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九条空
2025-03-15 05:32:08
2371文字
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bbb
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時は足早に逃げる
血界戦線/既知転生/TSロリ
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占い師の手元を覗くな
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明日をあてにするな
通話を切ったツェッドは、微妙な顔で俺を見た。
「おれのごきげんをとるなら、きおくはもどさないでいてくれるよな?」
「そういうことになりますね、非常に頭の痛いことですが」
ツェッドが代金を置いて、ダイアンズダイナーを去ろうとする。
俺は逃げ出す気もないが、一応ツェッドに手を握られていた。
「どこいくんだ?」
「ひとまず同僚のところへ」
「わー。ツェッドのしごとなかま
……
げいにん?」
そういえば、俺はツェッドの仕事を大道芸人だと聞いている。
これから連れていかれるのライブラだと思うが、大丈夫か?
「ええ。火吹き男がいます」
それお前の兄弟子のこと?
大した覚悟をする時間もなく、あっという間にライブラの
――
ここは社屋ということでいいのか
――
に、たどり着いた。
もちろん、道中指名手配された俺を狙って、いくつかの武装集団に襲われたが、ツェッドが一人で全部何とかした。
俺はツェッドの大道芸を見ていた時のように「おお~」と言って眺めているだけであった。
おそらく先ほどのツェッドの通話相手、顔に大きな傷のある中年男性
――
スティーブン・A・スターフェイズが俺を見て言う。
「彼女は終焉の書に記載された42の世界崩壊幇助器具の一つ『オムニアの天秤』の適合者だ」
「なんて?」
すごい難しい単語がいっぱい飛んできたので受け止めきれなかった。
「当然天秤と言いながら計測器具ではない。適合者の心理状況と世界平和を釣り合わせる、因果律を書き換える神器だ」
「というと?」
「君の気分が悪くなると世界が滅亡する」
「うわあ。すげえ」
これがいわゆるセカイ系ってやつ?
お相手は誰よ、心当たりないぜ。
「本日15時13分頃、ヨハネス平均株価が計測史上初の上昇率で跳ね上がり、地球の海面上昇傾向は低下、ドミニゴ=ロドリゲスファミリーは壊滅、スミソニアン動物園でパンダが生まれた。ツェッドの報告を聞くに、そのとき君は初めてハンバーガーを食べた」
俺がハンバーガー食うとパンダが生まれるんすか?
「同様に、君が落ち込むと世界規模で悪いことが起きるだろう。君の心境が世界の治安そのものだ。少女一人痛めつけるだけで世界を破滅させられるのなら、意気揚々と乗り込んでくる輩はいくらでも思いつく」
なるほど。
世界を崩壊させるための器具としてそれが存在するのなら、俺は絶望させられるためにこの世に生まれたということか。
喜びがない~。
「解除方法はないんですか?」
「レオ」
ツェッドが険しい顔でそう尋ねれば、スティーブンは脇にいたレオナルド・ウォッチに話を振った。
レオは神々の義眼で俺を見ながら、ツェッドよりもさらに険しい顔をしている。
「
……
解除とかいう次元じゃないですね。彼女自身が天秤に
成っている
。これを元に戻す方法は
……
」
「おれのすいりはあたりだ。まともなじんせいおくってなさそう」
そもそも俺は人か? 適合、というからにはもともとは人だったということでいいのか。
だが不可逆で、俺はもう普通の人間には戻れない。
「おもいださないほうがいいよな?」
手首の内側にある入れ墨を見せる。
あれだけテレビ広告をうたれていたからか、ここにいる全員がなんとか製薬から発売された記憶喪失薬のことを知っているようだった。
俺が取り戻すのが悪い記憶であれば、気分がズンドコに落ちて世界が滅亡してしまうかもしれない。
そんなリスクはとらないほうがいいという判断であったが、スティーブンの返答は違った。
「君がどこから逃げ出してきたのか、あるいは逃げさせてもらえたのか、我々はその動向を完全には掴めていない。可能であれば記憶を取り戻して捜査協力してほしいが」
「おっけー。おれもせかいはへいわなほうがいいとおもうし、きょうりょくするよ。ここってあくのそしきじゃないもんな?」
そういえば結局この組織のこと説明してもらっていなかったな、と思ったので念のため確認しておく。
すると奥で待機していた赤髪の男性が近くに来る。当然俺は彼を知っている。
「我々はライブラ。世界の均衡を保つことを目的とした組織です。紹介が遅れて申し訳ない、私はクラウス・V・ラインヘルツと申します」
「これはこれはごていねいに。おれのことはドゥとよんでください」
名刺まで渡されたので、お辞儀をしながら受け取った。
わーい、持ち物ゼロから名刺1つになった。しかもあのライブラのリーダーの名刺だ。
売ったらいくらになるんだろう。しかし己の命より高いものはないな。
ポケットにしまおうとして、だからこの服にポケットはなかったのだと思い出す。
まあいいかと指で挟んだまま、俺は手首の入れ墨をつつーっとなぞって記憶を取り戻そうとした。
それをツェッドが掴んで止める。
「いいんですか。思い出したくないと言っていたじゃないですか」
「しょうがない。だだをこねる
とし
じゃないよ」
何歳か知らんけど。さっきツェッドの前で思いっきり駄々こねてみせたばっかりだけど。
俺が肩をすくめると、ツェッドは渋々、俺の手首から手を離した。
記憶を失う前から、俺はおそらくそれなりに責任感のあるタイプだ。
だからこうして正面切って協力を頼まれれば、それを断れない。
入れ墨をなぞって、記憶を取り戻す
――
製薬会社の言うことが正しければの話だが。
実際それは正しく、俺は記憶を取り戻した。
「おえ」
そしてゲロを吐いた。
「ドゥ少女
――
!?」
慌てるライブラリーダーの声を聞きながら、俺は床に手と膝をついた。
やばい、憧れのヒーローたちの目の前で思いっきり嘔吐しちゃった、恥ずかしい。
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