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まきわ
2025-03-07 23:31:31
3999文字
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わがまま
創後クロリン、先輩は仕事をしていて離れて暮らしています
教官がやや不安定です
ちょっとばかし自分でしてる時の表現がライトにありますが…18か?
ライノの花が咲いているのを見ると時々ふと気持ちが1205年のあの日に戻ることがある。
一人で迎えた春、彼を喪ったばかりの。
花を見上げてそんな気持ちになると、幸せなはずの今が全て夢であるかのような儚い気持ちになる。
彼が戻ってきてくれたことにも慣れて、離れていても少し寂しく思うくらいになっていたはずなのに。
急激に高まった不安と焦燥感でおかしくなりそうになって、それでも心配はかけたくないからなんとかそれを抑えに抑えてただ一言「会いたいな」とだけメールを送った。
それでも気持ちは落ち着かなくて、返事が来るまで何度もARCUSを開いたり閉じたりしていた。
ほどなくメールの着信を告げる音が鳴った。
『わりぃ、今長期の仕事が入ってオレドにいるんだわ。なるべく早く終わらせてそれから会いに行くから』
ぐ、と唇を引き結んで衝動で動きそうになった体を抑える。
いやだ、今すぐ会いに来て。
そんなわがままを衝動のままにぶつけそうになった自分に嫌気が差す。
クロウ相手になると時々他の人間には、恐らく家族相手でさえも出ないような子供じみたわがままを向けてしまうことがある。
クロウ自身はそれを気に留めていないし、むしろ嬉しいと言ってくれてはいるけれど今回のこれはどう考えても困らせるだけだろう。
必死に自分を叱咤し落ち着かせて、なんとか「わかった、無理しないでくれ」という当たり障りない返信を返した。
「楽しみにしている」という前向きな文字列はどうしても打てなかった。
通信を繋いだのじゃなくてよかった、咄嗟に何を言っていたかわからない。
リィンは大きく息を吐いて不安に荒れる心を整えようと試みた。
(こんなんじゃ
…
だめだ。剣聖だろうって老師にも叱られてしまう)
頭を振って、とにかく今日は早く帰ってしっかり休もうと心に決めた。
「はぁっ
……
」
腹にわだかまったような何かを吐き出したくて、その夜リィンは自身を慰めてみた。
できるだけクロウの手つきを思い出しながら、彼の触れ方を真似て自分自身に触れる。
そうしていると後ろも疼いてくるのだけれど、そちらを自分で慰める気にはどうしてもなれなかった。
そうしたら、クロウの感触が遠ざかってしまう気がして。
けれど抜かないわけにはいかないから、なるべくクロウが触れるのと同じように触れて、精を吐き出しきったところだった。
シャツのボタンを開けていたので露わになった腹の辺りに吐き出したものが飛び散ったまま、リィンはばさりとベッドに横たわった。
(なんか
…
あんまりすっきりしないな)
当たり前だけれど満たされた感覚もない。
余計に恋しくなっただけのような気がする。
(なんかもう
…
全部面倒だな
…
。どうせ朝稽古するんだし、シャワーは朝でいいか
…
)
気怠さに任せてそのまま目を閉じる。
眠いわけでもなかったけれど、何をする気にもなれなかった。
(冷たくされたわけじゃない、終わったら来てくれるって言ってくれたのに
…
これじゃ本当に子供のわがままだ)
自己嫌悪の思いがまた気持ちを重くしていく。
(眠ってしまおう。起きたら少しすっきりしているかも。明日になったらクロウに謝らないとな
…
急に無理言ってごめん、大丈夫だからって
…
)
とりとめなく考えている内に意識も沈んでいく。
精を吐き出した後の気怠さも手伝って、リィンはほどなく眠りに落ちていった。
夢を見た。
どんな夢だか具体的なことはわからなかったけれど、ただただ寂しくて昏い穴が空いたような虚無感があった。
どこかで冷静に「これはあの頃の気持ちだ」と想っている自分もいる。
クロウを喪って、もう二度と会えないと思っていた時の。
それはただの夢だ、今はもう大丈夫だからと冷静な自分が語り掛けるが、打ち沈んだ自分がそれを否定する。
『本当にそうなのか。それこそが、夢なんじゃないのか』
やめてくれ!と叫んだ瞬間涙が頬を伝い落ちていく。
溢れ出してきたものに耐えきれず声をあげそうになった時、なんだかふわりと暖かいものが被せられたような気がした。
変な話だけれど、意識の上にふわりと布団をかけられたような感じだ。
なんだかすごく安心してリィンはふっと力を抜いた。
「
……
ん
…
」
同時に意識が浮上してリィンは目を開いた。
寝起きでぼんやりした頭が寝室の天井と、額辺りに置かれた何かを認識する。
「え
……
?」
手だ、と思って一気に意識が覚醒する。
咄嗟にベッドの脇に視線を向けると自分の頭に手を伸ばした、見たかった顔と目が合った。
「
…
よ」
軽く、リィンの頭に触れているのとは逆の手を挙げて挨拶する姿に一瞬目を瞠り、そして飛び起きた。
「どうしてっ
…
」
