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望月 鏡翠
2025-03-11 00:47:31
1019文字
Public
日課
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#1653 「天使の梯子」「ヘッドホン」「読む」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題噺
久しぶりに雨が止んだ。
割れた雲間から差し込む光が、天使の梯子を見せている。日常の合間に見える幻想的な風景にしばし目を奪われた。しかしいつまでも窓の外の景色を眺めている余裕はない。
雨が止んでいるうちに、やらねばならないことがある。
梅雨時のジメジメした空気の中では洗濯物も乾かず、不愉快な気候の中では気が散って何事にも集中できない。
精密機械が集中してしかも終日動き続けているただでさえ暑い部屋は、この季節から空調を終日効かせていないと暑くて眠ることすらできない。
この部屋の主に用があるのだ。
ノックをしても返事はない。それはいつものことなので、一定時間置いてから勝手にドアを開けた。大きな椅子の中に小さくまるまって、丸まっている。
ヘッドホンで両耳を塞いで、世界に対して拒否の姿勢を示している。きっと外が雨続きであることも、雲間から差し込む光もみてはいないだろう。
当然、部屋に入ってきた人間のことも見ていない。
もう一度、開いたあとのドアを強く叩いて存在をアピールする。気づかないらしい。
しかたがなく、強硬手段に出ことにした。
指を引っ掛け、ヘッドホンを引っぺがす。
「
……
なに?」
不機嫌そうな顔で睨まれたが、いつものことだ。外に興味を向けることなく、声をかけても気づかない人間は、やっていることを強制的に辞めさせなければ、会話を始められない。
のっけから印象が悪くなるのは、仕方がないことなのだ。
「雨が止んだ」
謝罪も理由も必要ない。簡潔に、必要なことだけを伝える。
椅子の上からしばらく動いていなさそうだったのに、にわかに立ち上がった。反動で残された椅子がくるくると回転する。
「全く雨がない日というだけで、どうしてこんなに待たされなければならないのか」
「ここは日本で、今は梅雨時ですから。雨が降らない日を探す方が難しい。また天気が崩れる可能性もありますよ」
「ならばなおのこと、すぐに探しにいくべきだろう」
「その通りです。なので出かける準備はこちらに」
こんなこともあろうかと、だ。
いや、晴れたらすぐに出かけるというのがわかっていたから準備をしていただけなのだが。問題は、部屋に篭りきりでいた人間の体力が持つかどうかということだ。
いざとなったら、一人でやらないといけない。
手順書をよく読む。
雲より高い場所を飛ぶ怪異を捉える方法なんて、本当にあるんだろうか。
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