mikagami3
2025-03-02 21:59:12
5016文字
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ある日、二人の神様が来てくれて

リハビリとして短めの話を書きました。
Twitterで事前アンケートした結果、ZEROと04と6がほぼ同じ割合が伸び、また創作エースの一族にも少し票が集まった為、全部の要素を振りかけたものを。
円卓の鬼神とリボン付きの死神が、天使とだらだらおしゃべりするだけ。6主人公タリズマン視点。

「それで?どうしたの?」
 プラチナブロンドのイケメンがこっちを覗き込む。
 その隣で、黒髪の大人しめ美少年がドーナツを食っている。
 そのどちらも、俺の従兄弟であるらしい。知らなかった。
「えっと……
「叔母さんに言いにくいってことは、軍関係?」
 黒髪美少年も覗き込んでくる。なんだこいつら顔面偏差値高すぎだろ。
「まあ、そんな感じです」
「緊張してる?いいんだよ、そんなに硬くならなくても。従兄弟なんだし」
 円卓の鬼神はそう言って笑うが、こっちは笑う気になれない。
「気にしますよ……。円卓の鬼神とリボン付きの死神を前にするとあってはね」
「もう……昔の話だよ」
「僕だって、今そんなに空飛んでないもん。半分引退してるようなもんだよ」
 ねー?と二人が互いに顔を見ながら笑いあう。
 円卓の鬼神、サイファー。リボン付きの死神、メビウス1。
 その指先が世界を変えると言っても過言ではない二人が、俺の目の前でそれぞれコーヒーと紅茶を飲んでいる。
 肩身が狭い。俺は一介の平凡なパイロットだ。過分な賞賛を投げつけられてるだけの、普通の男だ。
 雰囲気の違う美形を交互に見比べ、その肩書が持つ圧倒的な力とはかけ離れた穏やかさを浴びながら、それでも背筋を冷や汗が流れる。
 この二人と戦って、勝てる気は全くしない。
「そう言われても。あとあんたたち、顔が良すぎる」
「君が言う?」
「すごい大きなブーメラン飛んできたねぇ。おばあちゃんそっくりの君に言われると、面白いね」
 肩を竦めながら、二人ともくすくすと笑う。上品。普段ガサツな野郎どもに囲まれてるから、どうしたらいいか分からん。
 もう、どうにでもなれ。
「教科書に載ってるようなパイロットが目の前にいりゃあ、真面目に勉強してパイロットになったこっちはビビるってもんだよ!しかも血縁、従兄弟だって?信じられるか!」
「まあ、親類世界中に散ってるしね」
「うちの父さんも一生懸命探してるよ。だいたいおじいちゃんのせいで。まだ見つけられてない親戚いるかもしれないって」
「マジか。お祖父様にも困ったもんだ」
「ね。すごく元気な人だったんだね」
「元気、ね。まあ、色んな意味でな」
 分かってなさそうなリボン付きに、今度は苦笑を浮かべて頷いている円卓の鬼神。
 頭バグりそう。
「あんたら、歳いくつだ?」
「俺は……えーと、いくつだったかな?50とかそのくらいかな?」
「はぁ!????50????その顔で!?」
 どう見ても30代半ば。真顔で冗談を言うタイプだったとは。
 うちの兄貴はもっと老けてるぞ???
 隣のリボン付きは不思議そうな顔で首を傾げて、鬼神を見上げていた。
「50とかってどういうこと?ランス兄ちゃん」
「この年になると、もう端数は誤差なんだよ」
……あんたは?」
「僕?えっとねぇ、38歳」
「一個下!?嘘だろ!せいぜい23とかだろ!?」
 水を向ければ、さらに信じられないジョークが飛んできた。
 俺今39なんだけど。え、ほぼ同世代の従兄弟なのか?この顔で??
