二度寝から覚めて、ベッドシーツやカバーをひっぺがし、洗濯機に放り込む。洗顔や歯磨きはすでに済ませていたので、部屋着のまま、洗面台の棚からハンディモップを取り出した。これむっちゃくちゃ埃取れんねん、と大絶賛し勝手に棚に入れられていたものだ。その実力を試す時がやってきた。モップを手にして左馬刻は玄関に向かう。玄関の棚には最初は何もなかった。それなのにいつの間にか小さな招き猫の置物がひとつ置かれてからというもの、その仲間たちが日に日に増えていった。レゴであったりガチャガチャのフィギュアであったり。その中で、一番の新入りは今年の干支であるうさぎだ。こいつはただのうさぎではなかった。片手に小判を持って片手は招いている、縁起の良いうさぎは笑っている顔がどことなく簓に似ていた。今、仲間たちはそのうさぎを取り囲んでいた。昨夜はこんなふうになっていなかったので、なんでだよ、と左馬刻は吹き出し、とりあえず置物たちを端に寄せて棚にモップを滑らせる。そのあと少し考えて、うさぎを真ん中にしてその他は横一列に整列させておいた。目ざとい奴はすぐに気づくだろう。
そこから、部屋中のテーブルや棚にモップを滑らせ、テレビの画面を拭いて電源を入れる。CMが一本流れたあと、賑やかな音楽とともに、一週間のエンタメ情報をまとめた番組が始まった。
「みなさんこんにちは!サンデーブランチ、今週も始まりました!」
司会者の明るい声が次々とレギュラーメンバーとゲストを紹介していく。
「ヌルサラこと、白膠木簓です!今週もよろしゅう〜」
アップになった笑顔を横目に、左馬刻は寝室から掃除機をかけ始める。ベッドの下からソファまで、丁寧に隅々まで掃除機をかけて、キッチンへと移る。テレビから時折聴こえてくる、簓の楽しげな声を耳はしっかりと拾う。シンクに残っている皿やマグカップを簡単にゆすいで、食洗機へと入れていく。フライパンやボウルも入れられるので大きいサイズにして正解だった。
「休日の朝食特集、いかがでしたか?みなさんいろんなもの食べられてますね〜。白膠木さんはどうですか?」
「俺も朝ごはんはしっかり食べますね。今日もいっぱい食べてきました!」
「そうなんですね。ちなみにパン派ですか?米派ですか?」
「ん〜特に決めてないなあ。今日はパンでしたよ。分厚いトーストに、卵三つ使てたかな、スクランブルエッグ乗せて、そこにマヨネーズかけたやつ。あれめっちゃ美味くて好きやなあ。サラダもちゃんとつけて、あ、サラダいうてもスーパーで袋で売ってるやつ!洗わんでええし今オシャレなやつありますよねえ。カフェに出てくるみたいなやつ、あれに玉ねぎとニンニクのドレッシングかけるのがまた美味くてハマってます」
弾んだ声で語られる内容にスタジオのメンバーは興味津々である。左馬刻は出しっぱなしになっていたドレッシングを軽く振って冷蔵庫に収めた。そろそろ買い足しておかなければ。
使い終わったコーヒー道具も元の場所に片付け、シンクを拭きあげる。あとは食洗機と洗濯機に任せておけばいい。
ひと仕事を終えて、ソファに座り煙草に火をつける。
「コーヒーもねえ、豆から挽いたやつで、むっちゃくちゃ美味いんですわ!」
ふ、と煙を吐き出した先で、最高の朝食やろ、と簓が笑いかけてくる。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.