ortensia
2025-03-10 02:10:13
6178文字
Public ウルトラ
 

二つの鎧(支部上げ済)

テクターギアゼロさんと同じくテクターギアを付けたベリアルさんの話…レイブラッド因子が弱くてあんまり幽閉されてないベリアルさんがテクターギアを付けられている…ふわっと読んでくださ…

 レオの奴が、一時的にK76星を離れるらしい。アストラも一緒だ。
 ヘッ、煩くて面倒な奴らがいなくなって、清々する。ゆっくり羽を伸ばせるってもんだぜ。
「サボろうったってそうはいかないからな、ゼロ。」
「な、なんだよ!?別に今だって、更生だ修行だって勝手に言ってんのは、テメエらの方だろう!」
「お前な、」
「ゼロ、僕たちは、光の国の生まれじゃないんだよ。」
 それに何かを返そうとしたレオを、アストラが遮ってオレに言った。
「えっ?……そうなのか?」
 突然何を、と思ったのはレオも同様だったようだが、驚きの話題に、意識がついそちらを向いてしまう。
「そう。そしてそのことを知っている光の国のひとたちは、そのことで僕らに気を遣ったり、逆に、それを知らなかったゼロみたいに、まるでそんなことないように接してくる。」
 何を言いたいのか分からなかったが、それでもアストラは続ける。
「そして僕らは、そのどちらも望んでいない。」
「それって、光の国に、認められなくてもいい……ってことか?」
 疑問を口にすると、アストラは途端に空気を和らげながら首を横に振る。肩に、テクターギア越しにレオが手を添えてくる。
「俺たちは、自分の生まれた星に、誇りを持っているんだ。だから、変に気を遣われたくないし、俺たちが別の星の生まれであることも、忘れてほしくない。」
「勝手だよねえ。」
 ふたりは笑った。その雰囲気に、反抗的な意識が、すっかり萎える。
「それで、僕らがいない間、君を預ける相手は、そんな僕らの勝手な我儘の通り、そのままの僕らを受け入れてくれたひとなんだ。」
「弱さを叱責してジープで追いかけてくることもなかったしなぁ……。」
 レオの言ったことはよくわからなかったが、どちらにせよ、ゆっくりすることは叶わないらしい。
「なんだよ。ここにまた他に誰か来んのかよ?」
「いや、ここには来ない。」
「そりゃあ、あのひとの方があの場から動けないでしょう。」
 その口振りからすると。
「オレ、この星から出られるのか!?」
「俺たちがいない間、な。」
 それでもやはり、出られるというのは本当らしい。
「ついでにこの鎧も外して……
「それは駄目だ。」
 チッ。
 そうして連れて来られた場所。
「って、怪獣墓場じゃねえか!?」
「そうだが?」
「ひょっとして、小さい頃遠足で来た?」
 戦いとは無縁の空間と名高い場所。
「こんなとこで修行だかなんだかで暴れたら、それこそ……、」
 プラズマスパークに触れるどころの罪ではない。
 何故、こんなところに。
「怪獣墓場は、遠足で来るような場所だけじゃなくて、もっと色々な場所があるんだよ。」
 そう言って背を押すアストラと、レオに続く。
 そして辿り着いたのは、燃え盛る炎の地。
「よし。俺たちはこんなところでいいだろう。」
「そうだね。ということで、ゼロ、道案内はここまでだよ。」