かかっていた掛け布団がその勢いではらりと下がり、本来空気に触れるはずのないものが空気に触れる感触にリィンは咄嗟に視線を下げた。
「
…
っ」
一気に顔が熱くなって、反射的に掛け布団を持ち上げて『そこ』を隠した。
自身で慰めた後しまうことすら面倒になってそのまま眠ってしまったから、露出した状態のままだったのだ。
「あーなんだ」
顔を赤くして俯くリィンにクロウが気まずそうに頭を掻いた。
「そのままじゃさすがに風邪ひくと思って布団は掛けてやったんだけどな。そっちは下手にしまおうとして挟んじまったりしたら最悪の目覚めにさせちまうと思ってな」
軽く言いながらウィンクしてみせるクロウに気まずさも相まってリィンは拗ねたような顔を向けた。
改めて自分の体を検めてみるとシャツもズボンも開いたままになってはいるものの、飛び散らせたままになっていた精は綺麗に拭き取られているようだった。
「
…
その、綺麗にして
…
くれたのか」
あんなことをした痕跡を見られた気恥ずかしさに頬を染めながら呟くように聞くと、クロウは何でもない風に笑って返した。
「そりゃま、いつも後始末はしてるしな?今更ってもんだ」
体を重ねた後のこと言っているのだとわかってまた気恥ずかしいのと、それとは少し違うだろうと言いたくなったがそれよりも別の事が気になった。
「
…
どうしているんだ?仕事で来れないって言ってたのに
…
」
「ああ、必死に終わらせてきた。んで伝手辿ってなんとか今さっき着いた」
両手を広げて肩をすくめつつあっさりと言うクロウにリィンは首を傾げた。
「伝手って
…
」
「天の車。一度乗ったら二度も三度も同じだろってな」
「なっ」
クロウはまた悪びれもせずウィンクして見せたがリィンはさすがに少し慌てて身を乗り出した。
天の車とは七耀教会の限られた役職の人間だけが持つことの許されるメルカバと呼ばれる特殊な飛空艇だ。
二人の仲間の一人であるガイウスはその限られた人間の内の一人だが、普段から移動に使用しているとはいえ当然私用で乗り回すものではない。
「どうしてそこまで
…
」
したのか、と言うべきかさせてしまったと言うべきか迷ってリィンは俯いた。
その頭をクロウの大きな手がそっと撫でた。
「まぁ当然いつでもできるわけじゃねぇけどよ。それでもできる時にやらねぇのは違うと思ったからな。その時やれる事を必死でやる。二回目の人生もらった時に決めたことだからな」
だからメールを返した後、思い直して一気に仕事を片付けたのだという。
リィンは俯けていた顔を上げて真っすぐクロウを見た。
「適当に切り上げたわけじゃないよな?」
「そりゃねーよ。んなことしたら本末転倒だし、お前に限らずⅦ組の連中全員許しちゃくれねぇだろ。ガイウスだってそうだったら乗せてくれなかったと思うぜ」
まぁそうだろう、とリィンは思った。
信じてはいるけれど、きっとクロウがそこまで懸命になってくれたのは自分が返したメールに何かを感じ取ったからだろうと確信していた。
自分のせいで、クロウが選んだ仕事を二の次にさせてしまうのは嫌だった。
「夜までかかったがなんとか解決してな。んでガイウスに連絡して飛ばしてもらったってわけだ。
…
ま、ちょっと間に合わなかったみてーだがな」
最後少しおどけた口調で言ってリィンの腰辺りに視線を向けられて、何の事を言っているのか察してまた頬が熱くなる。
けれどそれよりも「そこ」にクロウの視線を受けて先程物足りないまま燻っていた熱が高まってきていた。
「
…
間に合わなく、ないよ」
「ん?」
呟いた言葉がうまく聞き取れなかったのか少し首を傾げたクロウに腕を回して顔を寄せた。
「
…
自分で触るんじゃ、全然満たされなかった。クロウじゃないとだめなんだ」
ねだるように囁くとクロウは目を瞠った後小さく瞳を光らせて笑った。
「
…
だんだん誘うのが上手くなってくよなぁお前」
そんなことない、と言い返そうとした瞬間、そのままベッドに押し倒された。
こうやってどこか獰猛さを含んだ紅い瞳に見下ろされると条件反射のように体が熱くなった。
同時に抑えていた甘えたい気持ちが堪えきれないほど大きくなる。
「
…
寂しいんだ、クロウ」
「ん」
受け止めるように頷いてクロウは優しくリィンの額に口付けた。
「遅れちまった分、溢れるくらいいっぱいになるまで満たしてやるからな」
「
…
うん。
…
クロウ、その
…
無理させてっんっ
…
」
謝ろうとした口を塞がれて、少し乱暴に口内を蹂躙される。
リィンの瞳が蕩けたのを見計らったようなタイミングでクロウは少し顔を離した。
「お前のちょっとしたわがままを聞く特権はお前にだって邪魔させねぇぞ?」
「
…
うん。ありがとう」
「ま、その分オレのわがままも受け止めてもらうしな。
…
愛してるぜ、リィン」
「もちろんだよ
…
俺も愛してる、クロウ」
クロウのシャツの胸元を軽く引っ張ってもう一度キスを求める。
その後は一気に燃え上がった焔のようにお互いを求め合った。
翌日一日中体が重たく痛かったが、少しも後悔などしなかった。
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