moto
2023-08-29 15:21:32
973文字
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アルバイト事情

さまささワンドロワンライお題「汗」

合歓がアルバイトしたいってよ、と苦虫を噛み潰したような顔で左馬刻が言う。どこで?カフェ?ああ、あそこか、オーナーさんも店長もええ人やから大丈夫やろお前も知っとるやん、客?まあお客はなあ確かに選ばれへんな、変な虫つかんように見張るとかやめとけよ、合歓ちゃんに嫌われるで。それでも難色を示す左馬刻に、自分も学生んときアルバイトしとったやろと聞けば、なんとスーパーのレジ打ちをしていたと予想外の返答があり、簓は身を乗り出した。
「えっほんまに?ピッピッて一個ずつ通していくやつ?お前が?ほうれん草80円てボタン押したりしとったん?」
「なんか詳しいな」
「俺もレジ打ちちょっとだけやったことあんねん。一個一個値段言いながらレジ通さへんかった?」
 レジの声真似を入れながら実践してみたが、左馬刻はしねえよとつまらなさそうに言う。ええ?ほんまに?架空のスキャナーを左馬刻の額に当てて、ピッ!左馬刻五百円、かーらーのレジにて半額!とボタンを押すふりをしても、ニコリともせずに煙草の煙を吐き出した。
「一回、」
「うん?」
「一回強盗が入ってきて」
「ブハッ」
 突然の物騒さに吸っていた煙草の煙に噎せる。げぼごほと咳き込む簓を気にすることなく、左馬刻は24時間営業スーパーの深夜帯に友達に会ったみたいなテンションで強盗について話し始めた。
「強盗て!おおごとやん!」
「あ?たまにあんだろ」
「ないわ!」
「まあ、その強盗がよ、俺様んとこ来てよ、深夜だから俺様しかいなかったからな。でけえサバイバルナイフ向けてきて、金出せつーんだよ」
「お?おおおお」
 今なら金を出せと凄まれて大人しく出すたまではないのだが、当時は左馬刻とはいえ高校生である。
「そん時、バイト始めてまだ二日目でよ」
「二日目で強盗にあったん!?」
「おー、まあ会う時は会うじゃねえか」
「そんな会わへんやろ!」
「声でけえ」
「で?どないしたん」
「ナイフ突きつけられて金出せ言われても、レジの開け方がわかんねえんだわ。まあ二日目だからな」
「ファー!」
 引き笑いをして仰け反ったところに、「左馬刻さん!簓さん!大変です!」と部下が飛び込んできた。
「どうしたあ!」
「待て待て今手に汗握るええ所やねんけど!?」
「行くぞ簓ァ!」
「レジの開け方わからんでどないしたんやあ!」