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haruon1018
2025-03-03 10:29:08
1621文字
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舟から上がって土手八丁
遊郭についてはあくまで一説を参考にしてます
「梅は咲いたか桜はまだか」
高杉は待ち人が来るのを今か今かと部屋に用意された格子窓から覗く。
マスターに無理を言って用意して貰った部屋は、なるほどかつて自分が遊んでいた里とは違う。
頭の上で結わえた髪が重い。
高杉の時代にも立兵庫が流行ったので真似してみたが華奢な首で全てを支えるのは難しく、ほつれ髪が目立つ。
本職とまでは云わないが阿国にあれこれとアドバイスをもらい、傾いた衣装を纏ってはみたが、鏡で見ても普段の姿と大して変わらない。
意外性がほしいのだと口を尖らせれば、ありきたりが一番だとため息をつかれた。
マンネリというわけではないが、森との関係になにかアクセントがほしいから高杉はこうして色々と支度をした。
バニーやメイドといった鉄板は森の好みではないだろうと、あれこれとそれらしいモノをチョイスしたが、ほーんと返事されたきり据え膳食わぬは男の恥と手は出してくれたが、驚いた顔も興奮し滾った顔も拝めなかった。
ボーイズラブというジャンルを嗜んでいるサーヴァントが描いている同人誌の中には、浴衣が着られない彼氏のために彼氏が帯を締めてそのままという展開もあるが、高杉は着物で生活していた。
ならば、古今東西男というのは酒宴が好きでそこには見目麗しい女性が付きものだと遊女の格好をしてみたが、果たして釣れるだろうか。
「舟から上がって土手八丁吉原へご案内」
「何で知っているんだよ
……
」
高杉だって正確にはこの端唄を生前聴いたことはない。
聖杯の知識で自分の創った都々逸が三味線で弾かれていると教えられた時の副産物だ。
「あ~聞いた」
誰とは云わないのは森なりの配慮だろう。
恐らくこの端唄を生前聴いているのは斉藤か永倉辺りだ。
「そう、それでどうかな図書室やらマスターの力を借りてそれらしくしてみたけど」
「こんなもんじゃねぇの、オレもあんまり知らねぇし」
森の時代にも遊里はあったが、どちらかと言えば辻君、高杉の時代で云えば岡場所や湯屋のような場所が多い。
かの豊臣秀吉が設置したという逸話もあるが、それも彼の晩年の頃の話であり森は知らないはずだ。
「今回もダメか、君があっと驚くようなシチュエーションを考えているのだがね」
「小舟よりかはマシだな、あんなもんに揺られたらテメェが酔うだろう」
「その手もあったか、まぁいいさ」
今日も喰ってくれるのだろうと高杉が手を伸ばせば、森は高杉の頬に触れた。
**
「マンネリ解消にはほど遠い」
ふうと高杉が前垂れをかけて台所に行く。
こういう時の森は優しく高杉を抱いてくれるので足腰が立たない状態にはならない。
それが良いのか悪いのかは別として高杉は兎に角、森に振り向いてほしいのだ。
朝寝の後は湯豆腐を食べるのが高杉の時代の通好みなので、用意をしてみたが森の体格では足りないだろうと考えてしまうが、これしか用意は出来ないので仕方なく部屋に戻れば森がぎょっと高杉の姿を見た。
「なんだよ、僕だって豆腐を煮ることくらいは出来るぞ」
「
……
」
紅い髪を結わえる途中だったのか森の髪はざんばらに落ちた。
気怠げな男の色香とはこういうものかと教えられ高杉はどうしようもない感情に躯が支配される。
「なんだ君らしくもない、固まったまま動かないなんて」
感情を押し隠すように話しかければ森がようやく口を開く。
「なんつーか、いいよなそれ」
森が指さしたのは前掛けである。
そういえば森の時代の町娘は前掛けをしていたなと思い出した。
「なんだよ君以外と鉄板ネタが好きじゃないか」
「あ、別に、夫婦らしくていいなと思っただけだ」
「めおと
……
」
さらりと云われた言葉に頬を咲き誇る梅の花のように染めれば森がカラリと笑った。
「それ喰ったら、オレの時代もっと教えてやるよ」
染めた頬をもっと紅くするようになぞられれば高杉がこくりと頷くしかなかった。
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