三毛田
2025-03-13 22:12:36
1073文字
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30 10. 花言葉を束にして

30日目

「あら。丹恒」
「何ですか」
「ふふ。随分とおしゃれね」
「穹です」
「分かっているわ。あの子も、粋なことをするわね」
 俺の髪には、穹の瞳と同じ色の薔薇が五つまとめられた髪飾りがつけられている。
『本当は、赤にしたかったんだ。でも、今はこれでいい』
 と、優しい手つきで俺の髪に触れながら。
 少しだけドキッとしたのは、他の人には秘密。
「丹恒。アーカイブの整理ついでに、調べてみたらどうかしら」
「何をですか」
「意味」
 姫子さんの指が、薔薇の髪飾りを軽くつつき。
「あらかじめ知っておかないと、穹から赤いものを送られた時に、慌てるのはあんたよ」
「はあ」
 どうして俺が慌てるのだろうか。その言葉を飲み込んだら、こんな声が出てしまい。
 だけど、姫子さんは気分を害した様子もなく、ニコニコと俺を見ているだけ。
「それより、調べ物はいいんですか?」
「ええ。てっきりここに運んであんたに登録してもらったと思っていたけど、気の所為だったみたい。もう少し、部屋を探してみるわ」
「わかりました」
「集中するのも、ほどほどにね。そろそろおやつの時間だって、三月ちゃんが騒ぎ出す頃よ」
「そうですね」
 俺が同意すると、苦笑してから資料室を出ていく。
「車掌さ〜ん! 今日のおやつはな〜に〜?」
 姫子さんが出ていってからしばらくすると、案の定三月が大きな声を出しながらラウンジへと向かっている気配。
「パム~! お腹空いた~!」
「二人とも、静かにせい!」
 穹の声も響き、何だかんだで一番パムの声が大きい。賑やかだ。でも、嫌いじゃない。
 彼が列車に乗ってから、色々なことがあった。
 一番大きなことは、多分、俺の中の意識が変わったことだろう。
 前は、パムや三月に誘われてもおやつの時間にラウンジへ向かうことはめったになかった。
 でも、今は。
 アーカイブ端末の編集モードを終了し、資料室を出る。
「あ、丹恒!」
 嬉しそうにこちらへ駆け寄ってくる球の額を、軽く弾き。それから微笑みかけ。
「静かに。それと、走り回るな」
「はーい。ねえ、隣に来てよ」
 手を引かれたので、素直に彼の隣に腰かけ。
 提供されたデザートに、舌鼓を打つ。
 彼らと過ごすこの時間を、楽しみにしている。
 そう自覚してから数日。
「丹恒、受け取ってくれ」
 ラウンジに居たら、穹が真っ赤な薔薇の花束を差し出して。
 本数は、すぐに数えられない。
「これは」
「俺の気持ち。物知りな丹恒なら、意味わかるだろ?」
 そう言われ、じわじわと頬に熱が集まっていった。