とはり
2025-03-03 21:28:59
4252文字
Public ひめこは
 

【ひめこは】その涙には届かない【百合】

寄宿舎百合学園のひめこは(百合)

ひめこはの百合
こはく→司への片想い描写や百合という特性上登場人物が全員性別が変更してます ご注意

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以下、あとがき


いつぬいのえんじぇるセーラーが可愛すぎて寄宿舎百合学園すぎる、と滾ったらくがき
旧Twitterに投げたものが思いの外長くなりすぎたのでまとめるついでに加筆修正した
とはいえ、かなりアバウトに書いたので薄目で見てほしいで候

たまたまひなまつりだったのでこっちにも投げた


いつの間にか百合をしたためていて自分でも驚いた
片想い楽しい
学園の名称はなんともならなかった

加筆部分がほぼこはく→司の片想いで、前半分つかこはみたいになっちゃった
これはひめこは……?
いや、でも、終始ひめこはとして書いていて、ちゃんとひめこはが結ばれるハピエンを想定しているので(続きは書かないけど)これはひめこは
お嬢のこはに対する感情はどこまでいっても「可愛い分家の子」で、恋愛以上に発展しようもないもんで……

とかもにょもにょ言ってたら概要が長すぎるって怒られて、仕方なく後日譚を本文に移す羽目になった ままならぬ
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 世界有数の私立女学園『エレガント・スクール』通称ESには、見目麗しい女学生たちが多く在籍している。そこにはシスター制度という上級生と下級生がお互いが合意の上で契りを交わし、特別な絆で結ばれる制度がある。契りを結べるのは在籍中にたった一度だけ。
「絶対お嬢と姉妹になる……!」
 瞳に強い光を湛え、学園の門を見つめるひとりの少女、桜河こはく。彼女には目的があった。
 彼女がお嬢と呼ぶ、本家の次期当主である朱桜司とこの学園で姉妹関係を結ぶことだった。本家の朱桜家と分家の桜河家、両家の折り合いはそれほど良くなく身分の違いもあったが、司は親戚の集まりがある度に気にかけてくれた。年の近い親戚がこはく以外にいなかったことも関係していたかもしれない。こはくもまた、ひとつ年上の司に懐いていた。
 ちょうど一年前の春、司が学園の制服を身につけてこっそり会いに来てくれたことがあった。「素敵なuniformでしょう?」と、その場でくるりと一回転するとセーラー服の裾が春風にふわりと広がるのが、まるでドレスのようでドキドキと胸が高鳴って目が離せなかった。すごく、似合っていた。
「わしもお嬢と同じとこに通う!」
 司から聞かされた学園の特徴と、彼女が身を包む制服の魅力にこはくは思わず声を上げていた。こはくの言葉に司はくすくすと微笑んで「あなたの入学を楽しみに待っていますよ」と答えたのだった。
 それから一年、家族の説得と入学試験のための勉学と稽古を重ね、ようやくこの学園の生徒となれたのだ。司と同じ場所に通うことができる。入学してから寄宿舎に入ってしまった司とはこの一年ほぼ会っていなかった。節目の行事で帰省した司と数度言葉を交わしたくらいだ。けれど、同じ学園で過ごせば毎日顔を合わせることができる。家のしがらみもこの敷地内までは及ばない。好きな時に会って話ができる。それだけでも心がとろけそうなほど嬉しい。
 学園で司と再会し、姉妹の契りを交わして唯一無二の絆を結ぶのだ。こはくは溢れんばかりの期待に胸を膨らませ、学園と外とを隔てる大きな門をくぐった。広大な緑に溢れた学園の敷地は、こはくを期待を煽るように清々しい風で出迎えた。
 けれど、こはくを待っていたのは残酷な現実だった。しばらくして学園内で再会した司は既に上級生と姉妹の契りを交わしていたのだ。姉妹の契りは在籍中に一人一度限り。つまり司はこはくと契りを結ぶことはできない。
 それを知ってしまったこはくはその現実から逃げ出すように走り出した。校舎を飛び出して広い敷地内を無我夢中で走るうち、こはくは迷ってしまった。周りを背の高い木々に囲まれて、見回す限りの緑、自分がどこから来たのか道も分からない。そこにぽつんとひとりきり。森の中に迷い込んでしまったようだった。ここはどこだろう、そもそもここが学園の敷地内なのかも分からない。
 不安の広がる胸元をぎゅっと握りしめながら、明緑の繁る森をふらふらと歩いて行く。宛もなく歩くうちに、行く先に森の切れ目が見えた。その光を頼りに向かっていくと開けた場所に出た。
 目の前に広がる大きな湖とその向こう小さく見えるのは見覚えのある建物、校舎があった。どうやら走っていくうちに、反対側の岸までぐるりと回ってきてしまったらしい
 校舎を見ると他の生徒と契りを結んだつかさの顔が浮かんで、寂しさと怒りがふつふつと込み上げてくる。
 "入学を楽しみに待っている"と言った微笑みに、司もこはくと姉妹の契りを結ぶつもりなのだと、待ってくれているものなのだと勝手に期待していた。けれど、それはこはくの勘違いだったのだ。裏切られた、などと思う資格すらない。
 おしとやかさと凛々しさを綺麗に混ぜ合わせたミルクティーのような司の微笑み、記憶の中のそれが徐々に滲んでいく。"お姉さま"に向ける微笑みは昔馴染みの自分ですら知らない、慕情と憧れの輝きを湛えたとろけるような微笑みだった。それが自分に向けられることはないのだ。
 胸が痛くて痛くて潰れてしまいそうだった。司を求めてここまで来てしまった自分はこれからどうすればいいのだろうか。勝手に勘違いして暴走して挙げ句の果てに迷子になって、情けなくて悔しくて、心細かった。溢れてくるものをどう処理していい分からなかった。
 こんな風になってしまったのは司のせいだ。責任を取ってよ、ねぇ、朱桜の姉はん。
「っ、お嬢のあほ~~~!!」
 ぐちゃぐちゃになった気持ち全部、恨めしいほど爽やかな青空にぶつけた。



