毎度のことながらどういう原理かさっぱり分からないが、違法マイクで簓が二人になった。今現在の簓とイケブケロ時代の簓である。青いスーツを着た簓は左馬刻を見るなり、糸目を見開いて驚きを現した。え、俺より年上の左馬刻?前髪下ろしとったら幼く見えるなあ。それに加えて、かわええ、ときたもんだ。しかし、左馬刻に興味を示したのはそこだけで、今は簓二人で盛り上がっている。そのスーツめっちゃイケてるわ〜。そやろ〜オーダーは○○て店で。うそやんあそこの店でオーダー!?やるやん俺。お互いを褒めちぎっては、左馬刻にとっては全然笑えないお互いのギャグで爆笑している。さすが俺や。何回言うんだこいつらは。左馬刻を挟んで、左馬刻そっちのけで盛り上がっているものだから、たまったもんではない。両耳がうるさい。いい加減痺れを切らし、両手でそれぞれの簓の口を塞ぐと、案外素直にピタリと静まった。二人はそれ以上騒ぐこともなかったので、左馬刻はほっとして手のひらを外した。簓と簓は視線を絡ませて、にんまりとした。ほっとしたのも束の間、これは良くねえ、と左馬刻の直感が訴える。
「これは拗ねとるな」
「拗ね刻や」
「なんや、寂しかったん?」
「簓さんらに相手にされんと寂しかったん?」
両側から迫られて、左馬刻は歯を食いしばった。
「寂しくもねえし、拗ねてもねえ。両脇でピーチクパーチクうるせえんだよ」
「はい、拗ねとる〜」
「拗ね刻くん、構って欲しかったらそう言わな〜」
「寂しかったんやな〜。よしよししたろ」
「ぴーちくぱーちくってなに?かわいない?」
「どっちが?左馬刻が?俺らが?」
「だっはっはっはっ」
「あー!うるせえうるせえ!」
まとわりつく簓たちを振りほどき、左馬刻は「煙草吸ってくる!」と部屋を出て行った。
見送った簓が顔を見合わせる。
「あかんなぁ、わかってて、ついやりすぎてまう」
「俺らの悪い癖や」
人差し指と中指を立てて口元に持ってくる簓に「禁煙してんねん」と首を振る。
「ほーん」
ここは深く突っ込みにはこない。さすが俺や。
「さて、どうやって機嫌直させよか」
「ここはひと肌脱ぎますか」
「えーですねえ」
「俺、二人おるし」
せっかくなので、この状況は楽しまないと損である。好奇心が止められない。これも俺らの悪い癖や。
「「おーい、左馬刻〜簓さんらが慰めたるで」」
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