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RINGO
2025-03-04 00:27:05
1653文字
Public
境界の灯
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境界の灯14
衝動的に体が動く。
モフモフは、フィオナの手首を掴み、そのまま引き寄せた。
小さな体が胸に飛び込むのと同時に、彼は迷いなく頭と腰に手を回した。
泣きそうなくらい優しい温もりが体全体に染み渡る。
彼女に、自分を刻み付けたいという思いとは裏腹に、今の彼は魔族の姿でもなければ、子狼ですらない。
エリオットという人間の身体だという事に、モフモフは胸がえぐれそうな程の悲しみと痛みを感じた。
そんな中、彼は先ほどから薄らと感じる気配に語り掛ける。
『
……
お前、さっきから意識があるだろう?』
その言葉に反応したのか、微かに胸が震えた気がした。
『
……
お前は俺にこんな事をして欲しくないだろ?
……
なら、はっきり「止めろ」と言えよ。このやり取りは相手に伝えようという気持ちがあれば、伝わるように弄ったからな。』
ここまでお膳立てする魔王もいるまいと、モフモフは内心呆れながら自嘲的に笑う。
自分が異物だという事はわかっていた。
だから、モフモフはエリオットの身体を使う時は、なるべく今後の生活に影響のない振る舞いを自分なりに心がけていた。
聞かれたら、答えるつもりだった。寄り添うこともできると、そう思っていた。
(
……
やっぱり、あいつみたいには上手くいかないな)
彼は、唯一の繋がりに顔を寄せる。
この身体になってから、ずいぶん鈍くなってしまった臭覚は、この距離でなら働くらしい。
フィオナの髪の香りが鼻をくすぐる。
「
……
ずっと、このままだったらいいのにな。」
半ば諦めたような溜息と一緒に、ぽつりと言葉がこぼれた。
まるで朝起きたばかりの、ぼぅっとした心地で勝手に流れる景色を中から眺めていた。
いつから見えるようになったのかもわからない。
瞼がいつ落ちても不思議ではないような心許ない意識。
『
……
お前、さっきから意識があるだろう?』
語り掛けてきたその一言で、エリオットは完全に目を覚ました。
状況を確認すれば、自分の体が自分の意に反してフィオナを抱きしめている。
自分の指が、彼女の髪を優しく梳く度に心が乱される。
(やめてくれ!!
……
僕の身体で
……
やめろっ!!)
そう叫んでいるはずなのに、自分の声はモフモフには伝わっていない。
どうにもできない歯がゆさが、無力感に変わりそうな時に再び声が響いた。
『
……
お前は俺にこんな事をして欲しくないだろ?』
(あたりまえだ!!なんでこんな
……
)
エリオットは挑発するような声に怒りを感じる。
しかし、続く言葉は彼が思っているものとは大分異なっていた。
『
……
なら、はっきり「止めろ」と言えよ。このやり取りは相手に伝えようという気持ちがあれば、伝わるように弄ったからな。』
諦めたような声色で、まるで止めて欲しいとでも言っているような響きを持っていた。
(
……
フィオナに手を出すことが、目的じゃない?)
もし、その気があるならこんな事を言う必要はない。
(この魔族は、僕と話をしたい
……
?いや、そんなまさか)
エリオットの胸がざわつきだした。
モフモフの願いが本当にそうだとしたら、とエリオットは考える。
出会い方はともかく、その後はこうなった原因の魔法について知識を共有させたり、仕事中は声を掛けなかったり、挨拶をしていた気がする。
(まさか最初からこちらを見ていた
……
?いや、でも
……
そんな)
一方自分はどうだっただろうか。
彼が魔族だという事に固執して最初から見向きもしようとしなかったのではないか。
(
……
彼と、向き合わなきゃいけない)
そう思った途端、喉の奥が詰まるような感覚がした。
まっすぐに目を逸らさなかったモフモフに対して自分は逃げ続けていた。
その事実に後悔が募っていく。
モフモフに対して恐怖は、まだある。
しかし、少なくとも目線を合わせていた相手に対して、まともに取り合わなかったことは謝りたいとエリオットは思った。
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