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RINGO
2025-03-09 22:32:43
1527文字
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境界の灯
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境界の灯17
この話自体は、あと一話。多分おそらく
フィオナはどこか泣きだしそうなその表情に、出会った頃のモフモフを思い出した。
そっと手を伸ばして、彼の頭を優しく撫でる。
それに対してモフモフは驚き、身体をこわばらせてフィオナを見つめた。
その動揺は内側から見ていたエリオットにも伝わる。
決して語られることのなかった言葉がモフモフの動揺によって堰を切ったように、エリオットの心に流れ込む。
まるで水面に雨が落ちる様に波紋が幾重にも重なるような胸の痛みに襲われた。
【
……
受け入れられなくても良い】
【だけど、せめて】
【フィオナだけは
……
フィオナとのつながりだけは奪わないでくれ】
(こんなに痛くて苦しいのに、何故君はこんなことを続けているんだ?!)
フィオナに近づくたびに、波紋が細かく痛みが増える。
(こんなことをしたってフィオナや僕が嫌がることは分かっているだろう?!)
痛みが増えるという事は、モフモフ自身が傷ついているという事だ。
本位でやっている事ではないことは明らかだった。
先ほどまでは、自分の体を勝手に使ってほしくない一心だったが、エリオットは自分の為ではなく、モフモフの為にこの行為を止めなければならないと強く願った。
モフモフは再びフィオナとの距離を静かに詰めた。
顔をわずかに傾け、今にも口付けしようとした刹那、水面に深く沈んでいた思いが溢れだすように、大きな波紋が生まれた。
【もう】
【もう、ひとりになりたくない】
『
……
やめてくれ、モフモフ』
絞り出すような声に、モフモフは動きを止めた。
ようやく、エリオットの言葉がモフモフの意識に届いたのだ。
「
……
フィオナ、悪かった。」
低く小さな声でモフモフはフィオナに言った。
エリオットの声が聞こえた。
そのことに少しだけ救われた気がして、モフモフはフィオナから体を離そうとする。
しかし、それに反してフィオナは撫でていた彼の頭を自分の体に抱え込むように体を寄せた。彼は一瞬身じろぐが、フィオナは確かに彼を抱きよせた。
「フィオ
……
な、何を」
困惑の声を上げる彼の頭を優しく撫でて抱きしめる。
「
……
君はあの時から、ずっと泣いていたんだね。」
モフモフは動きを止めた。
フィオナはあの時濡れそぼっていた彼が、魔族だろうが狼だろうが関係なく、たったひとりでここまで来たことを失念していた。
元気になったモフモフを見て母は言った。
「
……
今は良いけど、もう少し大きくなったら森に返すのよ?」と、
それを聞いた彼は「だから俺、一生このまま、子狼の姿でいいやって思ったんだぜ?」と言っていた。
フィオナは最初、自分に懐いてくれているんだと思っていた。
それも確かにあるかもしれない、けれど理由はそれだけじゃなかったのだ。
(
……
帰る場所がないんだ。)
そのことに気づいたフィオナは自然と涙があふれる。
「
……
モフモフ、良いんだよ。ここに居て。君がエリオットから出たって、どんな風になったって、君はここに居て良いんだよ。」
自然と抱きしめる力が強くなる。
「だって、君の家はここなんだから。」
腕の中でモフモフはびくりと体を震わせた。
異物である自分が一番求めていた言葉なのに、信じていいのか戸惑っていた。
けれど彼の行き場のなかった両腕は自然と彼女に伸びていた。
信じたい。
――
そう願う様に優しくフィオナを抱きしめる。
「
……
ありがとう」と彼は震える声で呟いた。
フィオナは少しだけ笑って首を振った。
「
……
お母さんが亡くなった時、私を一人にしないでくれて
……
ありがとう
……
」
頬にとめどなく流れていく涙は止まらなかった。
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