ぽふむん
2025-03-08 23:31:22
1301文字
Public
 

散りぬべき


#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「手土産」をお借りしました。

カナエさんの祥月命日に、生前の思い出話と共に、散る覚悟を決めるしのぶちゃんです。

四年前の今日。姉が死んだ。

殺された。
鬼に

姉が死ぬまでは、もう鬼殺業務から身を引いて、支援業に精を出そうと思っていた。

でも……



「あらぁ、珍しい。皆さんお揃いで」
しのぶは目を丸くした。
本当に珍しい組み合わせだと思う。
柱合会議以外で、この三人が揃うなんて。
冬だと言うのに蝉が鳴くかもしれない。

銘々が手土産を手に携えている。
「これを、カナエの仏前に……と思ってな」
宇隨が先陣を切った。

ああ、そうだ
今日はカナエの四回目の祥月命日。

だから、墓参りに行こうと思って玄関に向かうと、彼らが訪れたのだ。

生前のカナエのことを知っている現役の柱は、もうこの三人と悲鳴嶼だけしかいない。
たった四年
もう四年と言うべきか。

せっかくの来訪なので、三人とも仏前に通し、手土産も供えた。
久しぶりだろうか、故人の話をしたのは。

一般的には、同僚程度までの付き合いならば一周忌までという……でも、そういう弔問は御館様だけだった。
御霊は産屋敷家が弔うと言う、勿体なくもありがたい言葉を言われたが、丁重に辞退した。
しのぶ一人で弔い続けた。

柱ともあれば、忙しくて弔問にすら来れないことはわかっていた。
だから、そのようなこと気にしてはいない。
何を今更とも思わない。
ありがたく、三人の訪問を受けいれ、故人の思い出話に耳を傾けた。

しのぶの知らない姉の話がいっぱい出てくる。
驚いた。
姉はそんな人だっただろうか。
話に出てくるのは、しのぶのこと、蝶屋敷のこと、鬼殺の事でいっぱいいっぱいだった、ただの十七の娘の話。
時には感情的になることもあった、ただの娘の話

(もっと偉大な人だと思っていたんですが。だから姉を真似して来た。そうすればいつか……)

強くなれると思っていた。

姉は優しく強い人と思っていた。
全部自分一人で背負い込み、表に見せない……


優しく強い人

それは幻想だったのだろうか


その時宇隨が……おそらくこれが本題なのだろう 。言いよどみながら口を開いた。

「なぁ……しのぶ。もう鬼殺なんざ俺たちに任せて見合いでもしねぇか?」
出来れば、政府の高官か、それに近しい立場のものがいいと言う。
どんないい男でも、半端な立場のやつではダメだと言う。

宇隨は忍びの末裔だから、身に染みて知っている

女の間諜や毒使いの成れの果てを

「カナエがな……夢枕に立つって、ああいうのを言うんだな。しのぶを止めろって」
その後は言わせなかった。
毒の危険性と、その使い手の成れの果て。
そんな事は知っていたから。
高官がいいと言うのは後ろ盾と言う意味だろう。
毒が、鬼殺以外に悪用されかねないものであることくらい、覚悟していた。
だから、しのぶは生きるつもりは無い。
毒使いの女の成れの果ても知っている。
無闇に生き残ろうものなら、毒婦、悪女と名を汚され世間の好奇の的だろう


(私の毒は全て私の体内に入れます。
この毒は私諸共この世から消します。
あいつとともに)





散りぬべき とき知りてこそ 世の中の
人はひとなれ 花は花なれ