もちこ
2025-03-08 12:44:18
1050文字
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龍は空高く(メモ)

以+龍の絵師パロ 雰囲気メモ
暗すぎる。ギスギスすぎる。
売れないが真似ることが飛び抜けて上手い以蔵さんと天才絵師の龍馬。

教えて欲しい。何を諦めたのか。

教えるものか。こんな心根を。

答えて欲しい。何故僕の手を、

答えるものか。飲み込んだ憎悪と後悔の数なんて。



散らばった沢山の紙と、指先、腕、顔とに墨が飛び染み込む。
好きだった。
絵を描くことが。
家族は無理をしてでも道具を用意してくれたし、にいやんの絵が1番だと弟は笑った。

でもまあ、狭い世界の話だった。一歩外に出れば自分の実力などそのへんによくあるもので。なんならそれ以下かもしれなくて。
いくらでも絵を描く人はいるわけで。
それでも、自分を信じて描き続けていた。

「以蔵さん!」

いや、それも難しいのか。

「ここにいたんだね!探したよ。ねえ、一緒に今日も写生に行こう。」

一番自分を絶望させる存在が、誰よりも近くにいたんだった。

「以蔵さん、僕ね、以蔵さんと絵を描くのが楽しい。」

ああそう。

「だから今日も以蔵さんが描いてるのを隣で見ていたい」

返事もせず先程まで広げていた道具たちの片付けを始める。

「今日はどこにしようか。以蔵さんは何が描きたい?」

なあんも気にしないでただ夢中で描けばいい。周りのことなんて気にせず。それだけなのに。

「楽しみだなぁ。以蔵さんの絵。」

思ってもないくせに。

こんな墨よりも黒く粘度の高い気持ちで何が描けるのだろう。それ自体をぶつければというがそれさえも己の技量ではきっと難しい。

自分は絵を描くのが好きだっただろうか。

どんな風に描いていただろうか。

「僕ね、以蔵さんの絵が1番好きだよ。」

「.....」

吸っていた煙管を逆さにする。

カンっと音をたて灰を落とした。

「えっ」

さっきまで描いていた絵の上に落ちた灰をじっと見つめた。

「ふーっ」

煙を吐き出し、煙管を片付け立ち上がる。

「待って!」

灰が落ちた絵を拾い上げ丁寧に畳み、仕舞うと駆け足でついてくる。


自分の方が間違ってるだなんて分かってる。

でももう綺麗事な言葉で前を向けるほど自分に余裕はなく、擦り切れていた。

「以蔵さん!」


お前はどこまでも空高く、ただまっすぐに上ればいい。

お前にはそれができるから。

だから自分の傍から離れてくれないか。

これ以上惨めな気持ちにさせいでくれないか。

黒く濁った自分のことなんてこれ以上分かりたくない。

「待って!」

自分を掴むその手がひどく綺麗で同じ手なのにこんなにも違うのかとそう思って、しわいとこぼして振り払った。