よつもり
2025-03-01 22:06:10
4305文字
Public 映画・本・インプット(2025)
 

3月鑑賞の映画

年間カウント.タイトル(視聴月日)

22.バビロン(03/01)
1926年から1952年までの、26年間のハリウッドの物語を、かつての無声映画時代のスター、下働きからプロデューサーになった青年、田舎から出てきて女優になった女、トランペット吹きの黒人、エキゾチックな東洋人の歌手、ハリウッドを長年書き続けているライター……
──の顛末を追う形で描いていく群像劇。

映画を描いた映画は、自己言及の映画であるからそれなりのものでなければいけなくて、というわけでこの『バビロン』もちゃんとそれなりで、それなり以上となっている。映画の映画だとやっぱり『雨に唄えば』だし『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』だし『映画大好きポンポさん』で、私はどれも大好きです。映画を題材にした映画ってなんだかワクワクするし、独特の雰囲気があるなと思います。やっぱり熱量が違う。

というわけでバビロンもかなりの熱量をもって、映画に賭ける人々の様相とそして顛末を描いているのですが、その描き方がなかなかドラマチックですね。
どこか入れ子構造の雰囲気があります。特に、落ちぶれた映画女優のネリーと、彼女を長年愛してきたマニーが両思いとなるシーンは、彼らが作っている映画の外の話でありながら、彼らの様子は偶然フィルムに収められ、そして観客である私達はその彼らの物語を彼らが主人公の映画として観ているんですよ。この、「彼らのフィルムに映っていない人生を映画として観る」という立ち位置に置かれるのがなんとも不思議な雰囲気でした。

ネリーとマニーの恋愛模様が泥沼で良かったですよ。落ちぶれたネリーをマニーは罵倒しつつ、それでも助けずにはいられない。何をどうしても手懐けることができなかったネリーが、彼女自身の破滅と転落によってマニーの腕の中に落ちてくるという構図がなかなかにエロスでした。マニーは一度何もかもを捨ててネリーを救おうとした。結局それはうまくいかずに終わるのですが、一瞬だけでも彼らには幸福な瞬間があり、そしてその一瞬の幸福を私達観客は目撃している。

ブラピが演じるジャックも良かったです。かつてのスターも時代の移り変わりとともに旬が過ぎ、そして彼は自分で自分の人生の幕を下ろす。
ブラピは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』にも出ていましたが、そっちの映画のレオ様の役どころを今度はブラピがこっちで演じた、みたいな感じですね。この配役、ちょっと意図を感じます。
ジャックの哀愁も味わい深くて良かったなあ。彼はフィルムの中で永遠ですよ。

キャラクターたちの人生の、一番輝いているとき。
または、クライマックス。
人生の一番美味しいところの目撃者になっていることを強く実感させてくれるお話でしたね。

最後、マニーが入った映画館で『雨に唄えば』が流れてくるというシーンは、とても良かったです。
『バビロン』を見る人なら『雨に唄えば』の内容も知っているよね? というような目配せを感じました。
観ていてよかった。ちゃんと意図を受け止めることができたので。

面白くいい映画でした。
それと、この映画は一人で観る向きかなあ。家族で観ると気まずくなっちゃうようなシーンが多々あります。



23.ウィキッド(3/8)

アリアナ・グランデ演じるガリンダがすげー面白れー女で最高に良かったですね。
ガリンダは概ね軽薄で、けれども魅力的で、アホだけれどもアホになりきれず、だからこそ優しさと共感を発揮できてしまう。
うーん、良いキャラだなあ、ガリンダ。
ガリンダのアホさって処世として頭を空っぽにして見た目だけちゃんと可愛くしていれば好かれるし人気が出るよね、むしろ自我を出しちゃうと良くないよね、空気読んでうまいことやってこ☆ というような感じのアホさなんですが、彼女の根底には優しさがあるからエルファバの悲しみを理解してしまったので、理解してしまったからには友達になるしかなかったという、そういう感じなんだと思います。
人気者だからこそその人気をエルファバに波及させなければというような、どこかノブリスオブリージュ的な意識も見えますね。
彼氏と親友の会話に加わろうととっさに改名を宣言するあたりが一番面白かったですね。そこまでしちゃうんだ。

緑色の肌の色から気味悪がられ疎ましがられ続けてきたけれどもとてつもない魔法の才能を持つエルファバが、
魔法の才能はないけれども一軍陽キャでいつも人の輪の中心にいるしいないと気がすまない正反対のタイプであるガリンダと、最初は反発し合うものの、エルファバの境遇にガリンダが共感することによって二人は親友となる。

エルファバは魔法の才能を見出され首都エメラルドシティに招致され、国を治める男・オズに面会が叶うものの、
オズには魔法の才能がなく、エルファバの能力を使って、対等であるはずの動物を迫害・使役しようとしていた。
エルファバはオズとその政策に反発し追われる身となる。
ガリンダはオズのもとに残り、親友だった二人の運命は分かたれることになる。

