ナスカ
2025-03-07 18:25:54
5491文字
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打算から生まれた永遠、孤高への憧憬〜映画ウィキッド感想〜

今日(2025/03/07)から公開された映画「ウィキッド」の感想文です。

皆さんグッドハーブニング!ナスカです!

今日(2025/03/07)は映画『Wicked』を観てまいりました!!!アメリカをはじめとする諸外国では既に公開されているのですが、何故か日本は今日から! うーんだいぶ待ちました!!!

……と言うものの、長年Wickedのファンである皆さんほどでは無いと思います。実は私、Wickedを一度も見たことがないのです。劇団四季での東京公演チケットは買えず(ひどいサーバー落ちだった)、かといって大阪に行くのも関東住まいの私には大きな決断を要します。そこへ映画の話を聞き、まずは映画を見ようという考えに行き着きました。

勿論、オズの魔法使いは知っています。小学生の時に読みました。今でも風の強い日なんかは、『ドロシーのように家ごと巻き上げられてしまうのではないか』なんて考えてしまうほどです。

Wickedはそんな『オズの魔法使い』の前日譚。ドロシーによって倒される『悪い魔女』……エルファバと、『善き魔女』……グリンダの若き日の物語です。

二人の友情を描くことはわかっていました。しかし、これは前日譚。どんなに友情を深めようとも、『オズの魔法使い』の物語に続く以上、エルファバは死んでしまうし、グリンダはそんな世界で生きなければならない。楽しみな反面、約束された別れを突きつけられるのが怖くもありました。

まあ、ぐだぐだ述べるのはこの辺にして、感想に移りましょう!


物語は荒廃した城内を背景に、「西の悪い魔女が死んだ」という知らせが入るところから始まります。「少女がバケツに入った水をかけたところ、魔女は溶けて消えてしまった」……と。床にできた水たまりに浮かぶ、黒い三角帽子。カメラは城を離れ、崖を登り、虹を越え(オーバー・ザ・レインボー!)、「少女、かかし、ブリキのロボット、ライオン」を通り越して、エメラルドシティを映します。

シーンは切り替わり、子どもたちが「グッドニュース! 悪い魔女が死んだ!」と村を駆け回って朗報を伝えます。その言葉に、家にこもりきりだった大人や他の人々も飛び出して、『悪い魔女』の死を喜び祝うのです。

この時点で『どっちが悪なんだか……』という気分でした。『悪い魔女』の成り立ちを語る物語なので、まあそういう気持ちになってしまうのは仕方がないことではあるのですが……

そこへやって来たのは『善き魔女•グリンダ』 めっちゃふわふわピンクのドレスを着ていて、とても可愛いです。悪い魔女が死んだと彼女の口から聞いた人々は、改めて大喜び。けれどグリンダは、どこか悲しそうな顔をします。喜ぶ人々が多い中、一人の少女が『どうして悪い人はいるの?』と疑問をグリンダにぶつけました。グリンダは『いい質問ね』と答えつつ、『悪い魔女』の生まれ、そして『自分との縁』について語りだすのでした……

恐らくここまでがオープニング。四季の舞台で言うなら『オペラ座』の『オーバーチュア』、『ゴスレ』の『奇跡の夜』に、辺に相当する場面でしょうか。

ではここからは、『悪い魔女』になるエルファバと、『善き魔女』になるグリンダについて、序盤の流れを踏まえつつ交互に語っていきます。

まずはエルファバ。生まれつき緑色の肌ですが、それはどうやらお母様が飲んでいた『緑色の酒』が原因のよう。しかもお母様は浮気をしており、その酒はその相手と一緒にいる時にだけ飲んでいたようです(な〜んか暗喩っぽい……)
生まれつきは肌の色だけではありませんでした。強大な魔力も秘めています。その二つの要素から彼女は父親に疎まれ、乳母である熊(オズの世界で動物は喋るんです!)に育てられました。な、なんかもう人生がハードモードすぎる……

緑の肌は彼女のせいではないのに、近所のガキどもはエルファバをからかいの種にして、エルファバがそれに怒って魔力を暴発させれば近くにいた妹が怖がって泣いてしまいます。エルファバを庇ってくれるのは乳母だけです。彼女の味方はあまりにも少なく、そのことに腹が立ちっぱなし。あまりにも不快ですが(エルファバの身の上を丁寧に描写してるだけなんですけどね!)、それが彼女を応援する大きな理由にもなりました。