「また迎えに来るから、それまで修行を怠らぬように。」
 話が進められてしまうが、ここが目的地らしい。この、消えそうもない炎ばかりの地が……
「では行ってこい。」
 そう疑問に思っていると、いつもの調子でレオに思い切り蹴飛ばされた。
「うおーっ!?」
 空中から炎の中へ真っ逆さま。
 かと思いきや。
「チッ。オイ小僧、何してんだテメエは?」
 急降下していた体を、低い声にしっかりと掴まれ、火のない場所へと誘導される。しかし地上が近付くと、乱暴に放り落とされる。
「まさか迷子か?」
「迷子じゃねえ!」
「そうか?……そういや前にいたな、迷子。本当の戦いはここからだのなんだの言う、」
「くそ。なんだってんだ。アンタといい、レオのヤツといい……!?」
「レオ……?」
 頭を軽く振りながら起き上がり、抉った地面の欠片を体から振り落とすと、一応助けてくれた相手に向き直る。
「アンタ……!?」
 そこにあった姿は、自分のようにテクターギアを付けたものだった。
「獅子座の双子同様、オマエも問題児のクチか。」
 相手はこちらのぼやきを聞き取ってそう言った。
 しかし。
「んだよ!?テメエだってその鎧、力を封じられてるんだろ!?」
 つまり、罪人の証だ。
「そうだ。……で、だからどうした?」
「え?」
 自分よりもだいぶ古そうな鎧を着た相手は、肩を竦めた。
「テメエがなんの咎でそれを着けられたかも、なんの目的でここへ来たかも、俺様は興味無え。」
……なら、オレが何者かも、興味無いってか?」
「無い。」
 きっぱりと言い放ち、さっさとその場から立ち去ろうと、軽く首回りを回す仕草をした後、背を向けた。
 オレはアストラの言葉を思い出していた。そのままを、受け入れる……
「お、おい待てよ!」
……なんだ」
 かったるそうに、それでも振り返る傷だらけの鎧。
……さっきは助かった。……それだけだ!」
 相手はゆっくり向き直って、言葉を添えるように言った。
「オマエ、ウルトラ族なんだろうけどな、それでもあの炎は死ぬからな。」
 それだけ言うと、本当にもう行ってしまおうとしていた。
 その背を追いかけて、先回りする。
 驚いたようだが、相手はゆっくり問うてくる。
「なあ、アンタ!」
……どうした?」
「オレと手合わせしくれ!」
「はァ?」
 しかし。
「ヤダね。」
 片手で肩を掴まれたと思ったら、そのまま投げ飛ばされた。
「クッソ!」
 しかし伊達にK76で戦わされてない。直ぐさま起き上がって立て直し、逆に助走を利用して突っ込んで行く。
「めんどくせエなッ!」
 相手はやる気になったかと思いきや、片腕を伸ばして。
「来い、ギガバトルナイザー!」
「なんだ!?」
 宙空から棍棒が飛来し、自由自在に飛び回って攻撃を繰り出される。それに翻弄されて勢いを付けれずにいると、その間にその漆黒の武器は、奴の手に収まった。
「きたねえぞ、武器なんて!」
「たりめえだ。」
 相手は冷静に告げた。
「俺様はオマエの師匠じゃねえんだ。優しく手解きなんぞしてやる義理はねえ。それでもやり合おうってんなら、そいつは」
 ただの敵同士だろ。
 そして相手はまた棍棒を振り被ったかと思えば、それは単純な武器の攻撃などではなかった。
 バトルナイザー!モンスロード!