映画の冒頭、「悪い魔女・ウィキッドが死んだ」と国民らが歌い騒ぐシーンから始まるので、
その後何らかの出来事の末にエルファバは死ぬことになるというのが分かりきっているのが切ないですね。
ガリンダがオズの女王となっており、かつて親友だった友人の訃報を喜ぶ国民を見たときの彼女の心情はどのようなものだったのだろうと思わされるものの、ガリンダがガリンダらしいなと思うのが、その国民の歌に一緒に加わって歌って踊っちゃうところなんですよ。それが彼女の軽薄さであり、処世術であり、しかしその行動が彼女の内心全てを表しているわけでは決して無いという辺りが絶妙です。

オズに追われたエルファバを見送るガリンダいや、グリンダが、エルファバの幸福を祈ると言って送り出すシーンがとても良かったですね。彼女らは仲違いして分かれたのではなく、友情は変わらないけれども、どうしても道が分かたれてしまったというのが切ないですね。

ベースとなる『オズの魔法使い』に、そういえばちゃんと触れたことがなかったなという感じなので、
近々映画を観てみたいと思います。本も読もう。
ウィキッド2も楽しみですね。一体どうなってしまうんだろう待ちきれないなあ。



24.ガンダムジークアクス※2回目(3/15)

ジークアクス2回目!
そもそもファーストガンダムの履修が半端でストーリーをあまり覚えていないため、前半パートの理解がちょっと今一つです。そのうち時間を作ってファースト再履修して、その上でこの「もしも」のお話を楽しめたら良いなあと。

後半のマチュとシュウジとニャアンの三人が出てくるパート、良いですね。恵まれた家庭で大切にされて育っているのに普通に収まりきらないマチュのエキセントリックさと衝動、これまたエキセントリックな少年シュウジのダウナーで掴みどころのない色気、そしてオドオドと落ち着かなげで要領わるいけれども何か重たい事情のありそうなニャアンの背景への興味だとか、主人公三人(でいいのかな)のそれぞれのキャラクターがあの短い時間で伝わってくるのはすごいなあと思います。

追加映像がすごく良かった。そうか、三人は地球を目指すことになるんだなあと。ロマンだなあ。
アニメ放送がとても楽しみですね。ファーストガンダムではやっぱりアムロが一番好きなので、彼がいつ出てくるかがとても楽しみです。出てくるよね、さすがにね。



25.ホテル・ムンバイ(03/29)
2008年に実際に起きたインドの同時多発テロを題材にした映画。
高級ホテルにイスラム系テロリストが複数侵入し、宿泊客と従業員を殺し回るのですが、
そんな状況の中で宿泊客を守ろうと行動していった従業員たちの奮闘や、その場からなんとか脱出を図ろうとする宿泊客たちの行動が描かれます。

良かれと思った行動がどう転ぶか分からず、
従業員はテロリストの指示を聞かないという形で抵抗して死に、
夫婦は死に別れ、女を守ろうとした男たちもまた死んでいき、とにかく状況は悪くなる一方で、
次の瞬間には今この画面に映っている人たちはみんな死ぬのではないかという緊張感が常に漂う映画で、
とにかく疲れました。一時停止しながら休み休みじゃないと観るのが辛かったな。

冒頭、レストランで、その夜のプライベートなパーティに呼ぶ女の子を品定めし「乳首の大きい女の子はいるか」などと大声で電話して周りの宿泊客から不興を買っていた男が、テロリストの侵入という状況で、とても紳士的に身近な女性を守るという振る舞いをしている様子がとてもよかった。これは実際にこういう人物がいたのか、それとも映画として創作したキャラクターかは分からないけれども(おそらく後者な気はするけれども)、こういう人物像を見せられると、良いなあと思いますね。そしてその人物が呆気なく死んでいく様子もなかなか無慈悲でした。

あくまで実際の出来事を題材とした創作だと思われるのでこの映画が最後に提示した希望であるとか安心感が現実にあったものかどうかは分かりませんが、ラストシーンにおいて、客を守りきった従業員の青年が妻子が待つ家に帰る様子であるとか、夫を失った女性が自分の子供と再会するシーンがあったのは良かったなと思います。
もしこれで子供が殺されるシーンを入れていたら、それはもしかしてリアリズムかもしれないけれども、この随分と長く感じる映画に付き合って最後がそれだったらかなり失望があったかもしれません。その状況の恐ろしさを提示しながら同時に、その世界から速やかに観客を現実世界に帰してくれるという作りに、誠実さや倫理観を感じました。

私は昔、北朝鮮からの脱北者一家が脱北に失敗して死んでいく、というような映画を学校の授業で見せられたことがあるのですが、その映画は最後子供が死ぬ場面で終わっていてかなり後味が悪かったんですよ。問題提起としてはその演出は正しいかもしれないし、現実にそういうことが起こっているのが事実だったとしても、そういう形で観客の心の中に居座り続けるというのは、私はあまり良い映画とは言えないんじゃないかなあという気がしています。映画だけじゃなくて、全ての創作においてです。

というわけで、怖かったけれどもいい映画でした。同じ題材でもう二本別の映画があるようなので、気が向いたら観てみたいと思います。



26.教皇選挙(3/31)