ぐるさん
2025-03-01 23:33:54
1797文字
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3.1 ふみりかワンドロ 【ワガママ】

ふみりかワンドロライ(@ fmrk_1draw)さんの2025.3.1お題をお借りしました。

「理解、手繋いでいい?」
「繋ぎながら聞かないで!」
 
「理解、抱き締めていい?」
「聞く前に抱き締めないで!」
 
「理解、キスするね」
「せめてこっちの許可をとってから唇をつけろ!!」
 
◇◇
 
 休日の午後、恋人の部屋、馴染みのソファの上……気づけば私はふみやさんと一進一退の攻防を繰り広げている。

「別にいいだろ、付き合ってるんだから」
「そういう問題じゃない!いくら恋人とは言え節度と言うものがあるだろ!」

 本来は一緒に読書をする予定だったのだが、本を開くとふみやさんは隙あらば私に触れてこようとするのでこの有り様だ。

「大体、許可もとらずに人の身体に触るな!」
「さっきからちゃんと確認してるだろ」
「私が答える前に実行したら意味無いだろ!」
「じゃあ改めてもう一回聞くけどキスしていい?」
「駄目に決まってるだろ馬鹿!」

 ああ言えばこう言う、とはまさにこの状況の事だろう。私が何を言ってもふみやさんはツラツラと言い返す。

「はぁ……じゃあ理解は何だったらいい?」
「『何だったらいい』って、そんなの当初の予定通り読書を……
「でも、一緒に本を読むの 約束はしたけど、別に読書しかしたらいけない訳じゃないよな?」

 いつもに増して頑固だな!こちらをジッと見つめる紫の瞳は一切揺らがない。

「確かに、読書だけをしろとは言いません。ただ、TPOを弁えましょう。今はそういう時間じゃないでしょう」
「じゃあ、いつだったら、どういう状況だったら良いの?」
「は?」
「理解は、あれも駄目これ駄目って、俺の行動をずっと否定するけど、具体的にどこが駄目?何が嫌?」
「えっ、いや、それは……

 ふみやさんの顔が、グッと近づく。

「俺は理解に触れたい、理解は俺に触れられたくない。それは良いよ、一旦認めるよ」
……はい」

 ふみやさんは眉間に皺を寄せ、まるで私に圧をかけるように見つめる。

「でもさ、じゃあ何で嫌なのか理由も分からないままずっと拒否し続けるっていうのは、恋人とか家族とか云々以前に、人と人の関係としてどうなのかな?」
「うっ……
「このままだと、理解は俺より六歳年上のお兄さんなのに、年甲斐もなく我儘を言い続けて駄々をこねている事になるけど、理解はそれでいいの?」
「ストップ!ストップ!!もうやめて下さいふみやさん!!」
「じゃあキスしていいよな?理解」
「またそれ!?ていうか何か言い方が嫌!」

 結局、ふみやさんのペースに押されて、ソファの端に追い詰められて迫れている。

「大体、何でそんなに私触れる事に拘るんですか!?そもそも私、貴方に『暇だから部屋で一緒本読もう』って言われて来ただけで、何の準備も出来てないんですけど……!?」

 グイグイと押し迫るふみやさんを両手で押しのけながら反論すると、ふみやさんは更に両目を見開いて私を見つめる。

「準備って何の……?」
「心の準備ですよ!!準備も無く許可も出す前に触られたら、ドキドキして何にも考えられなくなっちゃうでしょう!!」
「あー……そっちの……
「『そっちの』って何ですか!それ以外何があるんです!?」

 せっかく恥を忍んで伝えたのに、ふみやさんの返事は煮え切らない。

「ですから、ふみやさんも金輪際こんな我儘は辞めて、大人しく読書に……
「ごめん、一緒に本を読もうって誘ったの、半分嘘」
「嘘ぉ!?」

 この期に及んでなんて事を言うんだこの人は!そもそも人に対して嘘をつくなんてどういう倫理観を持っているんだ!善悪の弁はちょっとアレだけど!

「理解と二人っきりになりたくて、でも正直に言うの恥ずかしいから、適当に口実作っちゃった」
「えっ!?」
「それで理解が本当に部屋に来てくれたのが嬉しくて、でも、上手く言葉に出来なくて……だから、こう、肉体言語、的な?」
「はぁっ!?」

 分かりづらいけど薄く頬を染め、少し照れながらぽそぽそと話すのを見るに、一連の行動は本当に自分の誘いに乗った私への愛情表情だったのだろう……いや本当に分かりづらいな!

「だから、改めて言うよ理解。俺の我儘、聞いてくれる?」
……はい」
「俺は、理解と、キスがしたいです」
……お、お願いします」

 この時触れた唇の温度は、何時まで経っても鮮明に覚えていた。