sousakuyamamusume
2025-03-14 20:15:55
2046文字
Public 一次創作
 

彼岸警邏隊


怪異殺し

「『怪異を殺す怪異』だぁ?」
「そう。確証はないのだけれど、明らかに人間が不可能な力で殺されてるのよ。二人には現場に行って貰うわ。いいわね?」
 実質、命令である。
 ツルギさん、そういうところあるからなぁ……。まぁ嫌ならやめれば良いのをやめないでいる俺らも俺らだけど。
「了解。ほらさっさといくぞ、スギナくん。」
「その呼び方はやめろ、鳥肌立つから。……じゃあ、いってきます。」

「ここが現場か。こりゃド派手なもんだな……。」
 スギナも流石に『うへぇ』って顔してやがる。ま、表情に出るうちは新人ルーキーだな。そんな余計なことを考えつつ、改めて現場を見る。
「武器の類は……ナイフ一つ。これでこの惨状は流石に無理だろ。偽装工作か、それとも」
「哀れな犠牲者の抵抗か?」
「一応、被害者は人間社会に紛れ込んでいたらしいからな。その可能性もある。で、旦那。」
 スギナが俺を一切見ることなく俺を呼ぶ。最も、俺もスギナのことを見ちゃいない。
「行くか?」
「行くしかねぇだろ。」
 目線の先には、点々とつながる血痕。

 血痕を辿った先には、腹を抉られた日本人形がいた。痛々しい、と感じるのは、なまじ人の形をしているからだろう。人間なんてそんなもんだ。
「死んでるか?」
「それがまだ息がある。」
 先ほどからずっと、この人形に見られているのを感じていた。正確には、現場に入った時点で感じていた視線の正体がこいつだと気付いた、だが。
「なら、犯人を見た可能性があるな。つっても、この状態で話きけるかっていやぁ……スギナ?」
 人形の頭に自分の左手を載せ、目を閉じる。右手は胸ポケットの中、お札の位置を確認する。通信機を頭にセット、周波数は旦那と繋いだまま。
「旦那は先行っててくれ。」
「お前何を……
「怪異を理解するのに怪異になる必要はないだろ?通信機、手放さないでくれよ。」 
 自分の意識の輪郭を手放さないように、そっとリボルバーの位置を思い浮かべた。

『聞こえるか、旦那。』
「聞こえてる。無茶すんなよ、お前を撃ちたくはない。」
『わかってる。』
 喋れないなら直に聞く、とばかりのスギナには驚かされた。そういやこいつの霊能は通信方面に優れてるんだった。つっても……大分無茶な気はするが……
『ホシの外見は狼のような牙にミキサーのような手、それと、えっと、』
「スギナ?」
『あ、ああ……続けよう。この子、お腹を抉られたときに「お前も違う」って言われたらしい。』
 お前も違う。
「つまり奴さんは無差別にやってるわけじゃない、と。」
『そういうこった。んで、普通に歩いてきたらしいんでワープしたのも違う。』

 段々と意識の輪郭がぼやける。その度に、通信の向こう側にいる旦那の声に引き戻される。痛みで脂汗が滲む。その中から、なんとか言葉を拾う。
「こども?……そうだ、子どもをさがしてるんだ……それで、あいつ、おなかをまぜっかえしてきて……
『馬鹿!撤退しろ!それ以上はお前が』
「まだ、やれる……!」
 あと少しだけ、せめて奴の、名前を
……ッ!!」
 札を貼った、反動で吹き飛ばされる
『スギナ、おい、応答しろ!スギナ!』
「奴の名前は!『子盗り』だ!!っ、つぁ」
 急に輪郭が戻った、から、か?いや、さっきまざった分もある、か……傷のない腹と、頭と……いや、全身が痛い
『ことりぃ!?』
「子どもを、盗むと書いて、子盗り!腹ァ暴かれないように気をつけろ!」

「ッチ……無茶しやがってよぉ……。」
 通信機越しに悶える声が聞こえる。心配だが、今は目の前のこいつだ。
「マジで腹ばっかり狙ってきやがるな、子盗り野郎!」
 名前を呼ぶと一瞬怯む。ああ、スギナが欲張った甲斐はあったらしい!
「捕まえ、た!観念しろ、『腹暴きの子盗り』!」
 土手っ腹に一発、どたまに一発、専用弾をぶち込んだ。それでようやく観念したのか、おとなしく収容箱に入る大きさになった。やれやれ……
……回収完了。じゃ、もう一つ回収しにいくかね。」

「よ、生きてるか?」
……ああ、ここが地獄じゃねぇならな……。」
 箱を担いだ旦那の声が上から降ってきた。ってなると、俺ここでひっくり返ってたのか……
「ったく、無茶しやがってよぉ……。」
「でも、役に立ったろ?」
「帰ったら始末書書けよ。許可もらってねぇ『接続』には変わりねぇんだから。」
「わーってるよ……で、あの子はどうなるんだ?」
 あの子、なんて口に出してみて、思ったより肩入れしてたのに気付く。マズいな、いくらなんでも潜りすぎたか?
……事切れてるよ、お前が札貼った直後ぐらいにな。」
……そうか。」
 最後の最期まで、話をし続けてくれたのか。
「供養ぐらいはしてやれ、お前が拾った縁だからな。」
「当然、そうさせてもらうさ。」

「だからとりあえず俺のこと担いで帰ってくれ。動けん。」
「しまらねぇやつ……。」