RINGO
2025-03-10 23:29:42
1154文字
Public 境界の灯
 

境界の灯18

エピローグまだなんであと一話あります(白目)

 しばらくして、モフモフはフィオナを抱きしめる力を少しだけ緩めると低く抑えた声で呟いた。
……離したくないな。」
 彼の少しだけ震えたその声に、フィオナは子供を安心させるように彼の背中をゆっくりと撫でる。
 わずかに張りつめていた彼の力が抜けると、「わかったよ。」と軽く笑いながらため息をき、名残惜しそうにフィオナから体を離した。

 モフモフは少しだけ腫らした目をしていたが、その顔は先ほどより、どこか晴れやかで柔らかな表情をしていた。
 彼はフィオナを見つめると、口を開く。

……俺は、ここに居ても良いんだよな?」

 伺うように、確かめる様に言う彼に対してフィオナは彼の目を見つめて即答する。
「もちろん。」

 淀みのないその言葉が、モフモフの心を温める。
「そっか……。」
 もう一度フィオナの言葉を刻むように深く息を吸う。
 そして、静かに吐き出すと頬を緩ませた。
……そうか。」
 そっと目を伏せると、照れ臭そうに笑った。
 
 


……明日もコイツは仕事みたいだし、そろそろ休むよ。」
 何かに促されるように、モフモフはカーテンを少しだけ捲りすっかり日の暮れた景色を見た。
 エリオットの声はあれからまた聞こえなくなった。
 だが先ほどよりもはっきりと彼の意思が明確に伝わる。曰く、

 早く寝ろ。

 そんな意思が細波のように煩いほど伝わってくるのだ。
 エリオットの中で何が変わったかは知らないが、声をかけてきた時よりずっと遠慮がなくなり、モフモフは思わず笑った。
 
 「そっか、もうそんな時間なんだね。」
 フィオナも時計を見て、少し驚いたように頷いた。
 
 モフモフは「あぁ。」と彼女の方へ、少しだけ体を倒す。
 「おやすみ、フィオナ。」
 そう言うと、彼は彼女の頬に鼻先を少しだけ擦らせた。
 そして、一拍置いた後そのまま触れるだけの軽いキスを彼女の頬に落とす。
 
「っ!」
 フィオナは驚いた様子で、目を丸くしてモフモフを見つめた。
 徐々に頬が熱を帯びていく事が自分でもわかる。
「これは……挨拶、なんだよね?」
 動揺を見せないように努めながら、確認するように彼女は尋ねた。
 その声は少し震えている。

 モフモフは、フィオナの反応を楽しむように悪戯っぽく笑い、鼻を小さく鳴らす。
「あぁ、もちろん……今はまだ。」

「今はまだ?!」
『今はまだ?!』

 その言葉を聞いて、部屋に響くフィオナの驚きの声と同時にエリオットの声なのか、頭の中に同じ言葉を叫んだような音が響いた。
 内と外の共振で一瞬耳鳴りがしたが、それ以上に二人の反応が面白く、モフモフは笑いながらフィオナの部屋を後にする。
 
 その後ろ姿には、どこか満足げな余韻が漂っていた。