 少し小柄なのも相まって、全く同世代に見えない。
 俺も割と言われるけれど。ゴーストアイと並ぶと、学生と中年のおっさんが歩いてるみたいって言われる。可哀想。ゴーストアイが。俺も中年のおっさんなのに。
「エドワードが言う?それ?」
「俺からしたら、どっちもせいぜい10代だけどな」
 俺とノリスが互いに童顔をなすりつけ合っている間、ランスロットは呆れた顔で頬杖を突く。
 あんたも相当な若作りだぞ……。これが何もしてない天然ものだって分かるから、なおの事おかしい。
 どうなってんだ、この二人。
「そこまで童顔じゃないけど!?」
「確かに、俺と一緒に歩くと同僚が職質されるけどよ
「身分証は絶対に忘れないようにね、エドワード」
 円卓の鬼神:ランスロットはニコニコしながら言う。たぶん揶揄ってる。分かんない。笑顔が優しすぎて普通に忠告かもしれない。
 リボン付きの死神:ノリスはぷんすこ怒っていたけど、一分もしないうちに怒りは引っ込んだみたいでクッキー食ってる。
 びっくりしすぎて、もうどうでもよくなってきた。
 なるようになれ。俺は悩み事は一つでいい。
……あ、あーのさ、二人とも、彼女とか、いる?」
「彼氏ならいるよー」
「彼氏彼氏!??!」
 めっちゃ気負わずにふわっと言うから、聞き流しそうになった。彼氏って言ったかこの人。
 びっくりして二度見した俺を横目に見ながら、苦笑したままランスロットがノリスに言う。
「あけすけだねぇ、ノリス。ほら、エドワードびっくりしてる」
「今の時代にびっくりすることなんて、あんまりないんじゃない?」
「人生で一番びっくり仰天し続けてる日だけどな、俺」
「そうみたいだね。見てて面白いよ」
「こっちはそれどころじゃねえけど??」
 軽く睨むと、相変わらず穏やかな笑顔で小さく声を上げる。ふふっ、とか、くすっ、とか、そういう笑い。
 貴族かな……貴族かも……なんかばあちゃんもやんごとない人だったって言ってたし。
「笑ってるけどさ、ランス兄ちゃんだっているじゃない。彼氏」
「は!!??」
 どんどん爆弾発言してくるな、この死神。
 他人のプライベート何でも言い過ぎだろ。さすがにランスロットも顔をしかめている。
「まあ、いるけど、彼氏って言われるとちょっと反論したいと言うかもうちょっと複雑な感じなんだよ」
「ああ、夫?」
「夫!!!???」
 言葉のナイフをより鋭くして来るんだけど。死神だからってやっていいことと悪いことがあるぞ。
 あんまりにも俺が大きな声を出したせいで、ノリスに苦言を呈する前に、ランスロットは俺を見て笑う。
「すごい表情するねエドワード。こっちだってね、今の関係になるのにとっても苦労したんだよ」
「そうだね。息子もいるもんね」
「息子!!!????えっ、ランスロットが産んだの?」
 産めそうだけど。
「違う!産んでない!!」
「あ、養子とかそういう?」
「実の息子!遺伝子上も俺が父親!!いやなんていうか、昔付き合ってた女性が、俺に黙って産んでたんだよ……。人工授精で」
………はぁ……?」
 情報が多すぎて噛み砕けない。硬い。保存食か??
 俺が混乱の極みにある中、ランスロットは青い目をキッと尖らせてノリスを睨む。
「ノリス。人のプライベートを断片的にぽんぽん出すんじゃない」
「ええ?仕方ないよ。だって、エドの聞きたいことって多分、そういう恋愛の話でしょ?パイロット同士の。それなら、ランス兄ちゃんが適任じゃないか。もうピクシーとは同棲してるんでしょ?」
「半同居って感じかな。あいつも仕事で方々飛び回ってるし」
「は?ピクシー……?か、片羽の妖精のことか?!?」
「あー、まぁ、うん。そう」
 困ったように笑う。困るのは俺のほうだ。円卓の鬼神に恋人がいて、それも同性で、しかもかつての二番機。信頼していた相棒だと。
 どうしてノリスも平然としていられるんだろう?伝説を聞いて育ったパイロットという点では、俺とこの人は同じはずなのに。
「エメリアのパイロットにもTACネームがバレてるの?そっちでもドキュメンタリー放送してたりする?」
「あ、うん……。さすがに顔は全部映ってないけど、TACネームとか当時のあだ名とかは、出た」
 それでもあんたは出てこなかったよ。どうやって隠れてたんだ?この目立つ外見で。
「やだねぇ。あいつ、世界中で身元がバレバレってことか」
「ピクシーってさ、名前変えないの?偽名名乗るとか、TACネーム変えるとかさ」
「何度か変えたらどうだ?って言ったよ。でも……なんか……言う度に、こう……口説いてくるから」
「んん????」
 口説く???何で???