そんなエルファバは、エメラルドシティにいる『魔法使い陛下』に会い、『願いを叶えてもらう』ことを夢見ていました。けれどその先にある『確定した未来』を思うと、全く悲しくてなりません。

お次はグリンダ。いえ、実は彼女の名前は『ガリンダ』っていうそうです。え、知らんかった。
彼女はエルファバとは対照的に、両親から愛され、欲しいものは何でも手に入れることができる子です。魔法使いになるのを夢見て、オズの国にある『シズ大学』へやって来ました。

ところが周りの学生たちは青い制服を着ているのに、グリンダが身に付けているのはピンクの服!それだけではありません。彼女の所有物は、濃度の差はあれども全部がピンクピンクピンクピンク!!常に二人の取り巻きを側に置き、他人への態度もどこか上から目線。何より特別待遇を受けていなければ気が済まない、キラキラで明るくて周りの注目を集める。しかしあまりにも軽薄。はっきり言って私の嫌いなタイプです。

初対面のエルファバに対し「あなた緑色ね」「魔法使いになって、あなたの問題を解決してあげる」という、デリカシーが欠片もない言葉を投げまくります。腹立つなぁ。『グリンダ』じゃない他の誰かだったら一発で嫌い認定ですよ。まあこういう『ハイパー恵まれ系キャラ』は、欲しても手に入らないものを求め続けるという側面がありますので……。それが何なのか描かれていくのも非常に楽しみでした。

グリンダは教授の一人、マダム・モリブルに「是非是非先生から個人レッスンを受けたくて〜」とキャピキャピしながら接近。図々しいなコイツ……。けれどモリブル先生はあっさりとあしらい、グリンダとしては良くない気分だったでしょう。

さて、エルファバはどうしてシズ大学に来たのでしょうか。勿論、魔法を勉強するため……ではなく、入学する妹ネッサ(ネッサローズ)の付き添いでした。ネッサは生まれつき脚が悪いのか、車椅子に乗って生活しています。しかし入学を機に自立を望み、エルファバもそれを承知していました。けれど心配性の父親は『部屋に着くまで付き添え』と言うのです。エルファバは従わざるを得ないのですが、寮長にそれを横取りされて「離して!!!!」と叫び魔力を暴走させてしまいます。

せっかくの妹の大学デビューなのに、エルファバとしては「やってしまった」という後悔の念でいっぱいでしょう。それを収めたのはモリブル先生でした。エルファバの魔法を「自分のものだ」と言い、彼女を庇ったのです。それどころかエルファバを入学させ、ルームメイトになってくれる者はいないかと募りました。そんなことを言っていると知らないグリンダはモリブル先生に近づいたばっかりに、エルファバと同室になる羽目になります。

モリブル先生から「その力は才能だ」と言われたエルファバは、『the Wizard and I』を歌います。それまでずっと思い詰めたように眉を寄せていたエルファバは、一気に喜びを表面化させ、素晴らしいまでの歌声を披露します。『オズの魔法使い陛下』に夢を叶えてもらうにことを願っていた自分が、まさか彼と肩を並べられるかもしれない! そんな喜びが溢れた、美しい歌唱と表情。ここまでずっと声も固かった彼女。まるで別人のようでした。

グリンダとしては面白くない状況です。個室だったはずなのに相部屋になり、『可哀想な人』として見ていたはずのエルファバはモリブル先生から才能ある存在として期待されている。その期待こそ、グリンダが欲しくても手に入れられないものでした。

どう考えても相容れない二人。けれどこの二人は学校生活を通し、深い友情で結ばれていくのです。


さて、ここで他のことにもついても語りたいと思います。

印象的なのは、ダンサーさんの多さでした。この作品は舞台発祥のミュージカル。その場の全員が踊る仕様になっております。圧倒的人数の多さ!!!! 東奔西走してダンサーを集めたのだろうという、目を見張る人数です。これ、練習にめちゃくちゃ時間かかっただろうなぁ。カメラワークも素晴らしかったです。

また、とても驚いたのは『One short day』でイディナ・メンゼルが登場したこと! 見たことある顔してんな〜聞いたことある声だな〜。……イディナ・メンゼル!?!?!?? エルサの!?!??!? 彼女がブロードウェイの舞台役者であることは知っていました。けれど映画の方で出てくるとは!!! 彼女は舞台の方でエルファバを演じた経験があります。イディナ演じる舞台女優がエルファバに優しい眼差しを注ぐ、ほんの短い時間がとても美しいものに見えてなりませんでした。
イディナと共に舞台女優としてもう一人登場するのですが、そちらの方はクリスティン・チェノウェス。彼女は舞台でグリンダを演じた経験をお持ちです。二人のグリンダ、二人のエルファバがワンカットに映っているなんて豪華すぎますね!


