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望月 鏡翠
2025-03-11 01:08:25
939文字
Public
日課
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#1654 「コンビニ」「カクテル」「慰む」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題噺
これが本物じゃないなんてことはわかりきっている。家にバーカウンターなんてない。カウンターどころか、コンロだって二口おくことができない。洗い物でさえ億劫になる。コップを洗っただけで、自分のことを褒め称えてやりたいくらいだ。
食事はもっぱらコンビニで用意する。
食べてゴミを捨てて終わり。シンプルだ。文明の恩恵をこの上なく感じることができる豊かな生活を送ってる。それでも時折どうしようもなく、どうにもならないことの話を聞いてもらいたくなるときがある。
そういうときにここの出番だ。VRの中にしか存在しない、架空のバーに行く。顔も名前も本当には知らないが、親しさだけはある人たちに話を聞いてもらって慰めてもらう。
具体的な解決法なんてなくていい。ここに非日常があるというそれだけでいいのだ。
バーらしさを演出ために、普段は飲まない酒を飲む。
それもコンビニで買ってきたものだ。何かそれらしいカクテルの名前が書いてあるけれど、ちょっと苦くて喉の奥にカーッとくるジュースでしかない。調べたら子供用のシロップ状の薬みたいな色合いで、一回の服用量くらいしか入っていなさそうな小さなグラスが出てくる。
きっとものすごくアルコールが強くて味が濃くて、一杯で頭が痛くなって前後不覚になるようなお酒に違いない。
カクテルをイメージした、少しだけ炭酸が入ったお酒で十分だ。バーをイメージした非現実で構わない。
現実ではなくても、心を慰むことくらいはできる。むしろ現実がやってくれないことだ。向こう側には、お酒ではなくお茶でやってる人もいるだろうし、本物のお酒を飲んでいる人もいるかもしれない。
話が盛り上がっているうちに、飲みすぎて思ったよりも酔いが回ってしまった。
服にこぼしてしまって、慌てて皮を脱ぐ。架空の世界は消え、酔いすぎたので落ちますとメッセージだけ急いで送ってログアウトした。
拭いたら汚れは落ちたが、よって力加減を間違えたせいで破けてしまった。これでは明日の仕事に差し支える。
明日までに人間の皮を修理しておかないと。
VRの世界なら、こんな手間をかけずに済むのになと、考えても仕方がないことを考えた。
人間のふりをしていきるのも、楽じゃないよ。
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