ミノル
2025-03-09 23:35:02
1157文字
Public しんらぶ/二次創作
 

夜半におにぎり、の後の話

しんらぶ/ 伯仲+八文字ちょうぎ(この時点では恋愛感情なし)/ pixiv作品の後日談
◆別ゲームのキャラ同士によるクロスオーバー作品です。都合のいい捏造いっぱい。苦手じゃない方だけご覧ください。

これ https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14182323 の後日談。
長義が写しに物申したい話withちょうぎちゃん。短いですが一応ずっと後日談考えてはいたんです…よ…という…。

 金色から伸びた2本の橙が、ふわりと揺れる。
 戦装束に身を包んだ山姥切国広が廊下の先へ歩いて行く姿を、山姥切長義は人知れず睨みつけた。


 あの日から何度こんな事を繰り返しただろう。長義は数える事をさっさと放棄した。


 八文字ちょうぎから夜食を差し入れられて数日が経つ。
 夜食のおにぎりは彼女と山姥切国広が作った、美味しかったなら国広に伝えてはどうか、と言い残して彼女は帰った。

 確かに美味しかった。しかし量が多すぎだ。
 全て食べきるのに朝までかかったし、おかげで寝不足になったし、胃がいっぱいで何も食べられないまま一日過ごした。翌日が非番で本当に良かったと長義は思った。

 今後のためにも、ひとつ物申してやろうと考えた長義だが、この写し、目を合わせてもすぐに逸らして、そのまま去ってしまうのである。

 今までだってそうだった。用もなくわざわざ話しかけに行くほど二振りは仲良しではない。そのうえ国広は自身が夜食を作った事実をバラされている事も知らない。だから長義に話しかける理由がない。

 だが、長義は彼に話しかける理由がある。

 であれば、長義が自ら声をかけるしかないのだが、何となくそれも負けたような気になり、こうして睨むだけで数日が経ってしまったのである。



 ――もう、別にいいか。
 ふいに過ぎった言葉に、長義がひとつ息を吐く。
 伝えたところで自己満足と言えばそれまで。こんな事に時間と神経を使うのも無駄でしかない。伝えたところで何かが変わるわけでもないだろう。

 そう、何も変わらない。
 変えたいとも、思ってないんだから。


「山姥切くん」
 手を掴まれた感触で、僅かに肩が跳ねる。
 いつの間にか八文字ちょうぎが長義の手を掴み、真面目な顔で彼を見上げていた。
 だがその表情も一瞬で、直後ニヤリと笑みを浮かべては大きく息を吸い込んだ。


「まーんーばーちゃーーーーーーーん!!!」

 金色から伸びた2本の橙が、ふわりと揺れる。

 翡翠のような双眸が、驚いたように長義を捕らえた。

「八文字、お前」
「だいじょうぶ」

 少女は安心させるように、目を細め、笑う。

 長義はそのまま手を引かれ、己が写しの前に引っ張り出された。
 その写しといえば、折角汚いボロ布を捨てたくせに、不安げに、しかし真っ直ぐに長義を見ている。

 ――まったく、余計なお世話だよ。

 心の中で長義が吐き捨てた。だが逃げ道を絶たれた事で、どこか安堵した自身もいたのも事実だった。

 覚悟を決めて、長義が口を開く。



 そういえば、と直前で思考が滲んだ。
 ――彼女の瞳も、綺麗な翡翠色だったな。写しと同じくらいに。

 そんな事を、この日初めて長義は知ったのだった。