バラ肉
2025-03-11 23:46:10
3544文字
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しあわせなこども

残虐描写あり⚠️

根っからの残虐超人の父ッケンから英才教育を受けた仔ブロの話。
設定はブルスカ投稿を読んでね。
※ちなみに今回は悪人が交渉相手なのでファタから逆にGOサインが出てます。

ファタが依頼人と交渉する際、仔ブロは次期当主としての勉強+護衛で同室を許可されるけど、きっと相手がファタに刃向かったら即座にやっちまうだろうな〜という。

「こっちの意見が聞けないと言うのか!」

怒声と共に、バンッ!と机を叩く音が重厚な部屋に響いた。
フーフーッと応接卓に両手を着く男の顔は、憤怒に燃えていた。納得いかない。目の前の交渉相手を睨め付ける目がギラギラと光る。
しかしそんな相手の態度などどこ吹く風。机の向こうでわざとらしく葉巻の煙を燻らせる男は静かに目を細めた。

……そう言われても、こちらもビジネスでしてね。一族を背負う立場として、おたくみたいな矮小企業の仕事を請け負うことは出来かねる。フフッ。アンタも、名ばかりの経営者とはいえ、それぐらいの覚悟は分かるだろう?」

ニヤリと口角を上げる唇は、それはそれは酷薄で冷徹だった。
心底相手を見下した態度はあまりにも露骨だ。しかし、偽りは一切ない。

さあ、お引き取りを……

話を切り上げるように足を組む姿に一縷の慈悲もなかった。
相手の顔が怒りに益々赤くなろうと、気にも留めない。むしろ美味そうに葉巻を吸う姿は、最早完全に興味を失っていた。
そんな不遜な態度に、男はぐっと奥歯を噛み締めた。
「なっ! 黙って聞いていればっ!この血に飢えた、醜いっ」
叫びながら、相手の胸ぐらを掴もうと身を乗り出そうとした、刹那。

「ハゲ、タカ、が……っ」

あれだけ勢い余っていた男の声が急速に萎んでいく。
声だけではない。先ほどまでの荒々しい顔付きは、見る見るうちにその勢いを無くしていた。何故なら、彼の喉にはヒヤリと冷たい感触が押し当てられていたのだ。

……黙れ、下衆」

部屋の中に凛と澄んだ声が響く。
それに合わせ、間抜けな面の下にキラッと鋭い光が放たれ、ブロッケンマンの顔を照らした。 

……親父になんて口を聞いてるんだ、このゴミクズは?」

愛らしい声色とは裏腹に、吐かれる言葉はひどく殺気立っていた。まるで、男の喉に突きつけられたナイフと遜色ない鋭さだ。
グッと一際強く喉に圧迫感を覚えた男から「ヒッ!」と情けない悲鳴が上がる。
いくら威勢はよくとも、所詮は単なる成り上がり者に過ぎない。場数すら踏んでいない狼藉者がブロッケン一族に刃向かうなんて。命知らずにも程がある。
だからこそ、対照的に良くできた己の愛しい忠犬の的確な行動が誇らしいのだろう。艶然と微笑む口元はどこか満足そうだった。
一方、男の背後に立つ少年の顔は、今にも唸りを上げそうなほど憤っていた。尊敬する父親に暴言を投げた愚者が心底憎いと言わんばかりだ。

……ブロッケン家当主を愚弄した代償は高いぜ? ドブネズミ野郎」

ビスクドールを思わす白く滑らかな頬はやや丸く、十を少し超えた頃か。大きなペリドットの目は長い睫毛に囲まれ、ベビーピンクの唇はリップを塗ったように艶やかだ。和やかに微笑めばきっと天使のように美しいに違いない。
だが、整っている分、ギロリと睨め付ける瞳は恐ろしく。横目でその相貌を覗いた男は震える以外の術を持たなかった。

いつでも殺せる。

年不相応の殺気だった視線に、今にも失禁してしまいそうになる。

―――そんな彼らに、ブロッケンマンは器用に片眉を上げた。

「おい。ジュニア……折角のナイフに、そんな相手の血を吸わせるな」

葉巻をガラスの灰皿に押しつぶしながらニヤッと笑う顔は「ベルリンの鬼」の異名をほしいままにするに相応しいふてぶてしさだ。
嗜める声に男の纏う空気がホッと和らいだのだって、気に止まる気なんてさらさら無く。

「やるなら、“練習台”にすればいい」

そう頭を傾げる仕草は、まさかの台詞に絶望する交渉相手なんて最初から眼中になかった。
一体何の練習台にするというのか。不安に顔が土気色に染まっていく。
それに対し、ジュニアと呼ばれた少年はブロッケンマンの意味を瞬時に悟ったらしく。さも嬉しそうに頬を綻ばせた。まるで咲いた花から蜜が溢れるように、艶やかに。天使も顔負けの美しさはさながら絵画から出てきたか疑うレベルだ。

