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望月 鏡翠
2025-03-02 21:37:04
963文字
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日課
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#1645 「赤ん坊」「とうもろこし」「小刀」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題噺
その赤ん坊は祝福と共に生まれてきた。
誰もがそれを待ち侘びていたのだ。今や貴重な食糧であるとうもろこしの粉と、苦い果実の汁を混ぜて作った着色料で、顔に模様を描く。
それは今となっては年寄りしか見たことがない儀式だった。自分が生まれたときにやってもらうことができなかったものたちはかつて存在したかもしれない祝福の儀式を、涙を流して喜んだ。
その民は、もう滅ぶことが決まっていた。里は閉ざされて、どうあっても逃れられない。唯一可能性があるのは、地下を流れる細い川から赤子を流すことだった。人が通ることができない細さゆえに、監視の目はない。ただし、途中がどうなっているのかもわからず、赤子を乗せた船がひっくり返ってしまう可能性もあった。
可能性が低い賭けだ。それでも、里に残すよりは生きていける可能性があるのだ。彼はもしかしたら、将来住む場所を亡くした民を救ってくれるかもしれない。
赤子を乗せる船にいられるものは多くなかった。鞘に掘り込まれた飾りは彼らにしかわからない絵に似た言語だ。そこには生き残るかもわからない幼い子供に向けた祈りと期待が込められていた。
しかし、運命は彼らを裏切った。
赤子は細い川を流れなんとか怯えることも凍えることもなく、再び日の目を見た。運良く岸にも流れ着いた。その先で彼らを拾ったのは、心優しい人などではなかった。逃亡中の泥棒である。
彼らは赤子の入った籠を見つけた。そこにたくさんの宝物が詰められていることを発見した。金持ちの家の子供がないかしらの理由で逃されたに違いない。そこから金の匂いを感じ取った。
彼らはまず、小刀や他のたくさんの宝物を懐に入れた。
しかしずる賢い泥棒を追い掛ける兵士たちは、川縁にしがみつく彼らを見つけた。矢を射かけられて、彼らは逃げていった。
後には、何者であるのかの情報を失った赤子が残された。
彼らは兵士に拾われて、子供を失ったばかりの裕福な家に預けられた。そこで愛されて幸せに育った。
しかし盗んだ泥棒の方は、どうなっただろう。彼らは長くは生きられなかった。そして彼らの子供は、亡国の宝物を持った状態で残されたことになる。
幸福を手に入れた子供と、血筋と関係ない運命を背負わされた子供は、数奇な運命を経て再び出会うことになる。
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