ながとぅ
2025-03-15 23:39:47
2703文字
Public ZZZ
 

ZZZ【イトビリ/イノセンス】

※あてんしょーん※
・転生現パロ(ちょいアングラ系)
・イトビリ
・何でも許せる方向け
・ほぼプロット
・尻叩き用


※ざっくり設定※

☆ライト
前世でビリーを庇い、死亡。
「愛する人を守ってこそ、すよパイセン
今:今回も人間として転生。前世の記憶ナシ

☆ビリー・キッド
ライトの遺言によって生涯を全うしたが、後年は心ここにあらずだった。
「なんでオレなんか庇ったんだ」
今:旧デザの人間として転生。前世の記憶アリ








-------キリトリセン-------


人間が死ぬなんて当然の事。
命あるものはいつか必ず消えていく。
そんなのはこの星が生まれた頃から決まっている出来事。
ただ、その消えた命がどこに行くのか。
――それは誰も知らない。
あの日の出会いがあるまでは。

【イノセンス】

金持ちが暮らす上層のアップタウン、中層であり、経済の中心地ダウンタウン。
そして、貧民や訳アリたちの暮らす下層、ゲットー。
大まかに分けて三層から成る都市――新エリー都。
名前は同じでも全く異なる構造をしているその都市。
――ビリー・キッドは、ゲットーのとある組織で用心棒として働いている。

「今日はオフだし、買い出しと……

昼過ぎだというのに今日も今日とて騒がしい。
言い換えればゴミゴミしていて、雑多。
金さえあれば何でも手に入る下層の雰囲気は嫌いじゃない。

「おい」

不意に、聞き覚えのある男の声が聞こえた。

「え」

思わず立ち止まると鼻先を猛スピードの車が突っ込んで来たかと思えば、通り過ぎて行く。

「うおッ!?あっぶねー!轢かれる所だったぜ
「前見て歩きな」
「いやぁ助かっ、た――

片目を覆うようにセットされている翡翠の髪。
サングラスの奥に眠るエメラルドグリーンの鋭い眼光。
クラシックスタイルのライダースジャケット。
ダメージの入った黒のシャツ。
その首元にドッグタグや赤いマフラーこそないが、俺がこの男を見紛う事など有り得ない。

「お前ライト、か?」
「他人のツラにゃ興味ねぇ」
「そ、うだよな!ハッハッハ!悪い悪い、マジで助かったぜ!」

別れようとした矢先、身体が勝手に動いた。

「おい」

明らかに不満げな視線が突き刺さる。
当然であり、理由は簡単。
俺がライトの行く手を通せんぼしてしまっていたから。

「おっと、悪い!」
邪魔だ」
「あ」
「チッ
「あー、えーと……何度も気があっちまったな!」

何度やってもライトの行く手を阻んでしまう。

………もういい。止まれ」
「っ……!!」

最後の極めつけで、すれ違って離れて行こうとするライトの手首を掴んでしまった。

「チッいい加減に……!」
「あのよ、美味いメシ屋、近くにあるんだけどい、いかねぇ?」

振り払われそうになった寸前で言葉を振り絞る。
ガラにもなく、緊張で声が掠れていた。

「ほら、助けてもらった礼してぇ、し……?」
「はぁ?」

我ながら不審者だと思われても仕方がない発言。
だが、今会えたのは絶対に何かの縁だ。

「いや、急だしその、予定があるとか、ダメならいいんだけどよ……
……アンタの奢りならいいぜ」
「ホントか!?」
「アンタに奢る気があるならな」
「ある!大アリ!あるに決まってるだろ!」

時々ライトが背後をついてきているか確認しながらも何か言葉を交わす訳でもなく、行きつけのメシ屋に入る。
何時になっても変わらず賑わっていて人も多い。

「何食う?」
「アンタのオススメでいい」
「んじゃあ、コレとコレと……

適当に注文をしていく。

「酒、飲むか?」
「飲む」

料理を待つ間、先に運ばれてきたハイボールに口を付ける。

「俺はビリーだ。さっきは悪かったな、改めてお前の名前教えてくれよ」

もう知ってるくせにこいつは何を言っているんだ、という顔をされた。

「あーマジでライト、なのか?」
「あぁ」
「あ、そうだ。お前の話、聞かせてくれよ」
「は?」
「じゃねぇと潰れるまで飲ませるぞ」
「チッメシ食うだけじゃなかったのかよ
「まぁ、そう言うなって!」

どうにもこの時代のライトは、孤児院で育ったらしい。
孤児院で問題児扱いされ、居心地が悪くなった孤児院を単身で飛び出した。
そのままゲットーでグレていたら喧嘩の腕を買われ、ボクシングジムに拾われた。
今はジムトレーナーの所で世話になっているとの事だった。

「アンタは」
「え」
「俺の話だけ聞いておいて自分は話さねぇつもりか」
「聞いても楽しかねぇぞ?」
「お互い様だろうが」
「ま、お前が聞きたいって言うんだ。話してやるよ」

とはいえ、さすがに前世を覚えてるかどうの、なんて話せる訳もなく。
そもそも、前世での俺は生身じゃなく、鉄の塊だった訳で。
我ながら不毛だった、などとかつての行動を省みる。
そういえば事の始まりは――どっちから手を出したんだったか。
曖昧な記憶を辿りながらも、今生の経歴を手短に話した。
いずれにせよ、今の人生がライトにとって順風満帆に進めばいい。
そう願いながら、他愛のない話を聞くに留めた。

「美味かったな!」
「まぁ悪くなかった」
「あ、そうだ!連絡先交換しようぜ。またメシ誘うからよ」
「アンタの奢りなら考える」
「当たり前だろ?俺様はお前よりも年上で先輩だからな!」
……変わってるな、アンタ」
「それって褒めてる?」
「まぁ、ギリ褒め言葉だ」
「ギリなのかよ!?」

何とはなしにちら、とライトのスマホを盗み見る。
登録名はBrother――すなわち、先輩。

「じゃ、また連絡下さいよ。パイセン」

心なしか最初よりも柔らかくなった雰囲気の背中を見送った。

「っ……?」

煙草を咥え、火を点ける。ゆっくりと肺へ煙を送り込んだ、その時だった。
突然、ワサビでも食べた時のように鼻の奥が痛み始める。
目頭が熱くなって視界が滲む。
一体何事だと思って足元の水たまりに目を落とせば、瞳に光るものが滲んでいる。
これが“涙”か。

「はぁ……っ、くそ

何故涙が出るのだろう。
悲しい訳でもないのに。
人間は悲しいから泣くはずだろう。

「煙がしみるぜ……

頬を伝う雫を乱雑に拭いながら、誰に言い聞かせる訳でもなく呟く。

「っし!」

煙草が燃え尽きる頃には、涙も引っ込んでいた。
そう、今度こそライトが幸せになればそれでいい。
何より、前世であいつが言っていたのだ。

「愛する人を守ってこそ、だろ?なぁ、ライト」

俺の呟きは煙と共に曇天の空へ吸い込まれて消えていった。


つづく?