moto
2023-05-06 23:31:20
1117文字
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シガーキス①

さまささワンドロワンライお題「シガーキス」

「ほらよ」
「おおきに」
 左馬刻の咥える煙草が近づき、簓の咥える煙草の先とくっついて火がともる。ふっと左馬刻が煙を吐き、ソファに座る。簓も習って隣に座るが、頭の中ではハテナマークが飛び交っていた。
 ほらよ、おおきに、とは言っものの。
 いや、待って待って?今の何?なんでなんで?
 自分は煙草に火をつけようとしてライターを探していた。結局見つからないまま、左馬刻がほらよと言うので、おおきに、と振り返った。ライターを貸してくれるのかと思ったら、そうではなく、近づいてくる左馬刻の顔。空気を読むのも人に合わせるのも得意な方ではあったが、まさかこれ程までとは。まさかのシガーキス。初めてのシガーキス。こんなん映画でしか見たことないわ。ハテナマークに支配されながらも、よどみなくミスもなくやり遂げた自分に拍手喝采である。
 簓は真剣な顔のままスマホの画面をタップした。
 シガーキス 検索
 たっぷり時間をかけて画面に映る文章を読み込み、そっとスマホを置いた。
 いやほんまになんで?どういうこと?
「おい、大丈夫か」
「うへっ!?なに!?」
 飛び上がった簓に、左馬刻も身を引いた。
「あー、すまんすまん、ぼーっとしとった、なんて?」
「まだ痛えのかよ」
 ぎゅっと眉間にシワを寄せて言い淀む左馬刻に、簓はなんのことかと首を傾げたが、左馬刻の視線から、殴られた頬のことを言っているのだとやっと気づいた。
「あ、これ?痛い痛い。おとんにも殴られたことないのに」
 冗談のつもりでへらへらと笑う簓とは裏腹に、左馬刻の表情はさらに凶悪になった。
「ちょっと待ってろ」
 奥の部屋とキッチンを往復して、左馬刻はアイスノンとタオルを持って戻ってきた。
「これで冷やせよ」
「あ、ありがとお」
 煙草を灰皿に押し付けて、タオルに巻いたアイスノンを頬に当てると、今になってようやくじんわりと熱を持っていたことに気づいた。途端にズキズキと痛み出す。じっとささらの様子を伺っている左馬刻に、冷たくて気持ちええわ、と笑いかけると、左馬刻の視線が逸れて、宙をさまよった。
「左馬刻?」
……怪我させて……悪かったな」
 ドスの効いた低音が簓の耳を掠めていく。それを打ち消すように大きく舌打ちして、左馬刻はまた煙草を咥えた。ライターで火をつける。
「フッ」
 たまらず吹き出した簓を睨みつけるが、何も言わなかった。
 心の開き方が、斬新やねんお前。
 なんて、おもろいやつ。
「やっぱり、お前しかおらんわ」
「あ?漫才はやんねえぞ」
「フッ、フフフッ、簓さんの武勇伝聴いてや」
……いいぜ、話してみろよ」
 頬の痛みも忘れて、簓は大きく口を開いた。