「遊び相手だ、シーボーズ。」
「なに!?」
 相手との距離を遮るように、怪獣が現れた。
 咆哮を上げる怪獣が、こちらに向かって来る。
 怪獣を呼び出した相手は、悠長に岩場に腰かけて、我関せずといった様子だ。
 勢い良く全身の重さを乗せて突っ込む怪獣を往なすが、また直ぐに飛びかかってくる。その勢いを逆に利用して投げ飛ばすと、怪獣はごろごろと砂埃を上げながら地面を転がっていった。しかしやはり直ぐに飛び起き、次は寧ろジャンプしながらのしかかろうとしてくる。さすがに同様に投げ飛ばすことは叶わず、そのまま地面に弾き倒す。
 すると今度は今までとは打って変わって、やる気なさそうにゆっくりと起き上がると、何が気に入らなかったのか、不貞腐れたようにこちらに背を向けて、石を蹴飛ばしている。
 何がなんだか分からないが、勝機かと思って後ろから殴りかかると、痛そうに頭を抱えてその場でうずくまってしまった。
 なんなんだコイツ。なんだか悪いことをしている気分になる。
 しゃがんだままチラチラとこちらを見てくる怪獣の意思が分からない。というか、今まで怪獣の「意思」なんて考えたことがなかった。
 再び立ち上がった怪獣が、またも飛びかかってくる。オレはそれを、出来るだけ優しく放り投げた。
 すると起き上がった怪獣は、はしゃぐように手を叩いて、喜んでいるように見えた。
 そして、今はのんびりと岩場に座っている鎧の相手の言葉を思い出す。
「遊び相手……
 そうか、この怪獣、本当にオレと遊んでいるつもりだったのか。
 さっきまでじゃれていたらしい怪獣が、もうこちらに見向きもせずに、のしのしと鎧に向かっていく。
「なんだ。もういいのか?」
 いっぱい遊べたかよ、言って鎧があやすように怪獣を撫でると、もじもじといじらしくする。
 そしてどこからともなくロケットを取り出すと、鎧に差し出す。
「なんだオマエ、また壊しちまったのか」
 首の後ろを乱暴に掻く仕草をすると、また棍棒を振り翳して、怪獣を呼び出した。
「おい、クレージーゴン、なんか素材持ってねえか。」
 新たに呼び出された怪獣は、自身のシャッターを開けて、ばらばらと金属片を明け渡す。
 そこから材料を選別して、ロケットを修理している、器用な鎧を見る。
 こっちはヘトヘトだってのに、それを無視して良い気なもんだと思ったが、その光景に、何故だかこちらも悪い気はしなかった。
「オラ終わったぞ。……別に、壊れちまうことは悪いことじゃねえ、どんなものでもそうなる。だからまた持って来れば良い。」
 どうやら修理が終わったらしい。鎧がロケットを渡して、怪獣を撫でた。
 怪獣達は、また元に戻って行ったようだった。
 このひとは、怪獣だとかウルトラマンだとか、気にしていないように見えた。
 そしてこちらを再び振り返ったと思えば。
「ンだオマエ、まだいたのか。さっさと獅子兄弟の、テメエの師匠の稽古に戻れよ。」
「今はムリだ!だからアンタに相手になってくれっつったんだ!」
「ア?」
「それに!……あんなヤツら、師匠なんかじゃねえ!」
「はァ?」
 鎧は殊更面倒臭そうに大きく舌を打って、腕を組んで言った。
「オマエ、俺様が同じようにテクターギアを着けてるからって同調すんじゃねえよ。確かに俺様は罪人で、称号を持つような近寄りがたい地位も何も無いけどな、弟子もゴメンだぞ。オマエなんか三分の一人前だしな。」
「ハァッ!?さ……三分の一人前だとォ!?」
 光の国では元々高い実力だと評価されていたし、そりゃ、名誉ある称号のウルトラ兄弟には敵わなかったが、レオやアストラと戦わされて以前よりもっと力が付いた自覚も不本意ながらある。それなのに。
「テメエ、怪獣に戦わせておいて、自分が戦ったわけでもねえのに、オレのなにが分かるってンだ!?オレが何者か興味が無えって言ったクセによォ!?」
「プラズマスパークコア。」
 鎧が静かに放った言葉が、何故か自分が怒鳴り散らした声よりも、耳に響いた。
「もしオマエがプラズマスパークのコアだとしたら、目の前にいるオマエに、俺様は手を出さねえ。」
 その言葉で、自分が本当に相手にされていないことを思い知った。自分が求めた力である、プラズマスパークコア、自分はそれを求めた。そしておそらく、このひとも。
「オマエみたいに誰かに認めて貰いたいだけでギラギラ光ってるヤツなんて迷惑なだけだ。全く興味無え。」
 けれど自分が求めたものと、このひとが求めたものは違った。
「アンタは、誰にも認められなくて良いってのか!」
「いや?」
 余裕で往なされて、わけがわからない。相手のことが分からない。
「だが、認められないと成せないことがあっただけだ。」
 じっと相手を見詰める。
「アンタは、何が、したかったんだ……?」
「それも今となってはどうでも良い。」
「んだよ!」
 教えろよ!
