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kasimiyakedama2
2025-03-08 20:15:41
3189文字
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デリヘルじゃねえんだよ
ピョアトピョですが攻守は決まっておりません。
お互い百戦錬磨パターンでさわりだけ書いたやつ。
2025年おさかなの日企画でした。
後日談→
時間無制限三本勝負
日々下界とは隔絶された場所でただひたすらに強さを追い求めて鍛錬する彼らにも、外出の機会はある。
ひとつは、これが彼らの本質と言っても良いであろう、リングでの戦いに赴く時。
いわば晴れ舞台だが、彼らが掲げる「下等な生物が到底辿り着けぬ強さを持つ者こそが完璧超人である」という錦の御旗が災いしてか、そのような機会はめったに来ない。すでに彼らは完璧という称号と引き換えに不老不死を得ており、それを不満に思う者はいないのだが。
もうひとつは、下界で何か看過できぬ事態が起きた際の鎮圧ないしそれに先立つ偵察任務である。
多くは無量大数軍を束ねる上位の存在──その多くはその存在が何者であるかを知らず、またその姿を見ることもない──からの依頼として伝えられる。
今回の任務地は、大海原に島々の連なる場所であるという。
出身地にも近いのだと言って、どこか浮ついた空気を纏わせてマーリンマンは出立の準備をしていた。
「
……
おまえさ、匂いが。」
くんくんと鼻を鳴らしながらその背に声を掛けたのはダルメシマンであった。匂いがなんだ、とマーリンマンが問うた。
「包み隠さず言えば発情期の匂い」
「
……
バレたか」
「少しは隠せ!」
「どうせおまえ以外には分からん」
マーリンマンは悪びれる風でもなく、あっけらかんと言った。彼らと普段よく顔を合わせる無量大数軍のメンバーは全身、半身の違いはあれど機械の身体を持つものが多い。ゆえに嗅覚には無頓着だった。
ダルメシマンは犬が威嚇をするときのように、鼻の上に皺を刻んだ。
「俺を気遣えっつってんの
……
今度は誰だ。」
「決まっているだろうそんなもの」
アトランティス、と唄を口ずさむような調子でマーリンマンがその名を呼び、ダルメシマンは訊かなければ良かったと心底後悔しながらがっくりと肩を落とす。過去に幾度か繰り返されたやりとり。
「不屈の魂、オレを上回る執念
……
鮮やかな緑の鱗と宝玉のような赤い瞳のコントラスト!
いささか小柄だが腕に抱くにはちょうどよかろうな
……
」
「おまえ、任務ちゃんとやれよ」
「勿論だ。この完璧超人たるマーリンマンの辞書に仕損じるという言葉はないぞ!
任務を終わらせて高級なディナーを楽しむぐらいは罪にはなるまいよ?」
完全に表情筋の死んだ顔で、ダルメシマンはマーリンマンを見送りながらこのいささか奔放な男の標的となった悪魔超人に同情した。
「泳ぐのは訳ねえが、さすがに極寒の海は御免だからな」
あっけらかんと言い放つ緑色の鱗の半魚人の言葉に、ミスターカーメンは片目を眇めてみせる。
すでに夜半過ぎ、悪魔が暗躍するには相応しい頃合い。当の悪魔達はトレーニング上がりの酒宴に興じ、すでに床は死屍累々。
唯一残っていたのはめっぽう酒に強いアトランティスとバッファローマン、逆に弱いがゆえにほとんどアルコールを口にしていないミスターカーメンの三人であった。
「だから噂を流してやったんだ。島の言い伝えをちょこっとだけ捻じ曲げてな。」
鋭い牙の並んだ大きな口を広げて、アトランティスはしてやったりという表情を浮かべていた。
アトランティスの生まれ育った処とよく似た海の伝承を、完璧超人であれば気になるような古代の、まだ超人という存在が枝分かれするまえの時代にありそうな言い伝えにすり替えて。
「あの島の周りは浅瀬が多くて潮の流れも速い。
無数にある島をくまなく巡るには、船と優秀な船頭を確保しなきゃならねえ。
運良くそれができたところで次はお天道様の機嫌伺いだ。
あのせっかちな完璧野郎どもがそんなことすると思うか?」
