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望月 鏡翠
2025-03-05 23:52:59
915文字
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日課
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#1650 「夢の中」「アイマスク」「語る」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題噺
安楽椅子に沈み込む体は、胸だけが規則的に上下して心地良さそうな寝息を立てている。部屋の電気がついたままだが、アイマスクをしているから寝苦しくはないのだろう。
目覚めるのを待っている間、家でやることが諸々あるから電気をつけたままでいてくれるのはありがたい。一度声をかけてみる。返答はない。
返事がないことを確認してから、私は喋り始める。
寝物語にしてはあまりにも物騒な話だ。
近頃起こった未解決の殺人事件。
遺体発見時の状況と、司法解剖の結果。そして事件関係者たちの情報。
それらを寝ている男に語り聞かせる。そうしていると、血生臭い話に寝苦しくなったのか、寝ていた男が身じろぎした。
即座に事件資料を片付ける。民間人に聞かせるないようではないからだ。
アイマスクをずらすと、疲れた顔の男性が椅子から起き上がった。
「きてたんだ」
コーヒーとお茶どちらがいいと口にしながら、立ち上がる。
その方を掴んで安楽椅子に押し戻す。
「あなたに用はないので、寝ていてください」
眠気を覚ますコーヒーなんてもっての外だ。もっとリラックスしてゆっくりと眠っていてくれなければ困る。
はちみつ入りホットミルクあたりがいい。
「ええ、冷たいよねぇ」
不服そうな顔をして、男はブランケットを膝の上に乗せ椅子に再び体を沈める。
温かい飲み物を飲み、そして再び男はアイマスクをして寝息を立て始める。そうしてしばらく時間が経つと、彼は語る。
目が覚めたわけではない。ただの寝言でしかない。内容は先ほど語り聞かせた事件の内容だ。
人間は寝ている間、夢の中で記憶を整理するのだという。彼もそうして、聞かされた情報を無意識に頭の中で組み直し、犯人を推理するのだ。ならばその頭のキレを起きている間にも生かしてくれないかと思ったのだが、てんで駄目だった。
起きているときの男は、冴えないライターでしかない。いつも疲れ切って、仕事部屋の安楽死椅子でそのまま眠っている。簡単なクイズですらも答えられないぼんくらになってしまうのだ。
名探偵は夢の中にしか現れない。
だから私は寝ている間に彼に事件を語り聞かせ、事件を推理させる。
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