簓は寝起きが悪い。毎朝アラームを分刻みでいくつもかけているし最終的にはマネージャーにモーニングコールをしてもらっているという。さすがに仕事ではそうぐずぐずはしていないが、オフの日などは気が緩んでいるのか朝まったく起きない。セックスした翌朝、抱き合って眠り、ふと目覚めてまどろみながらイチャつくということを考えてみればしたことがなかった。左馬刻が身じろごうが何をしようが簓が目を覚ますことはなく、朝を迎え、身支度を整え、朝食の準備も終えて、布団にくるまっている簓を起こしにいく。それでもなかなか起きずに覚醒するまでに時間がかかるのだった。
今朝も朝食の準備を終えて、いよいよ簓を起こす段になる。エプロンを放り投げて寝室に向かう。ベッドの上にこんもりとした山ができている。左馬刻はその山の横に寝転がり、添い寝するようにして布団ごと簓を抱きしめる。
「よお、そろそろ起きねえか」
左馬刻の囁きにもぞりと山が動く。
「朝飯できてんぞ。今日はフレンチトーストな。あとは焼けばいいだけ」
もぞりもぞり。
「アイスのっけるか。ハーゲンダッツのバニラ」
もぞもぞと簓の頭が現れる。それに唇を寄せると、う゛う゛〜と獣のような声が上がる。
「あ?」
呻いてる中になにか混じっている。頭に耳をくっつけると、「はぢみ゛づも゛……」と聞こえた。左馬刻はふっと吹き出す。
「おー、はちみつな。あと苺ジャム」
「ん゛ん゛ん゛」
もぞもぞと体がこちらを向く。頭の次に顔も出てきた。もう少し。普段もそんなに開いていないが、必死で目を開けようと奮闘している様子がいとおしく、左馬刻はいつも笑ってしまう。腕が出てきて左馬刻の首に絡みつく。ついに布団を剥がすと、左馬刻に抱きつく形になった。左馬刻が体を起こしても離れない。
「いや、無理だっての」
そう言っても無駄で、腕だけじゃなく足も左馬刻に絡みついた。そのまま前からしがみつかれている状態で寝室をあとにする。
簓を抱えたままソファに座り込む。また寝てしまったのかわからない。左馬刻の首筋に顔を埋めてじっとしている簓の髪や背中を撫でているうちに、ふっと簓が息を吐く。顔を上げて、額を合わせる。
「おはよお」
「はよ」
こうやって、一日が始まる。
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