もしてるけど、相棒もいるし、親父もパパもお父さんもお母さんもいるし、一緒に支えようと誓ってる迅だっているから、『守りたい』には近いかもしれないけど『たったひとり』とはちょっと違う。
もちろんソウちゃんも強いんだけど、なんというか、こう、多分何かが違う。その何かはわからないけど
……。
だから多分、こういうときは、きっとこれで合ってるはず!
僕は!!ソウちゃんが大好きだ!!!!
そう強く想うと一気に意識が浮上し、意識が覚醒する。
同時に枕の横に置いてある太刀を鞘から抜き、未だに僕の足首を掴むそれ(ユメマクラ)をザクザクと突き刺し討伐した。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.