けーだい
2025-03-03 18:36:12
766文字
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台地にて

BotW8周年おめでとうのきもち

陽に照らされて草が輝いている。風に揺れる度白く波打つそれを眺めながら、ところどころ欠けて緑に覆われつつある石畳の階段を踏みしめた。その先にある、赤い屋根に立派な鐘楼を携えた大きな建物を見上げる。朽ちかけてはいるものの威厳を保ち続けているその教会に見覚えはない。けれど、何故か自分はここを知っているような気がした。
登りきって正面に立つと、扉のない入口からは草と苔に覆われかけた内部が見える。壁と天井の一部が落ちて光が差し込む向こう側、暗がりに聳える巨大な女神像が何も言わずにじっとこちらを見つめていた。
風と草の音だけがあるその静謐に足を踏み入れる。手前側は日陰にも関わらず妙に暖かな空気があった。草を踏む度青い匂いがして、随分長くここには誰もいなかったのだと思い知る。
奥まで進み、小さな像に囲まれた女神像を足元から見上げる。ただ静かに微笑むばかりの像はこちらを見てはいない。何を見ているのだろうと振り返れば、草の茂る礼拝堂の先、小さくなった入り口の向こうに城と青い空が見えた。
この女神像はきっと、この光景を見つめ続けていたのだろう。人が消え、朽ちていくばかりの世界を、ずっとひとりで。
(リンク)
脳裏にあの綺麗な声が響いた。呼ばれたわけではない。ただ思い出しただけのそれが、なんだか。
――あ」
壊れた壁の向こうから風が吹き込んで髪をさらう。それが何かの残り香を連れて行ってしまうのを感じて、思わず声が漏れた。
振り返ってもう一度女神像を見上げる。微笑みを讃えた像はなにも変わらない。多分、これからもそうだろう。何が起きようと彼女はここからハイラルを見ている。そうして、背中を押してくれているのだろう。
「行ってきます」
返事が返ってくるはずもないのに、そう呟いて入口へと戻る。
お行きなさい、と聴こえた気がした。