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茶ツキ
2025-03-15 03:42:28
5237文字
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レド右
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女の武器で無双しようと企む話1
女の子になった🟥総受け風ギャグ。今回は導入編で、ややブルレドぽい要素があるだけ。
彼の名はミスターレッド。すまないスクールに通うごく普通の
……
ではないが、男子生徒だ。
レッドの授業態度は、正直言って真面目なものとは程遠い。自分の興味が引かれる内容でなければ、やれ「めんどくせぇ」だの、「だりぃ」だの、そう言って惰眠をむさぼろうとする。その結果教師やクラスメイトからきつい折檻を受けようと、態度を改めるようなことはしなかった。
「いてっ
……
」
ベシ、と丸みのある塊が赤髪の頭に叩き付けられ、レッドは微睡みの中から現実世界へと引きずり戻された。涎の垂れた顔のまま視線を上げると、アクアブルーの瞳がジッとこちらを見下げている。
すまない先生。3年B組の担任教師。あらゆる分野に精通しており、一般教科からサバイバル、このクラスの授業ほぼ全てを彼一人で受け持っている。
今回の授業も当然彼のものになるのだが、まるで頭に入ってこないワードの繰り返しでレッドはお約束のように寝落ちていた。そんな生徒を文字通り叩き起こした教師のものにしては、その表情はニヤニヤとまるで悪戯好きの子供のようだった。
「ぐっすり眠れたかな、ミスターレッド君?」
丸めた教科書を元に戻しながら、すまないはレッドに問い掛ける。随分と遠回しだが、要はそろそろ起きなさいということだろう。その後はくるりと踵を返すと、黒板の方へと戻って行った。
レッドは舌打ちを一つして、机に預けていた上体を起こす。だが一方で、彼にしては珍しい起こし方だなとも思った。優しいというのか、中途半端というのか。いつもならこちらの体力を削る程の一撃を与えてくるか、そもそもフルタイム放置かのどちらかなのだ。
しかしふと気が付いた。伸ばそうとした足に、コツンと固いものが当たったのだ。
何かがある。興味というよりは無意識にそれを確認しようと机の下を覗き込んで見ると、そこにはTNT爆弾が不自然に鎮座していた。レッドの目が点になる。
「おいおいおい、ちょ、待っ
……
!!!」
制止の声も虚しく、既に導火線へ着火済みだった足元のTNTはボカーンと激しい音を上げて爆発した。「どあああ!?」と悲鳴を上げたレッドは、黒焦げになった上に体力を失い、その場に机の残骸と共に倒れ込んだ。
「ブハッ
……
ちきしょう
……
」
黒い息を吐き、レッドはすまないを睨み付ける。やはりこの教師のあのニヤニヤ顔、こんな悪質な悪戯を企んでいた故のものだったのだ。
全ては授業をサボって堂々と眠っていた自分が悪いのだと素直に受け入れるはずのない彼は、いつか見てろよとこっそり報復を誓うのだった。
◇
「すまない先生に仕返しなんて絶対無理だって。つーかあれ、兄貴が悪いじゃん」
「うるせえ。いくら生徒が授業中に寝てるからって爆弾を置くかよ、普通」
給食中、ミスターレッドは弟のミスターブルーへ先程の授業について愚痴をこぼしていた。
その時胸に秘めた企みも彼には全て話し、「どうなっても知らねーからなー」とパンを齧りながら呆れる弟の額を軽く指で弾く。直接な原因がすまない先生とは言え、自分の真後ろの席でそのTNTを知りながらただ静観していたブルーもレッドにとっては共犯同然だったのだ。
「
……
まあそれはともかく、午後からの任務は真面目にやってくれよな、兄貴」
「へーへー。ま、そいつは俺の得意分野だからな。サクッと終わらせてやるよ」
午後からといえば生徒個々のスキルを伸ばすための個別授業が設けられているが、今回その時間で彼ら兄弟にはある任務が与えられていた。
最近何か怪しい研究をしている組織のアジトが特定されたため、そこへ潜入してある程度の秘密を探り、可能ならそこから何か一つ作っているものを盗んで来て欲しいという依頼が入ったのだ。このように言うと危険度の高い任務のようだが、組織の構成員は研究員等比較的力のない者しか存在しないということで、ステルス能力に特化し、逃げ足も速い彼らが選ばれたということだ。