ではこの辺りで、今回副題にしている『打算から生まれた永遠』と『孤高への憧憬』について語っていきます。

まず『打算から生まれた永遠』とは、私が抱くグリンダへのイメージです。

それが強く印象付いたのは、フィエロ王子が学生たちを『スターダスト』というキャバレーに誘ったくだりです。二人の間に確かな友情が芽生えた、素晴らしい一場面です。グリンダは、自分から見たら『冴えない男』であるボックにダンスに誘われてしまいます。面倒なので「座りっぱなしで可哀想だからネッサを誘ってあげて。そういう人が好きなの」みたいな言い方をしましたが、それは彼女に大きな幸運を引き寄せました。
ネッサは姉であるエルファバに「グリンダは優しい子だよ。私にダンスの相手を作ってくれたの」と報告。エルファバはそれに感謝を示すべく、モリブル先生にグリンダへ個人レッスンを付けてほしいとお願いしたのです。

グリンダとしては、打算でしかありませんでした。言ってしまえば、ボックの相手をするのが面倒だからネッサに押し付けただけ。
そしてキャバレーに『おかしな恰好』で現れたエルファバ。奇妙なダンスと恰好を皆嗤いますが、グリンダは「嗤われても平気なふりをしているだけ」と見抜き、エルファバの前に立ち、同じ踊りをし始めます。それを見た周囲の学生たちも、エルファバに嘲笑ではなく、温かな笑顔を向けるようになったのです。
それはきっと、グリンダからの心のこもったお礼だったのでしょう。
グリンダは、打算で動いた結果、永遠に変わらない大切な友人を見つけたのです。

続いて『孤高への憧憬』とは、エルファバに対して私が抱いている感想になります。

キャバレーでの一件からエルファバは大学内での人気を高めていきます。彼女の魔法の才能は、とうとう『オズの魔法使い陛下』に認められ、エメラルドシティの宮殿へお呼ばれされました。グリンダにも来てほしいと、二人はエメラルドの汽車に乗って大学を離れます。
しかしそこでエルファバを待っていたのは、あまりにも残酷な真実でした。けれどそれがエルファバを輝かせていると言っても過言ではありません。

オズの国では、大旱魃による食糧不足が問題になっていました。それの原因として槍玉に挙げられたのが、『動物たち』でした。共通の敵を作ることで、人々の結束を図る。ぶっちゃけ卑劣なやり方です。けれど短期間でできる、確実な方法でもあります。嫌なことですけど。
動物たちを弾圧には強大な魔力が必要。けれど『オズの魔法使い陛下』は、魔法の力を一切持っていません。エルファバは、その強大な力を『動物たちの弾圧』に利用されるところだったのです。

エルファバにとって『動物』は大切で対等な存在。乳母の熊をはじめ、山羊のディラモンド教授。何より、不当に言葉を奪われ、閉じ込められる姿に自分の境遇を見出したのでしょう。それを征服する側に回るなど、エルファバが受け入れるはずがありませんでした。

観た人が皆『エルファバ』に憧れるわけです。観た人は皆、『エルファバは自分だ』と思ったことでしょう。抑圧、自責、ありとあらゆる辛いことに雁字搦め。それは人間社会という、人間である以上離れられないしがらみです。エルファバはそこから自ら離れ、自由となり、孤高の存在になりました。それを叶えられるだけの力と覚悟を持っています。

私たちは皆エルファバであると同時に、グリンダでもあります。西の空の彼方に消えたエルファバに対し、グリンダは不本意なことに彼女に付いていけませんでした。結局は社会の中で生きなければいけなくなった、孤高でいられない我々はグリンダです。

私たちが手に入れようとしても、どれだけ手を伸ばしても、得られないもの。だからエルファバは輝いて見えるのでしょう。

他にも語りたいことあるんですけど、とりとめがなくなってしまうのでこの辺りで終わりにしようと思います。パート1と書いてあったので、「パート2は!??!?」って感じなんですけど、どうやら今年の冬に公開されるようですね。また待たされるのかって感じですけど、それを楽しみにしていこうと思います。

それではまたどこかで!