一方、上級生のHiMERU
 類いまれなる美貌と優秀な頭脳、まさに才色兼備。成績も素行も非の打ち所がなく、生徒のみならず教師からも認められている存在。入学した当初から数多の上級生から自分と姉妹にならないかと声をかけられたがHiMERUはそれを全てを拒否した。シスター制度なんて馬鹿らしい。そんなものに浮かるなど愚かしい。興味がなかった。
 けれどそんな態度を表に出せば角が立つ。完璧な成績を収めてここを卒業できさえすればいいのだ。できるだけ平穏な日々を過ごしたいHiMERUは、毎日のように受ける誘いを涼しい微笑みで全て躱してきた。誰の顰蹙も買わないように、けれど誰のものにもならないように。
 自室を出ればHiMERUに求愛する生徒たちが群れをなして話しかけてくる。HiMERUへのアピール、HiMERUを狙うライバルへの牽制、毎日騒がしくて鬱陶しくて仕方ない。HiMERUは静かに穏やかに生きたいのに。
 喧騒と品行方正な生徒を演じる日々に辟易として疲れを自覚する度、HiMERUには訪れる場所があった。
 宿舎や校舎から遠く離れた庭園、校舎から大きな湖を隔てた向こう岸は訪れる者がほとんどいない、静かな憩いの場所だった。
 入学して早々、姉妹勧誘の群れに巻き込まれたHiMERUは逃げた先でこの場所を見つけた。風のそよぐ音と小鳥の囀り、水面の揺れる音。自然が奏でる音と作り出す景色はHiMERUの心を優しく癒してくれていた。
 ここで今まで他の生徒に出会ったことはない。HiMERUだけが知っている秘密の場所だった。
 そのはずだった。今日この日までは。

