moto
2022-11-20 19:23:06
1260文字
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appetizer

さまささワンドロワンライお題「ソファー」

左馬刻が帰宅すると、簓はソファに横になって眠っていた。テーブルにはネタ帳が広げられ、マグカップとスナック菓子、煙草の代わりの飴が散らばっている。今日は仕事が早めに終わる日だとは聞いていたが、こいつ、ちゃんと飯食ったんだろうな。左馬刻は綺麗なままのキッチンと食べかけのスナック菓子と簓の寝顔を疑わしげに睨めつけた。
 シャワーを浴びて髪を乾かして戻っても、簓は眠ったままだった。クッションを抱きしめてすやすやと気持ちよさそうな寝息をたてている。左馬刻は冷蔵庫からビールを取り出して、テーブルの前に座り、ソファにもたれた。簓の寝顔の近くでプルタブを上げても、むにゅりと唇を動かしただけで、目を覚ます気配はなかった。愛用のどついたれ本舗のパーカーのフードをかぶり、ぎゅっと首元でちょうちょ結びをしている。フードをかぶっていると耳や頭が寒くないのだという。見た目は宇宙人みたいやけどな。本人はいたく気に入っているようで、楽しそうに笑っていた。
 フードから唯一出ている頬に手の甲を当ててみる。風呂上がりの左馬刻の手がぬくいからか、ひんやりしていて少ししっとりしている。風呂を済ませて、ちゃんとスキンケアもしているのだろう。前髪をつまむとまだ湿っていた。ちゃんと乾かしてフードをかぶれよ。糸目はしっかりと閉じられている。閉じているとよくわかる、意外と長いまつ毛を指先ではじく。左馬刻が眠っている時に簓がよくやることを真似してみる。お前のまつ毛、つまようじ乗るんちゃうか?簓が左馬刻の目元をまじまじと見つめながら言っていたことを思い出す。キスする合間に額を合わせてそんなことを言うのだ。こんなとこにつまようじが乗るわけねえだろ、と簓のまつ毛を触りながら思う。くすぐったいのか、ぎゅうっと力が入ったまぶたをなぞると、さすがに簓は目を覚ました。まつ毛が震えて、うっすらと現れた瞳が左馬刻をとらえるのをじっと待つ。寝ぼけまなこが左馬刻を見つけて、ゆるやかに弧を描く。
「さまとき……
 寝起きの、舌足らずな掠れた声で名前を呼ばれるのが結構気に入っている。返事の代わりに、ふ、と笑うと、簓も満足げににっこりした。
「おかえりぃ」
「おう」
 しっとりとした頬を撫でると、気持ちよさげに目を閉じ、熱っぽい息を吐いた。「いつの間にか寝てたわぁ」
「寝るんならベッド行けよ」
「んー」
 眠そうな目を瞬かせて、ええの飲んでるやん、とビールに視線をむける。
 いつの間にかビールはからになっていた。簓の寝顔を肴に飲んじまったと言えば、こいつはなんて言うんだろうか。一人笑って、お前も飲むか、と立ち上がりかけた左馬刻の腕を簓がつかむ。
「ええわ、その代わりベッドまで連れてってや」
「あ?重てえだろ」
「簓さんの中身綿やからいけるいける」
「いけねえわ」
「ほら〜左馬刻ぃ〜」
「乗っかるな!自分で歩け!」
「一緒に寝よや、左馬刻ぃ〜」
「しょうがねえ野郎だな。おらっ来い」
「引きずっとるだけやそれは!」
「うるせえ、寝るぞ」
「うははは」