Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
望月 鏡翠
2025-03-11 23:23:22
950文字
Public
日課
Clear cache
#1655 「廊下」「電灯」「謡う」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題噺
怖くないと自分に言い聞かせた。心の中だけでなく、実際口に出して自分を鼓舞しなければ先に進めなくなってしまいそうだった。
怖くない怖くない怖くない。別に平気だ。冷静に考えれば、怖がるべき理由は何もない。だけど私は冷静ではなかった。
スマホのカメラを構える。
インカメラが起動しただけで、小さな悲鳴が出た。向こう側の景色が映ると思っていた画面に人間の顔が映ったから、びっくりしたのだ。慌ててカメラを切り替える。
画面の中には暗い廊下が写っている。
ボタンを押した瞬間に、写真に人ではないものが写ったらどうしようと思った。何も写ってはいないようだったが、暗がりが大半だったからよくわからなかった。それをよく確かめようとは思わなかった。それは、自分が安全な日常に戻ってきたと確信が持ててからでないとできないことだ。
電灯はほとんど消えている。たまについているものがあっても、光量が落ちて不安定にチカチカとしている。無駄に雰囲気がある。お化け屋敷だって、ここまでではない。
どうしてLEDにしなかったのだろう。そうしたら、この建物が取り壊されるその日まで、くっきりはっきりと隅々まで照らしてくれていたに違いない。
もう一度、怖くないと自分を鼓舞してから、奥に足を踏み入れた。一度入ってしまったらもうヤケクソだ。ズンズンと奥に進む。
建物の奥に進むと、声が聞こえてきた。
古い童謡だ。機械の音ではない。ひどく聞き取りにくいが、ノイズは混ざっていない。人の謡う声だ。
その声がする場所に向かって、私は走った。
「ああ、やっと迎えにきたね」
部屋の中には誰もいない。しかしカメラを向けると、確かに兄はそこにうずくまっていた。
「世界で一番きらい!」
私は思わず悪態をつく。どうして毎回、迎えにくるのが大変なところに迷いこむのだろう。迷ったら迷ったで、連絡をくれればいいのに。
幽霊って、特定の場所に繋ぎ止められるものじゃないのか。地縛霊とかいうじゃないか。しかし彼は、ふらふらとどこかに出歩いては帰ってこなくなり、幽霊の噂が立った場所を探すとそこにいるというわけだ。
年齢を追い越してしまった兄に手を差し出す。見えないしもう成長しないけれど、まだ私は彼と手を繋ぐことはできた。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内