左馬刻は簓の作るカレーをいたく気に入っている。市販のカレールウを使った至って普通のカレーである。簓にとっては左馬刻の、凝りに凝ったこだわり抜いたカレーの方がよっぽど美味いと思っているのだが、そりゃあ俺様の作るもんはなんでも美味いに決まってんだろ、当然のように言いながらも簓のカレーを所望する左馬刻なのだった。よくわからないスパイスの瓶がズラリと並んだキッチンとひと目で普段料理をしないであろうとわかる自分のキッチンを比べながら、簓はカレーを作る準備を進める。材料はパッケージに書いてあるレシピ通りに揃える。手順もしかり。市販のルウにこだわりもなく目についたものを買っていたが、最近はお気に入りができた。中辛でもメーカーやブランドによっていろいろあるのだ。何か変わったことをしているかといえば、ソースを隠し味に使っている。とんかつソースとウスターソースを目分量で入れている。一度これで奇跡的に目を見張るほど美味いものができて、左馬刻も驚いていたが、目分量のため何をどれくらい入れたのか覚えてなく、その味に二度と会えていない。美化しすぎているかもしれないが、その味を求めてカレーを作っているふしもある。今回もまた、再会は叶わなかったようだ。
「うーん、あん時と今何が違うんやろ」
首をひねる簓をよそに、人参を避けた至って普通のカレーを左馬刻はすでに二回おかわりしている。
「愛情の量!とか?簓さんの愛情めいっぱい入っとるけど入れすぎたらあかんとか!?」
なーんてな!とわははと笑えば、もぐもぐと頬を膨らませながら「そこじゃねえだろ」と大真面目にツッコミを入れる左馬刻を、簓は愛しているのだった。
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