「どうせ俺はここから動けねえ。」
……いつか自由になるかもしれねえじゃん!」
 言い募ったが、相手は軽く肩を竦めるだけだった。
 しかも、やきもきするこちらを見たと思ったら、妙なことを言い出す。
「もしこっから出られてこの邪魔な鎧も無くせたら、腹いせに光の国でもぶっ壊すかな。」
「な……!」
 まさか、そんなことを言い出すとは思わなかった。オレは、力を経て、力を示せば光の国に認められると。力を示すって、どうやれば良いんだ。
「ガキは付いて来んなよ。」
「誰が!テメエなんかに!」
 反射で答えてしまった。相手はこちらを笑い飛ばすように鼻を鳴らした。でもそうか、もう答えちまったが、このひとと一緒に。いやでも、同調するなとは言われた、けれど。
「そしたらオマエは、光の国を襲いに来た俺を、光の国から守れば良い。」
「えっ。」
 力を示すには。
「俺が勝ってもオマエが勝っても、プラズマスパークの力が手に入れば、その力を示すことが出来るな。」
 相手はそんなことをのんびりと言った。
 そこで理解させれた、このひとの目的は、確かに自分とは違う。
 このひとは、光の国を守りたいんだ。
……なあアンタ、冗談だよな?そんなこと、本当にはしないだろ?なあ?」
 すると相手は大声で笑い出した。
「俺はここから出られねえっつってんだろ。それに、もし本当に自由になったら、こんな国見限って、この広い宇宙のどっかに、さっさとオサラバしてやるよ。じっとしてんのも、どうにもタイクツだろ。」
 相手は素っ気なく言った。言っただけなのに、目の前のひとが、一気に自分の手の届かないところに行ってしまった感覚になった。別に親しくもなってないのに。
「オマエもタイクツなら、コイツとも遊んでやれ。」
 また棍棒を振り翳した。
「ゴモラはさっきのようには行かない、骨が折れるぜ。」
「な、オレまだヘトヘトだぞ!?」
「何言ってやがる、散々休憩したろ。」
 そして聞いた通りゴモラは元気良く交戦的な雄叫びを上げ、こっちへ向かって来た。
 それに取っ組み合ってみると、確かに戦い慣れている感じがする。
「やってやらぁーっ!」
 それからオレは、怪獣を取っ替え引っ替えさせられながら、ボロボロになるまで相手をさせられた。怪獣を呼び出した本人は見てただけだってのに。
 そして気付いたら、またK76星にいた。
「やあ、ゼロ。良く寝ていたね。」
 寝かされていたところを起き上がって周りを見ると、アストラに声を掛けられた。レオもいる。
「オレは確かバオーンの相手をしていたはず……二人とも、もう戻って来てたのか?」
「それどころか君、僕らが迎えに行っても、ここまで連れ帰って来ても、ぐっすりだったねえ。」
「いくら催眠怪獣と戦ったからと言え、ここまでずっと眠っているとは、きちんと修行していたようだな。」
「修行……って言うか……?」
 嫌味っぽいアストラと、肯定的に頷くレオ。しかし怪獣墓場での出来事が、なんだかあっと言う間だったように感じる。
「ちょっと……楽しかった、かも。寂しくなかったっつーか。」
 レオとアストラは顔を見合わせて、笑った。
「寂しくならないことを、僕らも望んでいるんだよ。」
 光の国に、寂しさが訪れないように、守りたいと思った。
「だが、楽しい修行はもう無いぞ!」
「わぁーったよ!」
 それから暫くして。
「おいオマエ、かわいいなぁ。オマエみたいな怪獣もいるんだな!にしても、一人か?それじゃ寂しいだろ。オレがついてるからな!そうだ、何か名前で呼ばせてくれよ。モロボシくん!どうだ、良いだろ?」
 今となっては、あのひとの名前を呼ぶことがなくて寂しい思いをしているのは、こっちだった。ちょっとだけ、ちょっとだけだけどな。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。