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たぬま
2025-03-09 06:46:02
1046文字
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小説など
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君からの贈り物
イデケイの短文です。
「何それ」
イデアは言った。その視線の先にはケイトがいて、ケイトの手にはかぎ針と編みかけの何かが握られていた。休み時間の教室でのことだった。
「編み物!今流行ってんだよ、知らない?」
「ふーん、編み物
……
」
確かに若い女子の間で編み物が流行っているらしいことはSNSを通じて知っていた。しかしそれをケイトがやっている光景は不思議だった。
「君編み物とかやるタイプだっけ」
「流行ってたらやってみるタイプ!そしたら結構ハマっちゃってさー」
ケイトの手にある正方形の編みかけのもの
――
おそらくコースターか何かを編んでいるのだろう
――
は、暖色系の色遣いでまとめられていて、彼のイメージに合っていた。それに、流行っていたらやってみるという姿勢は彼らしいし、今回はなんだかそれが好ましく思えた。
「今編んでるのは自分用だけど、イデアくんにも色違い編んであげようか?」
「え」
突然の提案にたじろぐ。色違いって、それではなんだか仲良しみたいじゃないか。イデアとケイトは、お世辞にも仲良しとは言えない関係だった。ただケイトが一方的に絡んできて、ペアを組もうだの、お昼を一緒に食べようだの言ってくる関係。編み物をするケイトが物珍しくて声をかけたらこれだ。イデアはどう答えるべきか悩んだ。
「イデアくん色違いとかいらないタイプ?」
イデアが少し黙っていたからなのか、ケイトはそう言った。若干さみしそうな顔をしている。ぐう、とイデアは唸った。しょげているケイトの姿は、こちらに罪悪感を抱かせる力があった。
「もらえるものはもらうタイプです
……
」
「!」
一転、ケイトが表情を輝かせる。「じゃあ編めたら渡すね」と言いながら、ニコニコとこちらに笑いかけてきた。ちょっと強引なのは困るけど、彼がこちらに笑いかけてくると、なんとも言えない気持ちになるのは事実だった。ケイトはイデアが苦手とする「陽キャ」で、実際そんなに仲良くはないけど、時折こうしてケイトの行動により「陽キャ」の悪しきイメージがイデアの中で崩れていくのだった。
後日、イデアの手元に寒色系で編まれた正方形のコースターが手渡された。丁寧にPP袋に入れられリボンまでついていて、陽キャはこういうところまで気を遣うのだな、と感心させられる。部屋に帰り袋を開けると、折り畳まれたメモが入っていることに気づく。開いてみると、「もらってくれてありがとう」と書いてある。
ああ、とイデアは思う。困ったな。君のことをもっと知りたいと思ってしまった。
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