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望月 鏡翠
2025-03-12 15:17:15
892文字
Public
日課
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#1656 「マッチ棒」「コイントス」「断捨離」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題話
私が表であいつが裏。そして運命のコイントスだ。
「じゃあ、いい加減次で決めるぞ」
両手を合わせて祈るような顔で弾かれた硬貨の行末を見守る。結果は見守るまでもない。表。連続で敗北し続けているから、得点棒代わりのマッチは、すでにこちらに堆く積まれている。
本来得点の計算をしなくていいようにコイントスをする。しかし相手が粘るものだから、勝った数を記録しなければ行けなくなった。
もう何度目かの勝利をマッチを積み上げる。目の前の人間の頭部が突然消えた。
両手を合わせて深々と頭を下げる。その頭を下げる勢いが凄まじくて、頭が消えたように見えたのだ。
「頼む! もう一回。もう一回だけ」
「何回目のもう一回だと思ってるんだ。これで一日終わらせるつもりか」
「そんなことないけど、これで負けたら今度こそ諦めて断捨離するから!」
「最初から捨てなさいよ。そういう約束なんだから」
箱に入った荷物もといガラクタに手をかける。
「いや、でも買うと高いし、まだ使うかもしれないんだって」
片付けられない人間の常套句だ。一年くらいならともかく、もう数年使ってないものは捨てた方がいい。必要であるなら古い道具を使わずに、新しいものを買った方がいい。
物を置いておくというのは、家賃の一部をそこに注ぎ込んでいるということである。だから無駄なものを置いていくくらいなら、キッパリ捨ててしまった方がいい。私はそう説得したのだが、聞く耳を持たない。だからこんな風に、賭け事で強制的に決断を促しているわけだ。
しかしそれでも諦められず、食い下がられてこの様だ。このマッチだって、捨てられずに終われていた大昔の遺物だ。とっくに湿気っているだろう。
「もしかしたら、勝つかもしれないだろ」
「勝つまでやるな」
呆れ気味に言う。
勝つまでやったら、確率にかけた意味がない。
それに、相手が勝つことは絶対にない。このコイントスは絶対に私の勝利しかありえない。使っているコインは両面が表なのだ。何回投げたって、裏が出ることはありえない。
そのことに気づかれる前に、勝負を終わらせて欲しかった。
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