【カグ東】厭わしきマイダーリン

本誌連載で答え合わせが来る前にカグラ姉様の東雲さん飼い殺しルート書かなければ無礼であろう。捏造過多。ノリと勢いでどうぞ。

短く弾む息遣いに宿る仄暗い湿った熱。恍惚の表情を浮かべなぞる指先の行方を眺める嗜虐的な瞳。
「ほらァ♡ めっちゃ硬くてバキッバキだろ?」
隆起した山脈と深い谷底を無理矢理行き来させる──、己が手より幾分か女性らしい戦慄き力みっぱなしの東雲の手が火照る肌を触る感触に興奮でカグラの頬が一層赤らんだ。
「生まれながらにして恵まれた身体的能力の高さ。それに胡坐を掻かず日々研鑽を重ねた私の身体を好きに触れるのは後にも先にもお前さんだけの特別♡」
腰の入っていない軟な拳を打ってきた相手の拳を容易く破壊する強靭な肉体。その鍛え抜かれた腹筋の割れ目を東雲の意思に関係なく彼女の両手首を難なく片手で掴んだカグラは自分自身の腹を嬉々として弄らせていた。
「離せやゴラァッ!!」
純粋な力比べではどう足掻いてもカグラに軍配が上がってしまい、強制的に広げられた手のひらをせめてもの抵抗で閉じたくても手首を掴まれ腹筋に押し付けられる力と手のひらに押し付けてくる腹筋の板挟みに遭い東雲の手は閉じれずにいる。
例え東雲が爪を立てたところでカグラにとって子猫に引っ掛かれたが如し。如何にか指で摘まみ捩じり上げる作戦はとっくに腹立たしいくらい鍛えられた肉体の丈夫さによって阻止され済みだ。
反っている腰を引き寄せ体格差に物を言わせ胡坐の中に東雲を収め向かい合うカグラの身体が興奮で益々筋肉が盛り上がる。
動きやすさ重視の腹部と肩から先、太腿の一部を大胆に曝け出している独特な戦闘服は、カグラの戦闘スタイルに合わせて作られた特注品。拳から腕へ、足裏から脹脛まで伸びる布に書かれた文字ごと相手に直接叩き込む事で悪霊を滅する近接特化型の格好をそっくりそのまま東雲の身をも包み込んでいた。
「私とお揃いな薫ちゃん♡」
籠る熱を逃がすための機能美で設けられた胸の谷間を穿つ穴をうっそり睥睨するカグラの眼差しに東雲の額に血管がビキビキ浮かび上がる。目は口程に物を言う。不快と憤りに身を焦がした東雲が両手首の枷を力尽くで外し、堪りに堪った感情を拳に乗せ振り抜いた。