問われたカーメンは両肩を竦めてゆるゆると首を振り、アトランティスもまた同意を得たことに笑みで返す。
「で、だ。 やつらがどうするかっつったら
……
?」
「船での移動が必要のない奴を向かわせる」
正解、と人差し指をカーメンに向けたアトランティスは、物分かりの良い仲間に満足げな表情を見せて一声、高い笑い声を上げた。
「いやあ、良かったぜ。どうやら無量大数軍であいつより泳ぎの達者なやつはいねえらしい。いや、いても困るんだけどよ。」
「またアトランティスの悪いクセが出た」
「それを言うなって。バッファ」
「それで、喰うのか?」
「チャンスがあればな」
「ずいぶんと、ご執心じゃねえか」
揶揄するような口ぶりなのはバッファローマンだった。すでに杯を重ねた男はほんのりと頬を赤く染めていて、饒舌だ。
「そりゃそうよ。めったに会えねえ
同類
おなかま
に会えたら嬉しくもなるってモンよ。
おまけに絶世の美女ときたもんだ」
「美女
……
?」
問い返したのはカーメンだった。
「おう。顔もカラダもたまんねえ。」
バッファローマンとカーメンは一様に複雑な表情をしたが、魚基準で言えば良い男なのだろうと思うにとどめた。
人間とて国が違えば美醜の基準は違う。いわんや超人をや。まして種族も異なるのであれば、そこには多様な好みが存在するのだ。
プレイボーイで鳴らす猛牛は過去にもこの微笑みを見たことがある。
戦った相手を認めた時──とはいってもこの男が認めることはめったにないが──アトランティスはもっとおまえのことが知りたいのだと言って、その相手の元へ赴き、そして食い散らかして戻ってくるのだ。
魔界から外へ通じる道へと、それこそ弾む足取りで向かってゆくアトランティスの背を見送りながら、バッファローマンとミスターカーメンは此度の獲物に指名された哀れなカジキの魂が安寧なることを祈った。
コバルトブルーの海に転々と浮かぶ島の、一番大きく栄えている島の唯一のホテルにアトランティスは向かっていた。
すでに情報は入手済み。男の部屋を突き止めることなど造作もない。
さあ、なんと言ってやろうか。
驚愕の表情を思い浮かべては胸を躍らせて、アトランティスは借宿のドアを開けたが、そこはもぬけの空だった。
「あ゛ー
……
」
赤い瞳に落胆の色を浮かべて、アトランティスはぽりぽりと頭頂部の鰭を掻く。
室内を見回し、使用したそのままのベッドの上に腰を下ろしてさてどうしてくれようかと思案した。
悪魔は執念深いのが信条だが、ことこういう場面に限っては諦めも肝心だ。
そう思ったアトランティスは首元に爪を立てると、鱗を一枚剥ぎ取った。
照明に翳すと薄緑を透かす鱗にそっと口付けをして、アトランティスはそれを枕元に残して部屋を出た。
アトランティスのねぐらは魔界の、地底湖を潜り抜けた先にあった。
水中で呼吸ができなければ辿り着けない其処は自分だけの領域だった。
もちろん仲間と共寝をすることもあるが──どうしても独りになりたい時もある。
そんな時に身を横たえるのは岩の上に海藻を敷き詰めたベッドであった。
一抹の落胆を胸に抱えたアトランティスは、暗い水の中を進みながら戻ったらその寝床で不貞寝を決めこうと思っていた。
地底湖から勢いよく顔を飛び出させて、岸に手をかけたアトランティスの赤い瞳が見開かれた。
濡れた身体を横たえても不快な感触になることもなく、すぐ乾いてふかふかの、俺の気に入りのベッド。
その上に男が横たわっている。
大きな青と白の色鮮やかな身体をベッドの上に伸ばして、どこか優雅な仕草で片肘をついてまるでアトランティスの帰還を待ち侘びていたかのような表情で男がこちらを向いている。
「遅かったな。どこに行っていたんだアトランティス?」
男の長い鼻先が言葉と共に上を向き、大きな口が笑みを刻んだ。
「待ちわびたぞ。」
すれ違いになったことを咎めれば良いのか。それともどれぐらいの時間ここで待っていたのかと問えばよいのか。
それよりわざわざ魔界のその奥の、地底湖を泳いでまで俺を尋ねてきた理由を問うか。
──さあ、なんと言ってやろうか。
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