moto
2022-12-24 23:50:46
1662文字
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マイ ディア ササ サンタクロース

さまささワンドロワンライお題「サンタクロース」「Dearest」

「やあやあ、簓さんのお帰りやで〜!」
 いつもの青いスーツのまま、サンタクロースの赤い帽子をかぶり、白い口ひげをたくわえた簓の姿を見て、左馬刻はわかっていながらも「なんだその格好」と突っ込まずにはいられなかった。
「何って、サンタクロースやんか」
 満面の笑みをたたえた簓に舌打ちする。
「なんでてめえはそんな格好してんだっつーんだ」
 午前に事務所に顔を出した時はいつもの姿だったのだ。昼過ぎに一旦出てくると行って、帰って来たらこれだ。簓は、それがなぁ、と言いながら両手に持っていたビニール袋をどさどさとテーブルに置いた。買い物にしても荷物が多すぎる。
「コンビニで煙草買って、一服してたら今日クリスマスで外でケーキ売っとってな、そこで次のバイトの子が来られんなったって店長が困っとってなー。高熱出たんやって。クリスマスやのに気の毒やわ」
 それで、繋ぎのためにしばらくケーキ売りを手伝っていたと言うのだった。
「どこほっつき歩いてんのかと思えば何やってんだてめえは」
「まあええやん、今んとこ暇やったし。短時間やったけど今まででいっちゃんケーキ売ったからな。さすが簓さんや」
 口八丁手八丁、騒がしくケーキを売りさばく簓の姿は容易に想像できた。
「そんでな、じゃーん」
 呆れる左馬刻の前に、ビニール袋からケーキの箱が二つ出てきた。
「お礼にってもろてきた〜」
 それに加えて、サンタクロースのまま道行く途中に、面白がったシマの連中に声をかけられ、惣菜やら果物やらいろいろ持たされたのだった。クリスマスだからといって、どこもかしこも浮かれすぎだろう。
「どーすんだ、こんなに食えんのかよ」
「クリスマスパーティーしようや、今日予定ない連中もおるやろ」
 事務所に残っていた部下たちが顔を見合わせて、何人か手を挙げる。
「ほらほら〜。左馬刻もおるし、十分や。ここに酒追加したら完璧やん」
「勝手に決めんな。なんで俺様が」
「合歓ちゃん友達とクリスマスパーティーするからおらんって言うとったやん」
「ぐっ」
「よっしゃ、クリスマスパーティー決定な!仕事ちょっぱやで片付けるで〜」
「ちっ」
「よかったなあ左馬刻、みんな一緒で寂しくないやろ」
「ああ?ぶっ飛ばすぞ」
「んはは、白膠木ささサンタはぶっ飛ばされませーん」
「サが多すぎんだろ」
「俺なぁ、いつか白膠木ささサンタいうてクリスマスイブに番組やりたいねんなあ。みんなに笑いをプレゼントするサンタさんや」
「なんだそりゃ」
「左馬刻、助手せえへん?トナカイでな」
 しねえよ、と即答する左馬刻に、簓はホッホッホッとサンタクロース笑いをして、冷蔵庫に入れてな、とケーキの箱を渡した。

相変わらず何も入っていない冷蔵庫に、ケーキの箱を収める。
 ここに来る途中、見繕ってクリスマスらしい惣菜やチキンなども買ってきた。冷え冷えとした部屋に、暖房を入れる。こたつのスイッチも入れて、身体を滑り込ませる。テレビの大画面では、CMが何本か流れたあと「白膠木ささサンタ」という番組が始まった。口ひげはなかったが、サンタクロースの格好をした簓がアシスタントと一緒に、クリスマスの深夜に一人で過ごす人々の話を聴きながらおもしろおかしくトークを繰り広げる。
 昨日、電話で話をしたが、会う約束はしていなかった。お互い仕事があった。年末まで忙しく、次会えるんは年明けかな〜と笑っていた。それでどうという事はなかった。話はこうやっていつでもできるし、ビデオ通話も可能である。それなのに、仕事が片付き、一服していたら、ふと思ってしまったのだ。
 会いてえな、と思ってしまったらもう止めることはできなかった。気づけば新幹線に飛び乗り、夜の車窓を眺めていた。こんなことをする自分を簓は笑うだろう。自分でも何やってんだと笑ってしまう。クリスマスだからって、浮かれすぎだろ。
 深夜に明るい簓の声を聴きながら、一日の仕事を終えた、親愛なるサンタクロースを迎える準備を、左馬刻はひとつひとつ考える。