 まあ、ドキュメンタリーの取材の最後の最後で、相棒への告白みたいな雰囲気出す人だからな。
 そう考えたら、この人とあの人がそういう関係なのも、無理もないか。逆に何も無かったらそっちのほうが違和感あるな。
 思い返すと、惚気かもしれねえな、あのインタビュー。やれやれ系彼氏っぽい。
 ……あのめっちゃ有能な片羽を振り回すパイロットが目の前にいるのか……。めっちゃ照れてるけど。
 照れ顔まで美人な男って本当にいるんだな。
「ごめんなさい。一回情報整理してもいい?」
「ああ、うん」
「僕もごめんね。いっぱい言い過ぎたね」
「いやぁ……反省してくれよ?」
「はーい」
「えーっとまず……リボン付きの死神は彼氏がいる、と」
「そう。戦争で僕を受け持ってくれた管制官。スカイアイって言うんだよ。本名は秘密ね」
「はぁ……またデカイ情報ぶち込んでくる……
 エリート捕まえてんなこの人。伝説の英雄の恋人としては妥当なのか?分からん。
 うちの管制官って言ったらゴーストアイだから全然イメージわかない。そっけないもん。
 愛想ないし塩対応だし。俺に。たくさん迷惑かけてるから仕方ないかもしれんが。
「えっと、円卓の鬼神は結婚してるし相手は片羽の妖精だ、と」
「今住んでるところに同性婚制度がないから、法律上はただの同居人だけど、まあそういう気持ちで暮らしてる。大切な人だよ」
「強すぎカップル」
「それ褒めてるのかい?」
「めっちゃ褒めてる」
 パイロットとしても強すぎるけど、この顔と並んで平気な顔してられる男なんて、男前に決まってる。
 顔面も強すぎるだろ。
「俺が言うことでもないんだろうけど、よく周りが許したな?」
「そうかな?僕なんかは早くくっつけって、父さんにせっつかれてたよ」
「俺は特に何も言われてないかな。俺の両親はもういないし、兄弟もいないから」
「えっ、あ、ごめん」
「気にするな。最近は親戚との交流も増えたし、賑やかな従兄弟たちが、まだ増えるかもしれないし」
 増えるのかー。いや、まだ増えるかも、だし。考えても仕方ないか。
「エドワード。ノリスの言ったことは合ってるのか?」
「えっ、なんだっけ?何て言ったっけさっき??」
 色々言われて忘れちまったよ。
 首を傾げて考えこんでると、軽くため息をついてランスロットが言う。
「相談。ノリスが、聞きたいことは恋愛関係でしょ?なんて突然言うから、また突拍子もないこと言って、なんて俺は思ってたんだけど」
「あー………。うん。そう。そういうやつ。困ってる」
 恋愛、なんて自分の口からは言えなかった。
 だって、よりにもよって、相手は……
「結局はエドワードの気持ち次第。なんて突っぱねるのは簡単だけどね。難しいから来たんだろう?」
「全部言ったほうがいいよ。僕の父さんに全部ばらされる前に」
「え?なんで?」
「さっき親戚探してるって言ったでしょ?今となっては父さんが一番祖先に近い人、一族の長老だもの。親戚だと思われる人間の周囲の環境含めて調べてるんだよ。何か大変なことが起こっても直ぐに分かるように。それで、もちろん、エドワードの周囲のことだって、調べはついてるよ」
「ぎゃああああああ!?」
 なんだそれなんだそれ!いや!恥ずかしすぎる!!!じゃあ、ここに来る時にはあのじーさん、伯父さん?には全部ばれてるのか!?ぎゃああああ!!
「穴掘って入りたい」
「他人の口から喋られる前に、自分で言ったほうが恥ずかしくないんでしょう?」
「その気遣いは俺にもほしかったなぁ?ノリス」
「ごめん。普段二人でいるときイチャイチャしてるから、もう恥ずかしいとか感じないかと思って」
「顔合わせしてない人間に対しては、こっちだって多少は心の準備が必要なの」
 わちゃわちゃとじゃれ合う二人を見ていたら、少し落ち着いた。
 そっか。こんな、生ける伝説みたいな人だって、恋の一つで右往左往するんだ、と。
 じゃあ、俺なんかがうじうじ悩むのは、仕方ないなぁ。
「なあ頼もしい従兄弟たち。聞いてくれるか?俺のコイバナ」
「いいよ!何でも言って?」
「何があったって、俺たちはお前の味方だよ、エドワード」
「わあ。本当に頼もしい」
 きらりと光る、晴れた冬空のような青い目が、とても優しい。
 二人の神様が味方になってくれるなら、何だってできる気がするぜ。