「止まれ」

──筈だった。
カグラの無感情な一声に東雲の拳が表情を削ぎ落したカグラの鼻先スレスレで止まった。
「また、これか、よォッ!!」
歯を食いしばり止まってしまった拳を強引に動かそうにも身体ぴったりフィットした窮屈な箱に詰められたかのように身動きが取れない。
東雲の歯がゆさもどかしさに染まる顔をしげしげ眺め、東雲の四肢に捲かれた布に書かれている夥しい緊縛文字たちが淡い光を放ち彼女の動きを抑制している様子にカグラは軽く握った手で口元を隠し一人頷いた。
「よしよし。完全には抑えきれていないが上出来上出来」
未だに身体の主導権を取り戻すべく躍起になって蝸牛も欠伸をする程、緩慢な動きで前進し続けている東雲の拳を人差し指でついっとズラしたカグラの視線が力を込めている彼女の下腹部に落とされる。
割れていない腹筋。良くて縦筋が薄っすら見えれば御の字の柔く細い腹を無骨な手で無遠慮に撫でまわす。
「不思議だねェ。こんな身体でよく私と張り合えたもんだ」
「勝手に、触って、んじゃ、ねェッ!!」
「何言ってるんだい? お前さんはとっくに私の所有物。自分の所有物にわざわざお伺いたてる奴が何処にいる」
抑揚のない有無を言わせないカグラの物言いは聞いた者を委縮させる力を持っているが、真正面から見据える東雲は一切怯む事無く剣呑とした目でねめつけ鉛並みに重い体をほんの僅かであろうともムキに動かし続けた。
一瞬でも隙を見せれば喉元を掻っ切る獰猛な獣に酷似する東雲の匂いを肺一杯に吸い込み、興奮冷めやらぬ満ち足りたため息をわざと東雲の耳元で吐いた。
カグラの籠った吐息に首を竦めようとするも身体の自由が利かず動かせない東雲にカグラの目がいやらしく三日月を描き、簡単に折れてしまいそうな彼女の浮かび上がった首の筋を太い指先で摩る。
「クヒヒ安心しな。薫ちゃんは生かさず殺さず、死ぬまでずーっと可愛がってあげる♡ それじゃ早速デートと洒落込もうじゃないかい。ほら来い東雲薫」
甘ったるい声が一変、命令口調で言い放つカグラに身体が勝手に従い立ってしまう東雲の心が怒りで掻き毟られる。
科学的根拠もよく分からない力で雁字搦めにされ、自分の意思を踏みにじり強制的に従ってしまう自分の肉体の不甲斐なさに東雲が雄叫びを上げる寸前、無情にもカグラの「声を出すな」という命令によって東雲は奥歯が削れるまで強く歯を食いしばり、振り返りもしないカグラの大きな背を屈辱極まりない面貌で後を追う。
肩越しに眺めれば自分の後を付いてくる東雲の姿にカグラが「あー♡」と、熱の孕んだ満足気な吐息を漏らした。反抗期の雛鳥を引き連れ歩く名状し難い優越感。否応なしに従ってしまう身体に対して、自分の思い通りにならない不自由さに癇癪を起こしたくても出来ない惨めで憐れな東雲に嗜虐心が募る。
つと踵を返したカグラが東雲の前に立ちふさがり彼女の両手を掴み互い違いになる形で指を絡めた。所謂恋人繋ぎだが二人にとってその意味合いは無いに等しい。
「思う存分抵抗すればいい。出来ればの話だけど♡」
限界まで瞠った東雲の目から滲む攻撃的な色。身体の自由を奪っている緊縛文字の書かれた布が東雲の激情に呼応して激しく明滅を繰り返す。いつ何時、力任せで鎖を引き千切らんとも分からない東雲を見てもカグラの余裕は崩れない。
「嗚呼、本当に最高だァ♡ こんな状態でも本気で私に勝てるって思ってる薫ちゃん♡ ムラムラが止まんないねェ♡」
大きさの違う指から伝わる爆発寸前の震えを愛で摩り無力さに嘆く他ない東雲の首に直接刻み込まれた”印”をカグラの肉厚な舌がゆっくりゆっくり味わうように舐る。
「しかし、あの時は驚いたねェ。恐怖を全く感じずに霊と対話をするだけじゃなく段階まで変えられるのかい。妹その壱はさておきスズまで私たちに嘘の報告するとは追々躾の内容を考えないとな」
東雲が喉奥で唸る振動を舌の腹で感じ取りつつ、一筆書きで書かれた禍々しい”印”に帯び始めた熱を舌先でなぞった。
「う゛~っ!! う゛う゛~~~っっっ!!」
「この”印”を早々に刻めたのは僥倖だった。制御不能の力ほど厄介なものは無い」
「ん゛う゛~~っ!!」
「そう興奮しなさんな。私が上に直接掛け合ったからこそ薫ちゃんや妹その壱、──悪霊達の温床になってるマンションが無事なのを努々忘れたとは言わせないぜ? 私がお前さんの言霊の力を有効活用する、お釣りが来ちゃうくらい破格の取引。本来であれば四肢切断の上、頭をちょちょいっと弄られていたがこの通り。頭も弄られていないし五体満足だ」
東雲の首に刻まれた言霊の力を制御する”印”をあんぐり開けた口でカグラが噛みつき柔く歯を立てじゅるじゅる啜る。
「薫ちゃんなら首だけになっても襲い掛かってくれそうだけど、それじゃあ張り合いが無い。私はもっと薫ちゃんとド突き愛を愛したい♡」
ちゅっちゅと音を立て肌を吸い満足したカグラが顔を上げ、複雑な面持ちで唸り声すら上げなくなった東雲と目と目を合わせた。
「あくまで自分じゃなく妹その壱とマンションに住んでいる悪霊達を案じるのかい」
………
「まあいいさ。今日の仕事は、以前お前さん達が見つけた廃れた鳥居に巣食う伍段怪の無力化だ。そぉら馬車馬の如く働け働け♡」
東雲の指に絡め合っていた指を解いたカグラは、苦々しい現状を飲み込むしかない遣る瀬無さで目を伏せる東雲を軽々抱え上機嫌に歩き出したのだった。