「お嬢のあほ~~~!!」
 美しい静けさが吠えるような声で掻き消され、HiMERUは酷く落胆した。
 主要施設からは遠いとはいえ、学園の敷地内だ。この場所はいつか誰かに見つかるだろうとは思っていた。しかし、こんな大声を張り上げる風流のない粗暴者に見つかってしまうとは残念で仕方ない。よくもまぁそんな素行でこの学園に入学できたものだ。
 一体どんな人物なのだろうか、一目確認してやろう。一言文句でも言ってやらなければ、楽園を踏み荒らされた怒りは収まりそうにない。
 好奇心と恨めしい気持ちを抱えてHiMERUは声の聞こえた方へ足を進める。
 あの声は聞き覚えのない声だった。追い払ってもしつこく纏わりついてくる取り巻きの中にはいない人物だ。
 少し歩くと青々とした木々の隙間から人の影が見えた。
「あの子ですね」
 見つけたシルエットはやはり見覚えがなかった。取り巻きの一員にこの場所がバレたのではないと分かり、ひとまず胸を撫で下ろした。あとは一言苦言を呈して、ここにもう来ないことと他言しないよう釘を刺せばHiMERUの楽園はまたひとときの安寧を得られる。
「あなた、こんなところで何を」
 HiMERUが一歩踏み進めた拍子に茂みがかさりと音を立てる。岸辺に佇むシルエットが音に反応してぴくりと肩を揺らした。
 春の清らかな陽射しを受けた鴇色の髪がひらめいてHiMERUを振り向く。
「え……
 HiMERUの蜜色の視線の先に宝石がこぼれた。
 可憐なすみれ色から大粒の涙がぽろぽろと溢れ落ちている。それは光を反射して透明なパールのように煌めいていた。
 HiMERUは目に映った宝石に、自らの心臓がかつてないほどに高鳴るのを感じた。
 自分より一回り小柄な背を丸め、汚れなど知らなそうな滑らかな白い頬を濡らしている。
"その涙を拭いたい"
 胸の奥から強い衝動が込み上がってくる。抑えきれないほどの強い衝動。それに突き動かされるように数メートル先の宝石へ指先を伸ばす。
 一瞬目が合ったような気がして、そして彼女はすみれ色を大きく開いた。
「うそっ、ひと、おったん!? あ、わ、えろうすんまへんー!」
 HiMERUに気づいて飛び上がった彼女は、涙に濡れ赤らむ眦をごしごしと乱暴に拭いながら脱兎のごとく逃げ出した。あまりの速さに、追いかけようと思った時にはその姿はすっかり見えなくなっていた。
「彼女は、いったい……
 頭の中で、桜のように可憐な姿と彼女の震えていた声がリフレインする。
 嵐が去って静けさを取り戻したはずの楽園で、HiMERUの耳には早鐘をうつ自身の鼓動の音だけが聞こえていた。






















☆ ☆ ☆

以下、後日譚(メモ)

☆ ☆ ☆


翌日からHiMERUは桜河のこと探し始めるし(教師に取り入ってそれとなく新入生名簿とか見せてもらう)、偶然を装った出会いを演出する(桜河はあの日、涙を見られた相手がHiMERUとは気づいてない)
じりじりと距離を詰めて、桜河からの認知を得ることに成功したHiMERU
自分から姉妹の契りを持ちかけるのは周りの目とプライドが許さず、桜河から誘ってくるようにアプローチかけるけど、桜河は全然なびかないし
(美人で親切な先輩やなぁ、なんでわしにそんな構うんやろ)くらいにしか思ってない
「わしのことはええから、他の人ともお話したって。HiMERUはんと話したい人ぎょうさんおるんやろ?」とか言い出す始末
善意100%の桜河の言葉に嫌とは言えずに仕方なく取り巻き達に構いつつ、桜河をチラ見すると、その視線が司お嬢にじっと注がれていることに気づいて、寂しげに目を伏せるその横顔にあの日の涙の原因を知ってしまったり
この学園で幾度も見てきた恋慕と失恋のまなざし
愛しの子がそれを他人に向けていてひどく胸が痛んだ
拭ってやりたいと思った宝石の涙は深い失恋の傷痕だったと気づいてしまうHiMERUの苦悩と葛藤がこの先にあるのかもしれない

~閉幕~
☆ ☆ ☆