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もちこ
2025-03-12 16:08:41
1090文字
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ハンカチは香水と海の匂い
いぞバソコンビ
中身もオチもない二人の会話。暗め。
土佐弁はしんだ。
「もっと笑うといいよ。以蔵は。」
「ようわろうとるじゃろ。」
「そうでもないよ」
以蔵の空になったティーカップ...いや茶碗というのだっけ。それをじっと見た。
「よく笑うといいよ。」
「...ようわろうとるよ。」
まだ中身のある急須を両手でぎこちなく持ちながらもおかわりを注いだ。
「海は嫌い?」
「なんじゃ。急に。」
「地元に海はあっただろうからそうでもないか。」
「....」
以蔵は少し呆れたようにため息を着く。
「おまんみたいな頭のええやつの言い回しは好かん。」
「それはすまない。」
「わしはおまんが思うほど辛かない。」
「...うん、すまない。」
「けんど」
「けれど?」
「おまんのそういうところはえいと思っちょるよ」
お茶をぐいっと飲みながら以蔵はそう言って伏せ目がちに笑う。
「おまんの部下は運がえいな」
「...そうでもないさ」
「わしがそう言うた。そういうことにしとき。」
「....」
再び空になった茶碗を以蔵は見つめている。
「おまんの中に誰も見たりはしちょらんよ。何も辛かない。海は...」
私の目をしっかり見ていたずらっ子のように笑う。
「海は、好きやき。」
「....」
茶、と言われたからまた注ぐ。お、茶柱。と以蔵が呟く。
「ま....もっと笑えいうんは聞いといちゃる。」
「え?」
「当たりじゃ船長。わしは、」
やっぱり少し寂しかったのだとそうこぼした。
「以蔵、」
快活に笑っていた以蔵の表情が一瞬にして何かが抜け落ちたように色を失う。
「入ってくんなや」
「....」
「わしの、わしの1番まったいとこに」
入ってくるなよ。
以蔵の表情が歪む。
夕焼けの瞳が私を睨む。
「...すまない。すまない以蔵。」
かみをぐしゃぐしゃとかきまぜながら下を向いてしまった以蔵に思わず手を伸ばす。
その手は払われることもなく素直に彼の無骨な手に届く。
「ほら、髪がぐしゃぐしゃだ。私が悪かったから。」
「おまんはなんでそんなこと言うた」
「....私は...」
もう片方の手でハンカチを取り出しそれを彼の頬にあてる。
「君に頼られたかったんだと思う。」
「人のことは何をしてでも助けるくせに自分に対してはドライだろう?」
「相手のためなら言葉も尽くすし寄り添うのに」
「君自身は、」
は、と吐き出すように笑って以蔵はハンカチを取り上げた。
「ええよ。」
「そん言葉だけで、えい。」
そのハンカチで目元をぐっと押さえている。
「そん言葉だけで。」
救われたような気がした。
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