時間となり、すまないから受け取った地図を見て二人が辿り着いたのは、街中にあるごく一般的なビルだった。特にひっそりした位置にある訳でもなく、ここで本当に怪しい研究をしているのか疑わしいほど清潔感のある外装だ。そもそもどんなものを作っているのかも不明なため冤罪の可能性もあるが、まあそれを突き止めるのが彼らの役目である。
レッドはこのビルを出入りした研究員の姿に変装して正面口から堂々と突入し、ブルーは裏口に回ってピッキングや通路に置かれた荷物等に擬態しながらこっそりと中を回っていた。結果的にはブルーのルートの方が本命の研究室なるものに近く、合流してからレッドの視点と合わせると表向きは第二医薬品の開発、しかしその裏で怪しい薬を作っている組織なのだと予想された。
さて後は恐らく非合法のその薬を一つ盗み出すだけだが、ここは山賊仕込みの盗みテクニックを持つレッドの出番だ。ブルーには隠れたまま部屋の外で待機するよう伝えると、研究員の姿でここも堂々と潜入する。皆黙々と作業しており、レッドが化けた研究員には目もくれない。
(へっ、楽勝だな)
薬品が多く陳列する棚の横を通過している間に立ち止まることなく一瞬で一本の栓付き試験官を攫い、懐にしまい込むレッド。勿論、誰一人それに気付いていない。盗み出すことに成功したので後はこのビルを出るだけだが、入室後すぐに退室しようとしているレッドにすら誰も気に留めようとしなかった。
扉を開くと、すぐにブルーが飛んできて「兄貴、こっちだ」と囁きレッドの腕を掴んで走り出した。しばらくされるがまま走っていたが、人気のない通路に辿り着くと漸く足が止まった。
事情を聴けば、レッドが変装した研究員本人があの部屋へ向かっていたらしく、ブルーはわざと物音を立てて別の通路へ研究員の気を引き、退室した兄を連れて彼のいないルートを通ってここまで来たようだ。
「やるじゃねーか弟」とブルーの背を叩いてぶっきらぼうに褒めるレッド。ここまで順調だった。
『そこで何をしているのですか』
「っ
……
!?」
だが突然彼らに掛かる、電子的な音声。
聞こえた先へ目をやると、一つの監視カメラがこちらをジッと見つめていた。
(しまった、見られた
―――
)
監視カメラが向いているということは、その先にいる者、この声の主に姿を見られたということだ。レッドは最悪変装しているので誤魔化せるかもしれないが、今擬態を解いているブルーはこのビルにとって完全に侵入者だ。
監視カメラの類はあるものと思いこれまで注意して潜り抜けてきたが、緊急事態として突発的に使用したこのルートのそれにかかってしまった。
「逃げるぞ、弟! 走れ!」
「分かった、兄貴!」
最早ステルスは崩壊した。レッドは動きやすいように研究員の服を脱ぎ捨て顔の変装マスクも破き、ビービーと警報音が鳴る廊下をブルーと共に全速力で走り出した。
どういう訳だか廊下が様々なトラップ・仕掛けのある床や壁に変貌し始めたが、普段からスクールで鬼畜アスレチックを攻略している彼らにとっては造作もないものだった。途中でブルーに直撃しそうだった巨大ハンマーをレッドが体で受けて防ぐ事態はあったが、それ以外は特にダメージを受けることなく突破する。
最終的には柵の無い窓を見付けるとそれを割り、ビル三階の外へ飛び出して脱出した。寸前で蜘蛛の巣を張って落下ダメージを軽減すると、またひたすら街の方まで走る。追っ手は特に無かったので、ここまでくればもう大丈夫だろう。
「あーっ、焦ったー!!」
「ったく、詰めが甘いんだよお前は」
「何だよ。さっきはよくやったって言ってくれてたのに」
息を切らしながら軽く小競り合いする二人だったが、任務は達成したのですまないスクールへと帰還する。だがその途中で、レッドはある違和感に気付く。
「げっ
……
!! 薬
……
割れてやがる」
懐に入れていた試験管にヒビが入っており、そこから僅かに漏れ出した液体がレッドの体を濡らしていたのだ。
どんな効果があるものか分からない薬だ。咄嗟に体から離したが、皮膚が溶ける、または火傷をする等と言った異常は無いようだ。
「何やってんだよ兄貴!!」
「いや、これはお前をかばった時に割れたに違いねえ」
「そ、それは
……
いや、落下の時かもしれねーだろ」
