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せいたろ(sitr)
2025-03-07 08:36:31
3580文字
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レポート
ゆず(前作)から1日あけました。
伊仙 仙伊 リバ 伊視点
新しい濡れ場ないけど前回の引用がある
成人向
※他の男の存在が仄めかされます。
※交際せず行為に及ぶ描写があります。
転載・改変禁止
「う〜〜ん
…………
」
紙束を前に唸ってしまった。ひと通り書いたレポートを読み返す。
目論見どおりの展開だった、途中までは。
陰間や遊女のふりをするより演技力に関わらなそうだと思って、按摩師や整体師のような施術を含む仕込みにしたのは良かった。レポートの出だしも清潔だし、仙蔵も感心していた。
もっと清潔なまま事が進むと思っていたが、想像とは違う展開になった。考えていた段取り通りではあったけれど、理性が全く足りていなかった。
もっと俯瞰できると考えていたし、もっと身体の反応に重きを置くつもりだった。お互いに忍を志す学生で同級生だ。忍者の三禁には「欲」も「色」もある。コントロールできなければいけないのに、夢中になってしまった。レポートは都合のいいようにまとめてしまうしかない。
仙蔵との距離は、幼い頃から近くはあった。上級生にいじめられて泣きながら布団に篭ったとか、まだ低学年のころに山賊に追い回されて命からがら廃屋に隠れながらとか、そういう『心が危機に震えている時』に、仙蔵は自分を抱いて、あやすようにずっと背を撫でてくれた。そのまま頬を擦り合わせて、抱き合って、唇を触れ合わせるのは、ごく普通のことだった。
仙蔵が傷ついたときにはその役目を自分が持った。町娘に扮した学外演習の帰り、野盗につけ回されて小袖を裂かれた仙蔵の手を握って学園に逃げ帰った。もう追ってきていなかったけれど、不安で門をばんばん叩いて、開けてもらえるなり転げ込んだ。ぎゅっと抱き締め合って一緒に泣いた。怖かった、気色が悪かったと、仙蔵の細い二の腕に残った男の手指型の痣をそっと手当して、頬擦りと口付けをした。小柄だった低学年の僕たち。『やればできる』他の4人には本質的な部分をわかってもらえない。歯痒い心は僕たち二人の共通認識だった。
恋とか、娶ろうとか、そういうものではなくて。
仙蔵はただ思うままに意見を述べて、叱って、理解してくれて、大切に甘やかしてくれる、似た痛みをわかってくれる存在だ。だから尽くしてみたかった。優しくほぐして、身体を開いて、内側の全部に触れてみたいと思った。奇しくも思ったことの総てを試せる機会が宿題として出たのだ。
こんな宿題が出たことに、『力不足』の烙印をおされたことに悔しさがないわけではない。ただ、6人が顔を突き合わせてこの話をして、この宿題が自分と仙蔵だけに出たとわかった時、ほんの僅か、嬉しさを感じたのを今でも思い出せる。
恋とか、娶ろうとか、そういうものではないけれど。
大手を振って、他の4人が知るところで、彼を暴くことができる、自分の身体を開いて見せることができる。
二人ぼっちになることを、
ひととき独占できることを、
それを周囲が把握していることを、
僕の心は喜んで、得意になっている。
閨でのことが、どれもこれも鮮明に思い出せる。
気持ちがレポートにのっていないか、何度も読み返す。
このレポートはあくまで『閨での立ち振る舞いや実施できる手技を書き連ねたもの』にしなければいけない。
幾度か受けた手技の好きだったものを一つ一つ選んだ。閨で最後までことを進める、その手段や手順を書いた。仙蔵を、宿題を大義名分にただ一度、訳がわからないくらい溺れさせる。僕の知る手技。手練手管。
ただ、自分の胎があんなに疼くと思わなかった。
お互いに宿題があるとはいえ、一晩に相互に抱くことになると思っていなかった。言われたから支度はしたものの、自分のリードでその夜は終わると思っていた。触れているのはこっちなのに、触れるごとに乱れる仙蔵の吐息に自分が重なった。意図通り身体をひらけていく事に感動した。その姿に当てられてしまった。
最初は色を感じさせないようにした。
清潔な空間、匂い、健全な触り方で。
手技に安心したら、少しずつ期待させるように。
雪のように白い肌が、布団に溶けて消えてしまいそうだと思った。
その肌が熱を持って、
寒さでじわっとたっていた鳥肌が温かく馴染んでしけって、
僕の一挙一動を待っているのが、堪らなかった。
僕は宿題にかこつけて、この世で一番綺麗なものをまさぐらせてもらった。
