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伊坂
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スイートインシデント!(アイマヴェ)
#M右ワンドロワンライ様より お題「サングラス」で書きました。彼サングラスになるマヴの話。あまりにラブ度が低かったんで、終わりのほう加筆しています(笑)
かけてすぐに気が付いた。アイスの奴。当然向こうだって気づいた頃だ。あいつ。おい、これ。う~ん。どうしたもんか。
果たしてどっちのミスだったかということを考え始めたのは、照れ臭いような、苛立つような、どうってことない高揚が喉元のあたりに生じたからだった。むずむずするような。考えたって詮無いことであるとはわかっている。それでも歩きながら目じりが下がってしまうのを、口角が上がってしまうのを、首を捻ってしまうのを止めるために何かを考えなければならなかった。
アイスのせいだぞ。そうだ、これはアイスのせいだ。
大将閣下のお呼びとあらば、まあ、忙しくても顔を出さねければならないし、元をただせば始末書を書かされるような顛末を導いてしまった自分が悪い。うん? じゃあやっぱり自分のミスだったのか? いや違う。断じて違うはず!
そう、だってアイスがあの場でサングラスを奪うような真似をしなければ、お互いのサングラスを取り違えることにはならなかったはずなのだ。
フライトスーツの、胸のポケットに挿していたサングラス。それがデスク越しからキスを強請られて、やれやれ仕方ない奴だと近づいたタイミングで引き寄せられ、ぺちん、グラス部分がアイスの頬を打った。アイスは視線を下げ、興が削がれたような顔をして、そう見えるだけで実際そんなことはなく、彼はマーヴェリックの胸ポケットに指を伸ばし、人差し指で引っ掻けるようにしてサングラスを抜き取ると、デスクの上に置いた。自分のサングラスと並べる様に。
改めてキスをしようと向き合った時、アイスは湖氷色の目でのみ笑っていた。唇は結んだまま。「お前はまだ飛行スケジュールの張り出しを見て、嬉しくなったり、悲しくなったりするのか?」
「はあ?」
「いや、好きだったなと思って」
「一体いつの話をしてるんだ」
「もちろんトップガンにいた時の」
「生徒の頃? 教官の頃?」
「どっちも。お前の
……
張り出しを見た後の顔があんまり面白いから、俺とスライダーはだいたいもう内容の予想が出来て覗き込んでたな。ってのを急に思い出したんだ」
「今は張り出すほうの立場をやってる。おかげさまで」
「飛行時間は多めにしてやってるのか?」
「もちろん。飛行時間が長ければ長いほど生徒は嬉しいはずだろ?」
「まあそれはな
……
。いや、そうか?」
マーヴェリックは何気ない昔話にくすっとして、お互い、ずっと同じ型のサングラスを使い続けているなということにしみじみした。シューター。細いテンプルと中央の飾り穴。レンズとレンズの幅が狭く、アイスの顔の骨格によく合っている。レンズの色は、空を降りるタイミングで調光ブラウンのレンズになった。
このクラシカルなデザインのサングラスが似合い、ほとんど表情を変えないアイスという男が、とにもかくにも癪で、嫌いだった時期もあったのだ。
椅子を持ってきて、お互いの顔を眺めて、最後に、ついでのように唇を重ねて終えるキス。
これが、このところ半年間の習慣だ。職場なのだから、それくらいでいい。それ以上になってしまうといけない。これくらいでもやりすぎなくらいなのだけどーー
ナイフ、ストロボ、水筒、ライザーカッター、照明弾
……
と。決められた手順とテンポで、出動の準備を整えるという作法が、マーヴェリックもアイスも、好きだった。好きというより性に合っていた。瞼を見、眉間を見、頬を撫で合い、鼻先を近づけ、相手の唇の隙間に自分の下唇を滑り込ませて、微笑む。目を閉じる
……
。
さて。
と心で唱えて立ち上がりつつ、軽くハグして腕を叩き合って別れるというのが最近の逢瀬の切り上げ方だ。
マーヴェリックはいつも通りの速足で廊下を歩く。だよな、あの後だ。じゃあ午後も仕事に精を出すかと目配せして、別れた直後だ。
先にサングラスに手を伸ばして胸にかけたのがアイス。続いて自分が残りを手に取って胸にかけた。その時点で気づけそうなものだが気づかなかったというわけだ。こうして実際にかけようとするまで。
マーヴェリックは、まあ別に悪いことをしているわけではないと腹を決めて、アイスのサングラスを開き、何か言い訳するようにもごもごと口を動かして見せながら、かけた。
おっと? 意外にも違和感はない。
まあメーカーも同じだしなと思ってすたすたと基地を出る。視界は快適だ。夏のまぶしい日差しは、ブラウンカラーのレンズによって適切に調光されている。ただこの状況。恋人のサングラスをかけて出歩いているという認識。アイスとの関係を知るのはお互いだけなのだから、こっ恥ずかしいも何もない。そうそう。ちょっと気分転換で、スペアをかけてるくらいの気分でいればいいのだ。
格納庫まで歩く間に、知り合いに出くわさなければいいのだが。
もしかしたなら、ホンドーくらいは気づいてくれるだろうか? いや、気づかれたいわけじゃないけどな。似合ってるかどうかくらいは聞いてみたい気がする。いっそそのへんにあるF-18のサイドミラーで確認してみるか?
自分のサングラスをかけているアイスを想像してマーヴェリックはむっすりした。おい、どんな気分で俺のサングラスをかけてる? まさか俺より似合ってるなんてことはないよな? シューターもアヴィエイターもレンズの型は同じ系統だから似合っていないわけがないのだ。ああクソ、アヴィエイターを掛けているアイスマンだって?
日差しのせいか、さもなくば他の理由か、頬がじんわりと熱くなってくる。言いたいのは、思っているのは、こうしてちょっとテンションが上がっているのは自分だけじゃないといいってことだ!
アヴィエイターをかけてペンを回すアイス
…
、
…
とか?
(あークソ! 見たい! 会いたい!)
『Sweet Incident』
波箱はここから
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