「まあどうでもいいっ、全部零れちまう前に戻るぞ!!」
「お、おう
……
っ」
バタバタバタと再び走る兄弟だった。
♢
「なんっだ、こりゃあ
……
ッ!!!」
翌日。
任務の疲れでぐっすり眠っていたミスターブルーは、ミスターレッドのベッドの方から聞こえた叫び声によって目が覚めた。
「うーん
……
何だよ兄貴。何か声高くね
……
?」
「弟! 俺の体、どうなってる!?」
「はあ
……
?」
寝惚け目を声の元に向けたブルー。そこには兄のものと思われる赤い髪の人物がまず目に入ったが、妙な違和感。
普段は肩に掛かるか掛からないか程度の髪がデコルテの辺りまで伸び、いつも気怠そうに半分程閉じられたつり目がやや大きくなって睫毛を一層伸ばしている。元より華奢なタイプだがさらに小さくなった肩回り、それとは逆に若干膨らんでいる胸元。
単刀直入に言えば、女の子の体になっている。
「
……
兄貴の彼女さんですか?」
「んなワケねーだろ、俺だっバカ!!」
だがやはり、それが自分の兄である、とは結びつかなかったようで。
どちらも全くもって考えにくいが、それでもレッドの連れ込んだ女性であると思う方がまだ現実みがあると思ったブルーは、とぼけるというよりはまだ正解と思った方で質問してしまった。
しかし、結局その女の子はレッド本人らしい。枕を顔に投げ付けられ、「寝惚けてんじゃねえ」と怒鳴られ、ブルーは一先ず彼女の言う事を信じるしかなかった。
「なっ、なんで女の子になっちゃったんだよ兄貴!?
……
いや、姉貴
……
?」
「呼び方とかどうでもいいだろ。どう考えたって昨日の薬のせいだろうが
……
まさか性別を変えるものだったなんてな」
ブルーの取り乱し方が尋常でなかったので、それを受けて逆に冷静になってきたレッド。昨日自身に起こったイレギュラーな出来事と言えば、試験管が割れたことによる薬の付着以外にない。丁度怪しいものといったら、それしかないことだし。
原因をほぼ特定出来ると少し落ち着いてきた。元に戻る方法ならどうせ時間経過か、それが無理ならミスターブラック辺りに解毒薬を作ってもらえばいい。そんな楽観的な思考にもなってきたレッドはふと、とんでもない悪だくみが思い付いてしまった。
「
……
そうだ。この体ですまない先生を誘惑して、手を出させでもしたら
……
先生の弱みを握ったことになるんじゃないか?」
「
………
は?」
レッドの衝撃的な発言に、ブルーは一瞬思考が停止した。
彼の発言はつまり、昨日給食の時間に呟いていたすまない先生への仕返しについてのことだ。女の子の体になったことでこれまでにない“誘惑”という作戦が使えるようになった。教師であるすまないに手を出させることが出来たら、彼にとってそれは教師生命にも社会的立場にも関わる重大な不祥事となる。流石にそれを公にして陥れることを目的としてはいないだろうが、今後自分が彼より優位な立場になるよう脅しの材料にしてやろうという魂胆である。
いやいや流石に冗談とはいえ悪質すぎるだろ、と思ったが、目先のレッドはまるでこれ以上ない名案とばかりにニンマリ悪い笑みを浮かべている。その姿はまるで、漫画等に登場する分かりやすい悪女のようだった。
(絶対こんな子に惚れちゃダメだな
……
)
ブルーはどんよりと、今後女の子を見る目は気を付けようなどと考えた。まあこの悪女、中身は実の兄なのだが。
しかし早くも自信がなくなってしまう。その理由は。
(なのに
……
くそっ。兄貴のやつ
……
めっちゃカワイイッ
……
!!!)
そんな女の子になったレッドの見た目が、自分の好みドストライクだったためだ。
兄だと分かっていても、性格が悪いと分かっていても、理想の見た目をした女の子を前に心臓がバクンバクンと暴れていて今にも飛び出してしまいそうだった。
自分のタイプなどこれまで考えたことなどなかったが、まさかこんな悪女タイプが好きだとは思わなかった。
そんな弟の異変に気付くことなく、レッドは「じゃ、今日から作戦実行だな」と寝巻から服を着替えようと豪快に裾をたくし上げる。
「ちょっっっ、ちょーーーっと待って!!!!!」
ブルーはギャアッと悲鳴を上げ、真っ赤な顔で部屋を猛スピードで出て行った。
女の武器で無双しようと企む話
つづく
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