時々乱れた息を吐いて、困ったように眉を寄せた仙蔵。足の小指を口に含んでしゃぶったら、半纏の裾をぎゅっと握っていた。足の指の股の、中指と薬指の間を舐めたとき、鼻裏で小さく声を上げていた。くるぶしからつうっと足首を舐め上げた時、ふるっと内腿を震わせていた。
仙蔵。
もう按摩じゃないよ。
僕がしてることは、いやらしいことだよ。
言葉にはしなかった。堪えるような、期待に満ちた瞳を僕に見られるだけで、きっと彼には十分だろう。
白い脚をもっと舐めたくて、寝巻きの裾を開かせた。滑らかな肌を揉み上げた。緩く勃起しているのが視認できた。綺麗で完璧で清らかな仙蔵が、僕の指で、僕の舌で、性的に期待して身体を火照らせていた。
なるべく丁寧に、素直な気持ちを選んで発した。
「綺麗でかっこいい仙蔵が、僕のする事で、ちゃんと大きくなって、嬉しくて
……
」
僕を見て、僕のする事でいやらしい気持ちになって、その気になって、
僕の舌に発情して、
ああ。
「食べちゃいたいな
……
」
僕はあの時、同級生に籠絡して、欲情して、汁を垂らした。
浅ましい。
きっと僕の本質は浅ましい。
本当は同級生だからと手放しで赦してもらえるような存在じゃあない。
忍として教わっているからこの僥倖に出会えただけで、町人や農民だったらあんなに綺麗な身体を抱くことはきっと無かった。絶対に最後まで進めたかった。できる全ての事を試して、絶対にこの手で絶頂して欲しかった。
目をつけた獲物が疲れ果てるその時まで追い回して、諦めたその身体を噛む狼。
目論見を超えている。
僕はこんな浅ましい自分を出す気はなかった。
この浅ましさが、ひと嗅ぎも漂いませんように。
「伊作。部屋にいるか?」
「わっあっ!はいっ!」
仙蔵が部屋に来て、文机に散らかった僕のレポートを一瞥する。
「随分書いたじゃないか。捗ってるな。」
そっと歩いてきて覗き込む。
「仙蔵は、もう書けた?」
「まあな。しかしやや味気ない感じだ。あんなに良かったのに書けないものだ。」
どっと心臓が鳴る。
「した事と効果に絞ったら、そうなるよ。」
努めていつもの調子で言う。
仙蔵は膝をついて、僕の背中側からするっと両腕で僕を抱き締めてきた。しなやかな猫が甘えるみたいに、長い腕がするんと絡む。
「なあ。伊作はどう書いた?」
耳元で優しく囁かれて、息を飲む。
色っぽくからかわれているのか、それとも。
間近な仙蔵に顔を向ける。すぐ唇の端が触れて、仙蔵も屈んでくれて、優しく口付け合う。仙蔵がちろっと舌先を出して、それを軽く吸って、舐め返した。
「
……
ん、時間経過とか、こういうふうにして、どんな体調の変化が見られたとか
……
」
「私がどんな声を上げたとか、どう言ってきたとかは?」
「か、書かないよ
……
」
また口付け合う。舌が絡み合う。
「どうして
……
?筆が乗らないか?」
「ううん、
……
宝物だから
……
」
ふっ、と小さく笑い声を漏らして、近すぎて見えないけれど仙蔵は機嫌良く表情を緩めているはずだ。頬を擦り合わせて、本当に、上等で大きな猫みたいだ。
「私も。伊作が私に囁いた事、勿体無くて書けなかった。」
身を捩って、仙蔵の腕の中向かい合う。腕を伸ばして腰を抱く。また唇を吸い合って、舌を絡め合う。仙蔵はくすぐったそうに笑って、触れ合わせた唇の狭間で楽しそうに声を漏らした。
「初めてをくれたのか、と、昨夜も反芻したよ。」
仙蔵の手のひらが、僕の頬を撫でる。指先が耳たぶをくすぐる。
僕に言って、僕が喜ぶって、どうしてわかるの。
きっと今、だらしのない顔をしている。嬉しくて気持ち良くて、もっと触れ合いたくて、耳がじわじわして、体温が上がってきていて、どうしてもまたその体に触れたい。挿れて、挿れられたい。お腹の中にお互いの子種をしまって、睦み合ってまどろみたい。
「レポート、
……
終わってる?僕たち
……
」
きっと肯定する。
よく書けた、色々な事を試せた、良かったな、ありがとう、そう仙蔵が答えて、この僥倖はおしまい。
でも、この嘘に、もしも乗ってくれるなら。
僕と一緒に嘘つきになってくれたら。
もう抱き合うだけじゃあ物足りない。
口付けだけじゃ満ち足りない。
「大変だ、まだだな。期日が迫っている。伊作、今夜は都合つくか?」
少し芝居がかった仙蔵の声を聞いて、意味を考える。破裂しそうに心臓が騒ぎ立てる。ぎゅっと抱き付いて、真っ赤になってしまう顔を仙蔵の肩口に隠した。
ひとつ頷くので精一杯だった。
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