この自称芸術家様は手に職が付いて居る割に、口も器用に回る。なんで向日葵の絵を描きながら、衝撃が加わると耐えられずに折れた骨が体の内側から自らの皮膚を突き破って体外に出て来るのが意図し無い自傷行為のようで面白いとか言ってるんだ。絵も写実的なら言って居ることも事実だが、おそらく関係無い。
手を動かしながら話すから視線は手元に有るのだが、どんな話にも話始めは有る。そう言う、こちらに話し掛ける時や、話を振る、と言った時には、流石になのか意図せずなのか、こちらを向く。
そう言う時、堪らない気持ちに成る。
こちらが、この相手が絵を描く姿を眺めて居る距離が近過ぎるからかも知れ無いが、心臓が大きく瞬くような心地に成るのだ。
あゝ、こちらを見て居るな、と。
だから、意図せず。
「……へ」
視線だけで無く、お喋りな口がそれしか鳴き声を上げられ無い程の、驚きが音となされた。
「な、なに。なんです。」
「……こっち向いたから」
堪らなかったものだから、なんだ、と言われて返せる答えは持ち合わせていない。
「キスを待って居るのかと、思っ、て……?」
返事を続けてみたが、やはり不満気に溜め息をつかれた。
「な、何言おうとしてたか忘れちゃいました。」
そして少し項垂れた仕草をしたあと、のろのろと絵続きを描き始めた。相手はそこからはずっと黙った儘だった。それから静かな、絵を描く少しの摩擦音がするだけの時間だった。
けれど時々、何も言わ無い儘こちらを向くので、その視線に吸い寄せられるようにキスをした。待たせちゃ悪いし。
まあ、こっちは時々どころかずっと見てるんだけど。
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