「Ja!! ファーター!」

元気よく答えた少年は、剣呑だった瞳を一瞬にしてトロリと溶かした。
突き付けていたナイフを太ももに巻いたホルダーに仕舞うと、彼はひょこっと肩口から顔を出して男の顔を覗く。
やや紅潮した頬に、怯えとは違う意味で喉が変な音を立てた。
年端のいかない少年から醸し出される壮絶な色香に、自分の置かれた状況も忘れて魅入ってしまう。

ましてや、今までの形相とは打って変わって、可憐にニコリと微笑まれたのだ。死への恐怖が頭から吹き飛ぶ。生存本能により、無意識の内に昂っていた愚息がついにムクッと天を仰ぐ。
そしてすぐそばで愛らしい唇が開き、赤い舌がチラッと見えた瞬間。



……ふぅ……
ベルリンの、赤い雨ッッ!!!」



高く掲げられた手刀と共に奏でられたレクイエム。それが終わるのと同時に、男の体は大きく半分に断ち切られていた。

……え?」

理解するより先に、裂かれた肩から血液が迸る。
ピューピューッ!と飛び散る飛沫は、さながら部屋の中に赤い雨が降り注ぐかのようで。

「なに、を……

唐突な展開に理解ができないのか。否、死を直前に脳が停止しかけているのだろう。
己の血で真っ赤に染まりゆく少年の、恍惚とした表情に見開いた眼が釘付けになる。
まるで職人が手掛けた極上の人形のような輪郭が、鼻が、瞳が、唇が、愉悦に綻ぶ。
さも、至極の快楽を噛み締めるかの如く、小ぶりの唇に小さな舌が這う。

(ああ、あの舌に吸い付きたい)

そう思った時。
走馬灯がてら、この部屋に入ってきたときの記憶が蘇る。
豪奢な部屋に入った途端、目に入った少年のマネキンのことを。照明がなく、日光だけを頼りにした薄暗い部屋の隅で、姿勢よく座る姿が妙に気味悪く感じた。
美しい顔の割に飾る髪はなく、無骨な緑の軍服とショート丈のズボンというチグハグさはどこか背徳感を覚えさせた、
そして、そんな人形を気にする自分に、持ち主であるブロッケンマンが意味ありげに『綺麗な子だろう?』と問いかけた声は、酷く自慢げで——

これらの意味を全て理解した脳が、喜びを示すように全身を小刻みに痙攣させる。
同時に、ズボンの股座がジワリと濡れた。それは膀胱から漏れた排泄物はもちろん、弛緩する寸前に吐き出した精液も混じっており。
強欲な三下の壮絶な最後は、とはいえ決して無惨なだけではないのが見てとれた。



そして椅子から転げ落ちる肉塊を見届けたジュニアは、自分が断ち切った肉の感触と、綺麗に決まった己の技に口角を持ち上げた。ゾクゾクと駆け上がる高揚感に熱い吐息が零れる。
思わず血溜まりをビチャッと踏めば、予想よりも力がこもっていたのか。足元に赤黒い血液が飛び散った。

……汚すなよ、ジュニア」

席の向こうから飛んだ叱責は、本人のお気に入りの黒の編み上げブーツに対してか。はたまた、ショートパンツから覗く瑞々しい柔い肌にか。
どちらにせよ、汚物の血で遊ぶなと言いたいのは確かだ。
「ああ、すまねえ……っ」
謝罪がてら、申し訳なさそうに肩を竦める。
その一方で父親を窺い見る目はどこかソワソワしている。
床に転がる骸と父親を忙しなく交互に見る姿は落ち着きがない。何かを期待しているのは明白だ。

……ほら、こっちに来い。ジュニア」

そんな分かりやすい息子の態度に、ブロッケンマンはフゥッとため息を漏らしつつも、小さく手招きを送った。
途端、飛び跳ねるように駆け寄ってくる姿に、バレないよう僅かばかり頬を持ち上げる。
黙って見下ろしていれば、彼はそばに来るなり足元へ膝をつき、そのまま椅子の肘掛けに両手を揃えて置いた。それだけでも十分愛らしいのだが、見上げる表情は更にキラキラと輝いており、敬愛すべき父からの賛辞を今か今かと待っていた。

父と子。たった二人の空間だから見せる甘えた態度は、ひたすら真っ直ぐで。故に、普段は厳粛な態度を示すベルリンの鬼も、ただの父親に戻ってしまう。

「よくやったな。ジュニア」

そう頭を撫でると、くすぐったそうに身を捩る子供は……たった今、一つの命を奪ったとは思えないほど無邪気だった。



……お前は俺の最高傑作だ」

らしくなく褒めてくる父親に、ブロッケンJr.は血塗れの顔に満面の笑みを浮かべるだけ。

「Ja……

小さく呟く返事は幸福に満ちており。
頭を撫でる手を掴んだ彼は、父の節ばった指先についキスをする。
この人の息子として在れたことへの感謝を込めて。

「愛してる。ファーター……





これはまだ、残虐超人に憧れていた頃の、しあわせな子供の物語。